第102話 続・あたしの職場を護れ!
第102話 続・あたしの職場を護れ!
視点 北庄真央
場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市
日時 2033年 4月9日 午後 4時20分
~北庄真央班~
真央「あたしはここから動かん!」
そう、宣言してあたしは南屋の牛丼店のマスコットキャラ メイド服を着た雌牛 みなみちゃんの前に両手を広げて立ちふさがる。
スカルドラゴンどもが退けや、チェーン店らしく飾り気のない建物も壊してやるんじゃいボケ! と吠えているがあたしは屈しない。
よく、聞きなさいこの骨骨竜。あんたが庶民的なあたしのバイト先を壊したら、時給がもらえないの! 生活が掛かっているのよ。
まぁ……恥を忍んでイヴにたかれば、貧乏フラグを撃破できるだろう。しかし、それは竜の国 北庄の庶民派プリンセス 北庄真央のプライドが許さない。それはただのヒモですからね!
あたしの他にこちら側へと散開してきたメイシェ・ブラン、桃李ゆい、テスラ・リメンバーはあたしの異常な南屋の牛丼店愛に正直、引いていると思うが、それでもあたしはここから動かん。
メイシェ「動かんじゃないよ! ってか、ぶっちゃっけ、建て直せばいいじゃん」
真央「……金の無駄だろう」
メイシェ「はっ? 何、聞こえない?」
真央「……護れたならば、お金は一銭もかからず、通常通り、南屋の牛丼店で翌日からバイトができる!」
その他にも護れた場合の利点が大きい。
周囲を見回してみると、怪獣映画のように街の建物が幾つも半壊していた。とても、商売をするような状態ではないだろう。
しかし、あたしの背後にある南屋の牛丼店は未だ、崩壊を免れている。
当然、復旧には多くの屈強な土木建築の職人さんが必要だ。マッスルマンは当然、肉を食べたいだろう。肉を食べたいだろう! 大事なことなので二回、思考した。
さて、安くて美味しい店は! それはもう、みんな、解っているだろう、くふふふ、ぐふふふふっ。
笑いが止まりませんなぁーと思ったら本当に笑ってしまった。
もう一人、この場にいる南屋の牛丼店の店員 桃李ゆいは兎耳を伏せて、両手で黒髪のボブカットを覆い、恐怖に震えてしゃがんでいた。
耳をすまさなければ聞こえないであろう小声でゆいはあたしに反論する。
ゆい「無理だよぉー、翌日からなんて」
しばし、ゆいは無理だよ~と口にする。しかし、あたしが一緒になって数々の問題をクリアして解ったのだが、努力できる素質を保っていて無理だよって事を努力でなんとかできそうにまで変えるのだ。
だからこそ、あたしはゆいに何回目かの言葉を言う。
真央「はいはい、そんなのやってみないと解らないよね」
ゆい「ひぃー、スカルドラゴンがこっち、来るぅ~」
ゆいの言葉通りに一体のスカルドラゴンがあたし達、目掛けて飛んで来ようとしている。
もとより、戦闘をするつもりだったので、あたしは拳を閉じたり、開いたりして動きを確認する。確認の為に空気を散らすイメージで蹴ってみた。うん、大丈夫だ!
気怠そうに美味だ棒(棒状のスナック菓子)を加えていた水色のセミロングが特徴的なテスラ・リメンバーが美味だ棒を食べ終えて、白衣のポケットから飛び出している美味だ棒を一つ、選ぼうとしたが……近づいてくるスカルドラゴンを見て断念する。
ため息を吐いた後に鞭を地面に一叩きしてから、テスラはあたし達に言葉を紡ぐ。
テスラ「このメンバーで闘うしかないわ。攻撃力の高い真央でトドメ、攪乱にメイシェの刀捌き、私とゆいは魔法で……」
ゆい「む、無理ですぅ。わ、私、エアボールしか唱えられません!」
自分が自信の無い役割にされるのが嫌で、ゆいはしゃがんでいた体勢からぴしっと背筋を伸ばして立った。その速さは普段の臆病なゆいの動きとは違い野性味、溢れていた。
すぐに気怠いため息を吐いた後、テスラは訂正する。
テスラ「私は魔法で援護、ゆいは敵の攻撃から逃げ回るってプランでどう?」
真央「あたしはOK」
メイシェ「それしかないわね、このパーティーだから」
ゆい「や、やりますぅ~」
テスラ「さて、行くよ!」
*
スカルドラゴンはまっすぐ、あたし達のところへ飛んできた。
馬鹿正直にまっすぐな飛行を行っている為、テスラの雷魔法 トールハンマーがスカルドラゴンを捉えるのは決して難しくはなかった。
雷のハンマーの一撃を食らったというのに差ほど、時を置かず、再び、飛行を開始する。まだ、充分に地面へと離れていないスカルドラゴンの右脚をメイシェの日本刀 虎鉄の刃が冴え渡る。
スカルドラゴンの右脚の強度は素晴らしく、全く傷ついていない……が、スカルドラゴンはバランスを崩して仰向けに転倒する。
スカルドラゴン「gyaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」
メイシェ「怒っている余裕あんの?」
メイシェの言葉にキレたと言うかのように仰向けの状態で頭だけ、メイシェの姿を確認して、暗黒の息――――ダークドラゴンブレスを放った。
イヴの髪の色を真似て染めた銀色の髪がそのブレスに巻き込まれそうになったが、間一髪で回避を成功させる。
執拗にメイシェのみをスカルドラゴンは暗黒の息―――ダークドラゴンブレスで追跡する。
料理の食材を集めるべく、森や山、海などに訪れ続けたメイシェの脚は止まることなく、アスファルトの地面に、パイプを伝って半壊した建物の上に、2階の看板の上に、スカルドラゴンの頭上に、”南屋の牛丼店のマスコットキャラ メイド服を着た雌牛 みなみちゃんの頭上に”、と足場を変えた。メイシェが足場を変えた途端、そこにあったモノはダークドラゴンブレスで破壊された。
南屋の牛丼店のマスコットキャラ メイド服を着た雌牛 みなみちゃんの二次元風の可愛らしい頭もダークドラゴンブレスで吹っ飛んだのだった。
そして、吹っ飛んだ瞬間、スカルドラゴンのいる上空にいたあたしは思わず…………「あぁああああああああ!」と叫んでしまった。
スカルドラゴンはこのままでは真央の攻撃を食らうと思い、何とか、身体を起こそうとしたが起きられなかった。
スカルドラゴンの左脚には杭のように雷魔法 ライトニングアローが突き刺さっていた。
テスラ「もう一発、撃つ。雷魔法 ライトニングアロー」
テスラの手中に具現化した雷の弓で同じく、具現化した雷の矢を引く。その矢はまっすぐ、スカルドラゴンの右脚に杭のように突き刺さった。
これで逃げられなくなったところをあたしの蹴りが炸裂する寸法だ。
まるで示し合わせたように連携が決まる! これがイヴを中心としたあたし達の絆だ。
その絆を込めて、SOULの紅い色を絡め合わせた右脚にあたしは意識を集中する。
真央「神竜王武術 ドラゴンキックぅうぅうううううううう! うりゃぁあああ! くらえぇや! みなみちゃんの恨みを!」
あたしのドラゴンキックは見事、スカルドラゴンの頭部を粉々に原型を留めないくらいに破壊した。頭部を破壊している途中で柔らかい脳も破壊したのでスカルドラゴンは痙攣して絶命した。
真央「HP0にしなくても、生命維持に重要な部位を破壊すれば、Level 270だろうが倒せる! 油断しすぎだ!」
スカルドラゴンの群れの中の一体がダークドラゴンブレスで南屋の牛丼店を跡形もなく、破壊した。
一瞬の出来事に―――
真央「あっ」
―――という驚きの言葉しか出なかった……。
テスラ「こういうのってブーメランって表現するのよね……」
ゆい「あのー、真央ちゃん、真央ちゃん、大丈夫?」
真央「ふふふふふふっ…………」
メイシェ「こ、壊れた?」
真央「良いだろう、スカルドラゴン! あたしのバイト先を破壊した落とし前を! あたしの週3回 時給 750円を損失させた落とし前を! 強制的に付けさせてやんよ!」
ここからあたしとスカルドラゴンの群れとの壮絶なBATTLEが始まる!
謝っても許してやるつもりはない。
全て、経験値にしてやんよ…………。




