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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第100話 皇族を守護する者達

 

 第100話 皇族を守護する者達


 視点 雨雲英あまぐもすぐる

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時18分



 ~新羅咲良班~


 僕の親友であり主の凪沙南春明が華井恵里にさらわれ、その妻 リンが華井恵里により焼き殺された2021年7月7日に、僕達、皇族を守護する雨雲、美麗、新羅、戦堕、桜花、寸命、秋植、涙双、新卯時、時雪の十家は決意した。

 例え、一人、二人、と欠けようともまだ、3歳だったイヴ様を護る、と。イヴ様と同じ年代の新羅咲良、戦堕始も、その誓いに自らの意志で同意した。

 その決意を示す儀式として、半紙に十家の当主の血判を押した。円形に広がる十の朱き指紋は今も僕らの誇りだ。その誇りはイヴ様が大切に保管している。


 僕は目の前のスカルドラゴンを竜と名のつくモノに3倍ダメージを与える妖刀 竜水翔りゅうすいしょうで一刀の下に叩き伏せながら……そんな遠い日を思い出す。


 今、ここには僕、美麗幼子、新羅咲良、戦堕始、時雪卑弥呼さんしか、あの時のメンバーはいないけど、それでも、その誓いを結んだ仲間と闘っていると胸が熱くなる。こういうのを目には見えない絆というのだろうか? 我ながら十代のような心根を未だに秘めていたとは大発見だ。

 僕はいつの間にか、戦いにありながら……静かに微笑んでいた。


 幼子「気色悪い真面目人間君だな、英」


 レザーパンツのベルトに括り付けた4瓶の酒瓶のうち、1瓶を解いて、幼子は日本酒を一口、口に含んだ。唇に付着した酒の雫を革ジャンの袖で拭う。

 それがエネルギー源だったかのように幼子はナイフを構えた。


 英「今回はその意見に同意しますよ。なぁに、昔の血判状をしたためた時を思い出したんですよ」


 左眼の眼帯の位置を確認するように僕は眼帯を少し弄ぶ。イヴ様からプレゼントされた桜の鏤ちりばめられたネクタイを一直線になるように直した。

 そして、妖刀 竜水翔りゅうすいしょうの具合を試す為に一振りした。


 始「英兄ぃ、そういうのを何て言うか、知ってる? 感傷っていうんだよ。あんまし、よくないよ」


 自慢の吹き矢で一体のスカルドラゴンを仕留めた戦堕始がフットワーク軽く、2階に設けられた看板から地上へと落ちるように着地した。

 短パンを払いながら、随分と生意気な事を戦堕始は言った。


 始のくすんだ金髪を軽く撫でながら、いつものように爽やかに微笑んでみせる。


 英「大丈夫だよ。僕はここで傷を負うような鍛え方はしていない。イヴ様、りりす様と共に華井恵里に一太刀、浴びせるまでは傷を負わない予定ですよ」


 咲良「英、本気? 多分、邪神、出てくるよ?」


 眠そうに咲良が目を擦る。背中まで伸ばした緑色の髪が少々、乱れているのが気になるが今の状況では直せないだろう。


 英「…………それはイレギュラーなのでノーカウントにしませんか? 咲良」


 咲良「都合、良いルール? 大人、いつも、そう」


 始「咲良、反面教師に俺らはちょー良い子になろうぜ! 目指せ、格好いい大人」


 英「まぁ、このくらいの相手は皆さん、目を瞑って相手、出来ますよね。できなければ、この先、少々、厳しいですよ。イヴ様、りりす様を教導して華井恵里と対峙してゆくのは?」


 始「余裕!」


 幼子「余裕!」


 咲良「余裕……。ぐぅー」


 英「余裕ですね」


 卑弥呼【余裕……。だが、ちゃんと闘え。相手が心なしかキレておる】


 小麦色の肌が特徴的な60代には思えないロリ少女 卑弥呼さんがプラカードを必死に振っている。


 きっと、緊張感を保って闘えと言う意味なのだろうが、このメンバーでLevel 270程度のドラゴンの幼生体に負けるとは思えない。今も5体のスカルドラゴンの一斉ダークドラゴンブレスを受けているが…………簡単に回避可能である。


 回避できないのは――

 始「ちょっ、痛ぁ。中学校で人気だったショタフェイスに傷がつくじゃん」

 ――卑弥呼さんのプラカードのようだ。早速、始の頭にたんこぶができた。


 卑弥呼【これからはその傷で高校デビューすれば良い】


 英「こちらにいる分は今、ダークドラゴンブレスを僕らに吐いている五体のみです。さぁ、一人、一体と行きましょう」


 幼子「んじゃあ、行くぞ!」


 咲良「おう」


 始「うしっ!」


 卑弥呼【老体にはきつくないだろうか……】


 一人、一体、スカルドラゴンを仕留める為に僕らは散開する。



 視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時25分


 英「あまり、時間を掛けたくはありません。ドラゴンの幼生体は一刀両断の下に斬り伏せる! たぁ!」


 雨雲英は右腰に妖刀 竜水翔りゅうすいしょう軌跡きせきの剣、左腰に銃剣 ディスゴッド、イヴの守護者の証である刀 銀縁ぎんえんと携えているうち、鞘から妖刀 竜水翔りゅうすいしょうを抜刀して、怒濤の如き叫びを放っているスカルドラゴンの首を一閃する。

 スカルドラゴンの頭部は……すっーとそれが当たり前のようにアスファルトの上に落ちた。

 ゆっくりとスカルドラゴンに背中を見せて、英は次の行動に移るべく、歩き出す。

 いつの間にか、妖刀 竜水翔りゅうすいしょうは鞘に収まっていた。


 英「悪く思わないで下さい……。この国にはこうまでして護りたい僕の大切なモノが多くある。ただ、それだけの事です」


 *


 咲良「ぐぅー、ぐぅー、すぴぃー」


 新羅咲良は夢と現実を繰りかえしながら…………スカルドラゴンの爪による猛攻を避け続ける。

 スカルドラゴンはエメラルド色の髪の一房さえ、咲良から奪うことはできない。

 咲良は朦朧とした意識の中、スカルドラゴンの腹部の一箇所を何度か、スカルドラゴンの攻撃を避ける度に打ち込む。

 やがて、スカルドラゴンのHPが尽きて、スカルドラゴンは心臓発作を起こし、震える身体で立つことが出来ず、仰向けに倒れた。そのまま、一息、大きく息を吐いて絶命した。


 咲良「……あっ、倒した」


 やっと、現実に戻ってきた咲良は死んでいるスカルドラゴンを見て、ちょっと、びっくりしたのだが……。


 咲良「ん……ブイ?」


 とりあえず、ピースサインをスカルドラゴンの死体の前ですることにした。

 スカルドラゴンの死因、咲良の眠りを邪魔した為。

 その死因ではあまりにスカルドラゴンが可哀相だった……。


 *


 始「まぁ、まぁ、待ちなよ」


 そう、戦堕始が声を掛けた処で違う種であるスカルドラゴンが聞くはずがない。スカルドラゴンは男性としては小柄な方である始に突進してきた。

 始は冷静にスカルドラゴンの眉間に猛毒を塗り付けた吹き矢を打ち込む。

 スカルドラゴンは自分が何故、止まったかも分からずに…………そのまま、横に崩れた。


 始「時代は剣や銃じゃなくて、毒だよね。尤も、イヴ様は自然治癒力が強い為、どんな毒も効かないけど。そんな例外、他にいるわけ……あー、りりす様はどうなのだろう。調べようがないけどね。さて、他の連中は」


 *


 幼子「酒がもうねぇーからさっさとお前を倒して、酒を調達しにいく」


 美麗幼子はダークドラゴンブレスを連続して吹いているスカルドラゴンを指差して宣言した。

 そして、その宣言通り、通常ではブレスの海を越えなければ、スカルドラゴンを攻撃できない位置にいるのにスカルドラゴンは倒れて絶命した。

 スカルドラゴンの脳天に煌めくモノが刺さっていた。それは幼子が投擲したナイフだった。スカルドラゴンの両眼にもナイフが刺さっている。

 わずか、一瞬で急所を狙った見事な攻撃だった。しかし、それを誇ることなく、レザーパンツのポケットに手を入れて酒屋に入ってゆく。


 幼子「お金を置いておけば大丈夫だろうよ」

 早速、棚の日本酒を物色しようとするが、プラカードに阻まれる。そのプラカードにはこう、書かれていた。


 卑弥呼【終わったなら、さっさとイヴ様とりりす様の様子の確認!】


 幼子「そういう卑弥呼さんは終わったのか――」


 振り向き、着物姿の卑弥呼を確認した幼子は卑弥呼の指差す方向を見る。

 そこにはただ、半壊した美容院の建物しか存在していなかった。それが意味するのはただ、一つだった。

 さすがの幼子も容赦無さに半笑いする。


 幼子「――よ。相変わらず、塵一つも残さないのか。怖い、怖い、南国風ロリ婆 卑弥呼」


 卑弥呼【ロリでも、婆でもない。わたくしはまだ、若いモノには負けない! 皇族に楯突く者は危険種動物で在ろうと極刑】






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