第111話 学園長の話は基本、長い!
第111話 学園長の話は基本、長い!
視点 神の視点 ※文法の視点名です。
場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市 皇立桜花学園
日時 2033年 4月10日 午前 9時20分
入学式及び始業式の会場になる第一体育館には初等部の生徒~高等部の生徒まで式が始まるのは今か今かと待っていた。
生徒達のお喋りの合間に学生達が体調を崩さないように、と何台ものエアコンが耳障りにならない程度に唸りを上げていた。
イヴ達も指定された1年4組の席につく。1年4組内の席順は自由であった為、いつものメンバーで固まる。いつものメンバーとはイヴ、りりす、セリカ、アイシャ、プリムラ、メイシェ、咲良、恭二、桜花である。
イヴ「詩卯学園長の話をこれから聞くのか……、何分で終わると思う?」
りりす「我は詩卯という人物を知らん。適当に10分で」
セリカ「つくづく、椅子に座り、ジュースやお菓子を食べてもOKの入学式で良かったですわ。そんな思いと共に21分」
アイシャ「1分の意味が不明。しかし、セリカの言う通り、その辺が妥当。27分」
プリムラ「無難なところを狙いますわね。50分で」
メイシェ「エスカレーター式の恩恵を受けたわけじゃないんで解らないけど……1時間」
咲良「ぐぅー、あっ。寝てた。通販番組、新しいソファー注文した……寝不足」
イヴ「ズッ友 咲良、今は詩卯学園長が今日は何分、話をするか? の話題なのだ」
咲良「35分」
恭二「そ、そんなにお喋りが好きな学園長なのか……。これは椅子があって良かったぁ。貧血で倒れる人間が出るかもしれないレベルだろう」
イヴ「恭二よ。まさに恭二が言った通りの事が3年前に起こり、それ以降、学園側は過保護になったらしいぞ」
恭二「飲みモノ、お菓子持ち込み自由って過保護の斜め上を言ってると思うけどな」
桜花「そうやって甘やかすから軟弱者が増える。私は学園長は17分で話を終えると思う」
そう予想をつけ終わったところで壇上に学園長が姿を現す。
空色と評しても良い美しい髪のショートヘアの女性が車椅子を心理詠唱式の風魔法 エアで浮かせて、中央にある演壇へと歩む。
一見、弱々しそうに見えるほっそりとした身体をしているがとんでもない!
この少女のような可憐な容姿を保つスーツの女性 桜花詩卯学園長こそ、凪沙南天皇家を守護する十の家のうち、最強の魔法の威を保有する強者なのだ。自信に満ちた紅色の瞳からもそれを感じ取ることができる。
演壇にその姿は隠れてしまうが、詩卯学園長は風魔法 エアを調節して、顔だけ会場の学生達や先生方に見えるようにする。
そして、いつもの陽気な挨拶から式を開始する。
詩卯「おはようにゃん、みんな! 永遠の19歳 桜花詩卯学園長にゃん☆ あー、19歳じゃなねぇーよ、おばさんって思った子は古代魔法で粉砕にゃん」
メイシェ「え………」
恭二「あ……」
桜花「へぇ……」
メイシェ、恭二、桜花の他に詩卯学園長にクールな最強の魔法使い像を求めていた新入生や転入生は絶句した……。誰もがにゃん☆ はないだろうとツッコミたかったが、誰もが古代魔法を喰らいたくなかった。
古代魔法を唱えられる人物は地球、異世界 リンテリアを合わせても、約30人くらいしかいないと2年前の各国の調査ではそう結論づけられている。尤も、古代魔法を唱えられる者は国にとって最高の戦力となる為、その数を誤魔化しているかもしれない。そんな古代魔法の威力は通常の魔法の10倍以上の威力があると言われている。
よって、反論しそうになる生徒達は自分で口に手を当てて、ツッコミが口から飛ばないように気をつけていた。
イヴ「真央がいたらツッコミを入れていたであろうに……」
詩卯「では、入学式及び始業式を始めるにゃん。みんな礼するのにゃん!」
*
そんな詩卯学園長の開会を告げる言葉から入学式及び始業式は始まった。
プログラムに沿って、凪沙南未来天皇代理様や、皇族の分家 聖家当主 聖心、水嶋家当主 水嶋蒼太、鶴牙家当主 鶴牙牧志、湖石家当主 湖石実栗が進学、進級のお祝いの言葉を告げる。
未来天皇代理様や聖心の二人以外の水嶋蒼太、鶴牙牧志、湖石実栗はイヴに対して嫌悪感を帯びた視線を隠すことなく、放っていた。
それに対して、アイシャが反応し、三人に対して睨み返す。その視線だけで地球、異世界 リンテリアでは中級の強さを誇るスライムを倒せそうだった。
アイシャ「私欲に塗れた豚めっ。それぞれ、水嶋は映画会社 日蒼を経営、鶴牙は日本武器協会会長、湖石は地下都市再開発プロジェクトリーダーと栄華を築いているのにまだ、足りないと見える」
イヴ「予の個人総資産が約34兆円。それがそんなに欲しいと思われるのは当たり前と言えば、当たり前だが……予は無駄な資産の使い方はしたくないし、それに予の遺言を最近、書き直して妹 りりすに資産がいくようにしてあるのだ。勿論、りりす達と予の間に子どもが産まれれば、また、遺言の書き直して――――」
アイシャ「イヴ、そんな事をあまり、口にしないで下さい。イヴは私が護るってずっと、前に決めたじゃないですか」
イヴ「アイシャ……すま、いや、ありがとうなのだ」
アイシャ「解れば良いんですよ」
プログラムでは次に詩卯学園長のお話だ。
詩卯学園長はこほん! と咳払いをした後、早口言葉じゃないのか……と誰もが思うくらいの速度で話し始める。
詩卯「皆様、進級や進学、おめでとうにゃん。しかし! まだ、安心してはいけないにゃん。皇立桜花学園では月に1度、ダンジョン試験を行うにゃん! 少女神 リンテリア様のご厚意でなんと! 我が学園には地下1000階という規模の桜花ダンジョンが築かれたにゃん。そんなのクリアできるわけないじゃんという方! ダンジョンのワープ装置で行ったことのある階を省略して、ワープできる仕様にゃん。ここは少女神 リンテリア様に感謝するようににゃん。さて、そのダンジョンには強力な危険種動物もいるが……なんと、レアアイテムも存在してるにゃん。常に少女神 リンテリア様の配下の者が宝箱の中身を補充しているので宝箱が空っぽって事はないにゃん。一番の最高記録は高校3年生の生徒会長 聖心さんがチームリーダーを務める聖とその仲間達にゃん! その記録とは……地下 189階にゃん。尚、このダンジョンを地下 1000階までクリアした人には少女神 リンテリア様と闘うことができるにゃん☆」
メイシェ「リンテリア様って、神魔力球だけでブロンズパワーディスターを倒した神様でしょ? 無理ゲー」
イヴ「まず、勝ち目はないのだ」
メイシェとイヴはそう小声で話し終えた後、詩卯学園長の長いお話に再び、耳を傾ける。
詩卯「さて、桜花ダンジョンには積極的に参加してほしいにゃん。到達階数やアイテムで戦闘科目 【実践】の成績の半分がこれで決まるにゃん。【実践】科目の残りの成績はクラス対抗や個人戦などの実践で成績が決まるにゃん。もう、知っているかもしれないが桜花学園では基礎科目以外に【魔法】、【実践】、【超能力】、【転生陣】の科目があるにゃん。頑張って勉強するにゃん。次の話題に移るにゃん!」
誰もが心の中で次の話題に移るな! と思ったが……その生徒達と先生方の望みは叶わず、結局、詩卯学園長はこれから35分程……話し続けた。




