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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第106話 日本の行く末

 

 第106話 日本の行く末


 視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 8時30分



 国会議事堂には皇族の分家で国務大臣に指名されることが多い【第一種貴族】、大貴族と呼ばれる家系であり、上の者は国務大臣、中の者は貴族院議長、下の者は貴族院の議員に指名されることが多い【第二種貴族】、市町村をまとめる都道府県の長となる【第三種貴族】、市町村の長となる【第四種貴族】が主役達の登場を今か、今か、と待ち構えている。

 彼らは口を真一文字に結び、咳をする時すら、その音をなるべく出さないようにハンカチで口を覆っていた。


 重苦しい空気を破るように壇上に主役である凪沙南イヴ第一皇女、凪沙南りりす第二皇女、凪沙南未来天皇代理が上がる。三者共に約1億円の豪華な着物に身を包んでいた。その着物は貴族国会を開催する際に着る皇族の女性の正装であった。絵柄はシンプルに白いキャンバスに桜が一輪、咲いている模様だ。

 その主役達の後から、護衛役である天雲英、新羅咲良が続く。相変わらず、咲良は眠そうにしていたが、普段とは違い、まだ、眠りに墜ちてはいない。

 凪沙南未来天皇代理はマイクの位置を微調整しつつ、周囲の光景を真剣な眼差しで観察する。


 未来天皇代理の皇族の証である銀色の虹彩と目が合ってしまった着席している貴族は大げさに背筋を伸ばしてしまう。それは彼らは意識をしていないことだった。


 生放送のインターネットTVの素材を撮る正面のカメラを意識して未来天皇代理が話し始める。


 未来「若干、トラブルがあったが国民の皆に凪沙南りりす第二皇女を紹介しよう」


 烏色の髪と銀色の瞳が特徴的なりりす第二皇女が会釈をしてから、手持ちのマイクで話し始める。


 りりす「我は――――」


 りりすの厨二病の発作が出ると本能的に察したイヴ第一皇女がりりす第二皇女の手持ちマイクを強奪する。

 きっと、りりすに任せたら、漆黒のプリンセスやお前達は我の下僕発言が出るに違いない。


 イヴ「予の自慢の妹 凪沙南りりすを紹介するのだ。りりすは顔を見て、皆も感じた通り、有名なアーティスト Garden of the GodsのLilith。えー、瞳の色は黒い瞳のカラーコンタクトだったのだ」


 イヴ第一皇女が続きを喋ろうとすると、りりすに素早く、手持ちのマイクが強奪される。そんな事をしていたら、勿論、鬼未来様と呼ばれる未来天皇代理が見逃すはずはない。すぐに眉間にしわを寄せて機械兵とやり合った時代の修羅の表情をイヴ第一皇女、りりす第二皇女限定で睨む。

 その表情は”ちゃんとやれ、じゃれ合うな”というメッセージに満ちていた。


 りりすが若干、緊張しながら手持ちマイクを通して話し始める。


 りりす「我は、や…………。我は凪沙南りりす。イヴお姉様が死亡した際の皇族の血を絶やさない為に身分を隠して育てられた勇者 春明とリン女王の娘。イヴお姉様が健やかに育った事を期に表へと出ることになった。今後は皇族の仕事をイヴお姉様と未来天皇代理様とでこなしてゆく。Lilithとしての活動もよりいっそう、日本を紹介する意味を込めて活動する。宜しく、頼む貴族の方々、日本国民の方々」


 未来「その他にイヴ第一皇女とりりす第二皇女が婚約したことをここに発表しよう」


 勇者 春明が執念で開発した【イヴのゆりかご】には遺伝子異常を治す機能や防止する機能がついている為、それは既定路線だろうと瞬時に考えた貴族達は驚きの声を上げずに、誰もがそれを支持しますよと拍手を贈る。


 未来「イヴ第一皇女は大学卒業後、天皇の地位に就くことも発表しよう。そして、イヴ第一皇女とりりす第二皇女の子どもがイヴの次の天皇になる予定であることもこれにて、明確になったことだろう」


 イヴ「至らぬ処もあるが、その際は貴族の方々や日本国民の方々の力を貸してもらいたい。予には天皇としての最終決定権が与えられるが……貴族国会で上げられた議題を主に国民の反応を元に最終決定権を行使する。よって、予だけが最後の矢を放つのではない。予の背後には何億もの日本国民がいる。だからこそ、力を貸してもらいたいのだ」


 未来「これから時代は大きく変わるだろう。イヴ第一皇女の婚約者 アイシャ・ローラントとの子どもは次のクイーン王国の頂点となり、イヴ第一皇女の婚約者 北庄真央やセリカ・シーリングの国にしてもイヴ皇女の血が入る国になる。そこで起こる拒絶反応は想像を絶するだろう。喜んではいられない。今は比較的静かな天候だ。いいや、嵐の前触れだ。嵐に備えろ」


 その前触れの一部が一連のディスター襲来だろうと貴族達は思った。貴族達の情報網には捕らえられたディスターに乗っていたパイロット達は歯に仕込んだ青酸カリによって絶命したと報告が上がっている。


 この世はゼロサムゲーム、誰かが不幸になるのであれば、他の国にしたい。そう、貴族達は一様に考えを働かせていた。



 視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月10日 午前 1時30分



 眠ることができずに予は夜の散歩と洒落込む。緑の葉がついた木々を風達が揺らす音楽が聞こえる……。


 ルルリの事を思い出す。

 ルルリは精神的に不安定な為、クイーン王国城下街の教会に預けられているとクイーン王国の騎士達から聞いている。きっと、司祭 ニルエならば、なんとか、ルルリを立ち直らせてくれるだろう。


 イヴ「誰も不幸にしない。予は……」


 その自分の言葉は虚しく、闇へと溶け込んでいった。


 闇の中から少女神 リンテリアの姿が唐突に現れた。きっと、魔法を唱えてここまで瞬時に来たのであろう。古代魔法 テレポート辺りを唱えたのだろう。

 リンテリアの服装は社会を敵に回す”働いても働かなくてもみんな、最期は灰さよなら”という言葉入りのTシャツと半ズボンという姿だった。足はビーチサンダルで護られている。


 リンテリア「相変わらず、優しすぎるねん。誰も不幸にはしない? それはもう、無理無理。いーちゃんはもう、多くの人間を不幸にしてるよ」


 イヴ「…………」


 恨まれている自覚はあった。

 ステータスカードやポーションによる富の分配と優良企業への積極的支援の先導で株取引のシステムは壊れて、今では企業にパトロンが何人もつくのが世界のスタンダードになりつつある。そこでは株取引関連の人間に恨まれているであろう。それを真っ先に頭に思い浮かべたのは今朝、脅迫状が届いた件でそれを出したのが株取引で金を稼いでいた青年だったという報告を宮内庁から受けていたからだ。

 ステータスカードを作る前はリンテリア教会が少女神 リンテリアに与えられた無属性魔法でステータスを告げる仕事をしていた。であることから、教会の一部の勢力にも恨まれているであろう。お布施が減ったのだから。

 他の宗教から睨まれているのは多神の存在を肯定した目の前にいる幼女……もとい、少女神のせいだろう。しかし、そうであるにも関わらず、予も何故か、恨まれている。


 リンテリア「図星、図星だねん。その苦痛に満ちた表情。でもねん、絶対に覚えておいて全てを救おうなんて神様でも”無理だった”。それだけを」


 イヴ「予はその神様とは違うのだ。例え、無理だったを繰りかえしてもいつか、在ると信じて優しい世界を築く」


 そう、予が決意を述べた瞬間、少女神 リンテリアは腹を抱えて笑い出した。


 リンテリア「くっはははははは。同じ事を言ったよ、その”神様”も。でもね、何処にでも足を引っ張る馬鹿がいるもんだよん。あまり、油断しちゃいけない。やり直せるとは限らないのねん」


 リンテリア「ああ、転生神 ローナから伝言。良いモノをいーちゃんに手渡すから、4月22日の夕方にいーちゃんとこに来るって」


 イヴ「良いもの?」


 リンテリア「それは来てからのお楽しみに」


 その台詞を残して、少女神 リンテリアの姿は幻のように掻き消えた。


 イヴ「さて、予は寝なければ、明日は学園の入学式に、夕方からは寸命アリアが入手したダラーヒムの例のサンプル分析を元にした公害対策会議か…………。嵐でないと良いが、その願いは無駄かもしれないのだ……」


 見上げた月はいつも、優しく輝いていた。その月の平穏さに予は自分の慌ただしい毎日とは違うなとふと、微笑んだ。




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