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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第105話 聖剣の価値

 

 第105話 聖剣の価値


 視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時20分



 ~アイシャ・ローラント班~


 世界の命運を掛けて闘う? ドーガ・マットソンにはそんなハリウッド映画の主人公のような真似はできない。

 ただの黒人男性にできることなんてたかが知れている。それは自分の国を護る為に武器を取ることだ。


 危険種動物が現れてハリウッド映画も随分、様変わりした。巨大危険種動物VS米軍なんて題材がアメリカの少年少女には受けているらしい。

 ドーガはそんなハリウッド映画を観ていると、自分が小学生の頃に流行ったゴ〇ラを思い出してしまい、いつも、缶ビールを飲みながら、「ジャパニーズのパクリかよ……」と呟くのだ。そんなくだらない毎日をイヴ様や姉 クク・マットソンやイヴ様の私設軍隊 蒼薔薇の騎士隊の同僚達と過ごしていきたい。

 その為には今、ドーガの目の前にいるスカルドラゴンの群れをどうにか、しなければならない。難儀なことだ。


 ドーガ「おい、千里。ハリウッド映画か? ゴ〇ラ映画を観てこいつの倒し方の予習なんてして来てないよな?」


 ドーガは同僚のセミロングの紫髪の竜族 近浪千里に話しかけた。千里は二本の剣を構えてスカルドラゴンに急襲されないようにスカルドラゴンを睨み付けていた。


 千里「残念、観てきてないわ。けどね、ドーガ。ゴ〇ラに日本軍はいつも、壊滅的ダメージ。ハリウッド映画はなんか、もの凄い幸運で巨大危険種動物の攻撃を避けたり、明らかにオーバーキルなのに死なないタフガイヒーローが出てくる。どちらも参考にはならないわ……」


 リイーシャ「大丈夫です、タフガイヒーローはいませんが………私達にはリンテリア教の聖女 500年ぶりに聖剣 ローラントを引き抜いたアイシャ・ローラントがいます。ほら、只今、活躍中です」


 リイーシャが黒いリボンで長い金髪を結わえた聖女 アイシャ・ローラントを指差す。そこには鬼気迫る表情で三体のスカルドラゴンを1度に相手をしているアイシャがいた。

 アイシャの方が優勢でスカルドラゴンの爪やダークドラゴンブレスを華麗に回避しながらまさにゴミを処理するような鮮やかさでスカルドラゴンの羽根を両断してゆく。


 ドーガ「敵に対しても聖女様はクールだな。よし、俺らは別のスカルドラゴンを狩るとしましょう」


 千里「賛成! 下手にアイシャ様の間合いに入って今の状況を崩すのは悪手ね」


 リイーシャ「では、只今、私達をじろりと観ているスカルドラゴンから退治しましょう。私達はチームプレイで」


 ドーガ「そいつは良かったぜ。正直、聖剣みたいな便利な装備品を持っていないからな」


 ドーガはそう言うと豪快に笑った。



 視点 アイシャ・ローラント

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時22分


 ドーガ「そいつは良かったぜ。正直、聖剣みたいな便利な装備品を持っていないからな」


 ドーガの何気ないその言葉は戦闘中の私の意識を少し、濁らせた。濁らされた瞬間、スカルドラゴンの爪がほんの少し、右腕を掠める。人間とは脆弱なモノでたった、それだけなのに右腕の傷口から鮮血が流れた。


 始めて相手に血を見せたのが嬉しいのか? 片方の翼を失った3体のスカルドラゴンが吠える。

 私にはその遠吠えは豚のブーブーという鈍重な泣き声にしか聞こえない。

 それよりも私にダメージを与えているのは悪気はないのだが……ドーガの言葉だ。聖剣 ローラントは私に多大な力を与えているが……聖剣の力に振り回されている? という事はないのだろうか? 無いと思いたい!


 アイシャ「はぁあああああ!」


 裂帛の気合いと共にスカルドラゴンの腹部に聖剣 ローラントの斬撃を喰らわせる。スカルドラゴンは避けきれず、その巨体は仰向けに倒れた。すぐさま、トドメの追撃を掛けて倒す。


 アイシャ「あまりにも呆気ない。それでもドラゴンの呼称で呼ばれているものか……」


 いや、これは自分の力ではなく、聖剣 ローラントの力だ。

 この問いかけはジョーカーにかつて、言われたことから発生している。


 あれは1年前の夏の事だった………。



 視点 アイシャ・ローラント

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2032年 7月18日 午後 3時00分


 何もまだ、建っていない人の邪魔が入る要素のない草原で私はいつもの日課にしている素振り 500回をしていた。その途中にセミの鳴き声に混じった気配を感じて、私は振り向いた。

 振り向くと………ローブのフードで顔を隠した小柄な少女がいつの間にか、私の真後ろに立っていた。

 そこまで近づいているとは思わなかった…………。


 ジョーカー「そこ、近づく、思わなかった?」


 いつものやる気の無い眠たい声でジョーカーは私の心を読んだような発言をする。


 アイシャ「イヴの信用を得ているのは理解できる。だが、ジョーカー、私はお前を好きにはなれない。仲間やイヴに対してもそのローブを取って姿を見せようとはしない。不愉快だ」


 ジョーカー「不要。それと、私、アイシャ、嫌い」


 アイシャ「ほう、私もだ、雌豚」


 ジョーカー「弱いのに、聖剣、頼る」


 アイシャ「頼ってなどはいない!」


 私は薄々、気にしていた事をジョーカーに看破されて大声でそれを否定した。夏の日射しのせいではないひんやりとした汗が頬を伝う。

 素振りでも呼吸は乱れなかったのに……ジョーカーと対峙していると息が苦しくなる。これがイヴ個人の最強の切り札 ジョーカーの気迫なのだろうか。そうとは思えない欠伸をしているジョーカーの姿に強者の高みを感じた。


 ジョーカー「素振り、見せてもらった。全然、基礎、なってない。聖剣、振り回されている」


 そう言ってジョーカーは落ちていた木の棒を拾うと、その木の棒を武器にして構えた。そして、静かに振り下ろす。


 すると、草原の草が1メートルほど、刈られてしまい、草に隠れていた土が姿を現した。

 その芸当は誰にでもできるモノではなく、ジョーカーの握り締めている木の棒は何処も破損していなかった。


 ジョーカー「素振り、極めれば、できる」


 アイシャ「さすが、最強のジョーカーカード。そんな貴女は何故、イヴと常に共に居て護ってやれない。勿論、イヴのそばは私のモノだが」


 ジョーカー「イヴ神様、成長必要、私、まだ、隣にいるべき、ない」


 辿々しく紡がれる言葉の一つ一つに言い知れぬ強さがあった。私は思わず、一歩、後退りをしてしまう。


 ジョーカー「忠告。聖剣、使いすぎる。自分の弱さ、身の丈、解らなくなる」


 アイシャ「私が聖剣に振り回されていると言うのか? 雌豚」


 聖剣は私とイヴを繋いでくれた聖剣以上に価値のある武器だ。おいそれと部屋の片隅に置いておけるモノではない。

 聖剣を抜いたからこそ、イヴの婚約者としてイヴの父親 勇者 春明様にご指名してもらい、姉 リイーシャや妹 ネネの命までイヴに救ってもらったんだ! そう思うとジョーカーの発言が許せなくなる。子供じみた怒りというのは承知している。だけど、聖剣はジョーカーが思っているよりも私にとって大切な価値あるモノなんだ。


 ジョーカー「振り回されてる。どんな、強い武器、それ以上の価値、ない」


 アイシャ「いや、あるんだ!」


 ジョーカー「私、一歩でも動かせたら、認める」


 ジョーカーは木の棒を構えて私の聖剣 ローラントの一撃を受けるべく、待つ。


 私は聖剣 ローラントの斬撃を何度もジョーカーに喰らわせた。

 しかし、ジョーカーの脚は1ミリも動かなかった…………。


 ジョーカーは去り際に私に忠告をした。


 ジョーカー「聖剣、頼りすぎる。イヴ神様、いられなくなる。イヴ神様よりアイシャ、弱くなる。今の聖剣の価値、足枷でしかない」


 ジョーカーにしては発音のしっかりした強く印象の残る言葉だった。



 視点 アイシャ・ローラント

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時25分



 アイシャ「決めた。私はイヴから召喚器をもらう。いつか、私の強い思いを足枷という価値ではなく、輝かしい価値に変える為に! 聖剣 ローラントよ、これがしばしの別れの戦いだ!」


 聖剣を手にするに値する価値は今の私の実力にはない。そう、認めた瞬間、身体が嘘のように軽くなり、スカルドラゴンの攻撃を全く、受けなくなった。

 聖剣 ローラントの一撃はスカルドラゴンのHPを紙を切るように簡単に削ってゆく。今ならば、素直に納得できる。


 ジョーカーの言っていた通り、これは聖剣 ローラントの凄まじい攻撃力だからこそ、可能なことだ。


 私はイヴを幸福にする為にもっと、高みに登らなければならない!

 そんな意味を込めて、三体のうち、残り一体となったスカルドラゴンの脳天に聖剣 ローラントの一撃を加える。


 アイシャ「聖リンテリア剣術 渾身一撃の太刀」


 その技はスカルドラゴンの脳天から股まで真っ直ぐに切り裂いた。


 アイシャ「いつか、聖剣を使うに値する人間になる。それがイヴを護ることに繋がるのならば」


 聖剣 ローラントを鞘に収めて、鞘と聖剣にありがとうとごめんねの意を込めて、鞘を撫でる。



 視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 5時35分


 凪沙南イヴ達や日本軍、警察、宮内庁のボディガード、イヴの私設軍隊 蒼薔薇の騎士隊などによって、スカルドラゴンの群れは殲滅された。

 空間の歪みはこの1時間後、消滅が確認された。


 壊れた家屋はイヴが治癒魔法で復元しようとしたが……


 未来「民に復興という名の仕事を与えてやることも必要な処置。お前は何でも自分で解決したがる。少しは優しすぎる性格を何とかしろ」


 イヴ「はい」


 そんなやり取りにより、凪沙南市の建物の復興は民間企業が請け負うことになった。


 パレードの重要な凪沙南りりすの日本国民への挨拶やイヴとりりすの婚約発表はインターネットTVを通して午後 8時30分に行うことになった。その旨がインターネットTV等を通して日本国民に伝わると……国民は誰もがインターネットTVを見逃さないようにしなければと思った。



<スカルドラゴンの群れとの戦闘により、Levelが上がりました>

<凪沙南イヴがLevel 53になった>

<アイシャ・ローラントがLevel 73になった>

<北庄真央がLevel 55になった>

<セリカ・シーリングがLevel 54になった>


<蓮恭二がLevel 30になった>

<蓮恋歌がLevel 27になった>

<池内桜花がLevel 52になった>

<桃李ゆいがLevel 30になった>

<メイヤがLevel 20になった>

<新刀寺明日葉がLevel 36になった>




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