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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第96話 空虚次元空間より来たる怪物

 

 第96話 空虚次元空間より来たる怪物


 視点 神の視点 神の視点  ※文法の視点名です。

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 4時15分



 急速に広がったヒビからこの世界に侵入してきたモノ。

 膝蓋骨しつがいこつから基節骨きせつこつまでの脚の骨が地球側に入った。

 それは凪沙南イヴにとっては馴染みのあるモノだった。あまりにも不気味な姿をしたそいつは…………誰がどう見てもコミュニケーションの取れない明確な敵だった。


 少女神 リンテリア「ありゃあ? ちょっと、頑張らないといけない雑魚の登場ですねん。いいわ、イヴ。今、残ってる奴を使って総力戦に切り替えても」


 少女神 リンテリアは突然、凪沙南イヴの目の前に”神生魔法しんせいまほう”の効果で瞬間的に展望室付き自動車の展望室から、移動して現れた。


 イヴとりりすが古代魔法 テレポートではない移動魔法に驚いている処を別にそんなに凄いことをしていないという常識を保っている少女神 リンテリアは展望室付き自動車の前に止まっている飛行車ひこうしゃのボンネット上にジャンプして飛び乗り、あろうことか、まだ、一体 ディスターが残っている事や、ひび割れた空間から現れつつある骨の腕などを確認できるのに寝転んだ。そして、少女神 リンテリアは読みかけのエロロリ漫画を堂々と読み出した。


 少女神 リンテリア「んってことでチミ達、読書タイム♪ に入るからバッチし、これから空虚次元空間から地球へと出てくるであろうスカルドラゴンの群れを倒してねん」


 傍若無人ぶりは今更だが、読書タイムのタイムがネイティブアメリカンの発音並みに上手かったのに反感を覚えているイヴ達はその反感が外に出るのを防ぐ事に必死で少女神 リンテリアに頷けなかった。

 それを不満と思った銀色おかっぱのチビな神様はエロロリ漫画を読んだまま、再び、口を開く。


 少女神 リンテリア「しょうがないねん。スペシャルサービスだよん。残り1体の虫の玩具を壊してあげるん」


 イヴ「殺すでない! 少女神 リンテリア」


 少女神 リンテリア「何で、私といーちゃんにとって虫(人間)は足下でウロチョロする何か、鬱陶しいのでしょう?」


 少女神 リンテリアはゆっくりと右手を挙げる。

 その指先を少女神 リンテリアはさも、当たり前に鳴らした。殺人スイッチの役割を果たしているであろう音が静かな街に響く。


 その音が鳴った瞬間、1万人以上の魔力に匹敵する魔力の塊が現れて、少女神 リンテリアが「あっちへ行け」と手振りで指示すると目には見えない速度でそのあっちを目指して走り出す。

 暴れるブロンズパワーディスターを目指して、ダサいヒーローが誰も頼んでいないのに子ども達にヒーロー技を見せるべく、意気込んでいる脇を通り抜けて、魔力の塊――神魔力球しんまりょくきゅうが走り続ける。


 フェニックスリボルバー「何だ! あの神々しい魔力は! あんなのに触れたら……」


 イヴ「神魔力球……」


 真央「もしかして、あれが神の魔力。神魔力の基礎? 桁違い……」


 りりす「古代魔法と比べるのも馬鹿らしいくらいのチート」


 セリカ「精霊を感じる力が弱いわたくしでも感じます。風が、大地が、空が、太陽まで少女神 リンテリア様の神魔力球に怯えていますわ……」


 咲良「ぐぅー」 ※それでも咲良は眠り続ける。


 アイシャ「イヴにもいつか、できる神のわざ


 イヴ達が神魔力球に対して口々に感想を述べている間に豆粒ほどの神魔力球はブロンズパワーディスターの胸部に吸い込まれてゆく。

 ブロンズディスターは急に動かなくなり、破裂した。破裂した部位達はどれが何なのか? 解らないくらい砂のようになって四散する。


 イヴ「あっ……」


 イヴが喉からやっと、発した声は人間の諸行無常を嘆いた音色に帯びていた。心なしか、神の”本当”の力の一端に触れて身体が震えている。

 イヴだけではなく、その場でイヴを初めとした位の高い者を警護していた宮内庁の黒スーツ達や日本軍、イヴの私設騎士団 蒼薔薇の騎士達や、勿論、イヴの仲間達も全身を圧倒的な力の顕現に怯えて震わせていた。

 この震えは人間が炎を制する前の猿の時代に感じた炎に対する恐怖や畏怖に似ている。故にこの震えから素早く、立ち去ることはできない。


 しかし、勇気と希望を全身甲冑に帯びた凪沙南市御当地ヒーロー フェニックスリボルバーは違った。彼は震える脚を三度、叩き、平常心を取り戻す。


 フェニックスリボルバー「これは正義ではない。悪の所業だ!」


 フェニックスリボルバーはエロロリ漫画をボンネット上で寝転んで読んでいる少女神 リンテリアに抗議の叫びを上げる。


 少女神 リンテリア「なぁに? かっこ付けてるの? ダサい虫。パイロットごと、死ねばいい。あいつらは悪の道に走ったんだからそういう結末もアリ……なんてダサい虫も思っていた癖に」


 ウザそうに頭を掻いてそう、フェニックスリボルバーに反論した。


 その言葉はフェニックスリボルバーにとっては図星だった。彼は頭にきて少女神 リンテリアに怒りの言葉を放つ。


 フェニックスリボルバー「お前なんか神――」


 決定的な一言を言う前に凪沙南未来が鞘でフェニックスリボルバーの両足を払い、言葉を強制的に止めさせる。


 フェニックスリボルバー「――うわぁっ」


 と、情けない声を発しながら全身甲冑の男は前のめりに倒れた。ガシャッンという全身甲冑の重さが解る音がした。


 未来「止せ、殺されるぞ」


 未来の言葉の通り、イヴと親しくもなく重要ではないダサいヒーローを少女神 リンテリアは物理的に消滅させるオプションが無数に存在していた。


 少女神 リンテリア「んじゃあ、よろぉー」


 *


 完全に空虚次元空間から地球へと出てきたスカルドラゴンの群れはまさに名前の通り、白い骨だけで組み上げられたドラゴンだった。どうやって生きているのか? イヴには全く、理解できなかった。

 固まって闘うのはスカルドラゴンの攻撃の的になると判断した未来の一声でパーティーは以下の通りに組まれた。決め方はその場で作成したあみだくじだ。


 戦闘パーティー その1

 凪沙南イヴ 、聖 心、新刀寺明日葉、蓮恭二、蓮恋歌、池内桜花


 戦闘パーティー その2

 新羅咲良、雨雲英、戦堕始、美麗幼子、時雪卑弥呼


 戦闘パーティー その3

 凪沙南りりす、凪沙南未来、掛川龍胆、掛川虎、メイヤ、黒猫 リル


 戦闘パーティー その4

 北庄真央、メイシェ・ブラン、桃李ゆい、テスラ・リメンバー


 戦闘パーティー その5

 セリカ・シーリング、フェニックスリボルバー、覇道プリムラ


 戦闘パーティー その6

 アイシャ、リイーシャ、ドーガ、近浪千里


 未来「では、散開するぞ! その他の者は均等に背後から自動装填銃やパワースーツの武装で援護を頼む」


 全員「はい!」


 パーティーメンバーが決定されるとすぐに散開して、スカルドラゴンに狙われる率を下げる。


 *


 ~新羅咲良班~


 咲良は眠かったのが嘘のように覚醒して、拳を何もない場所に向かって練り上げてゆく。


 咲良「今日、私、拳、冴えてる」


 英「あれがスカルドラゴンですか……。全部で四十匹、いますね。強さはどれくらいなのしょう?」


 少女神 リンテリア「えーとねん。そうね、Level 270の個体ね。まだ、子どもだからそんなに強くないよん。神、ヴァンパイア族に類する者の攻撃はもの凄く、スカルドラゴンには有効。後、竜殺しの装備があると楽。大したことのない経験値稼ぎには丁度良い相手ねん」


 英「ところでリンテリア様は何故、僕の背中に負ぶさっているのでしょうか?」


 少女神 リンテリア「すぐるるるの背中にいーちゃん、いつも、乗っているからどんな感じかなって」


 英「………そうですか」


 そうですか、以外に神というもはや、自分の認識以上の存在に英は何も言えなかった。ただ、早くスカルドラゴンの群れを倒して、自分が命を賭けて守るべき皇女 凪沙南イヴ様と凪沙南りりす様の下へ駆け付けるべきだと思った。

 英は少女神 リンテリアのアドバイスを受けて四本の刀の中から……妖刀 竜水翔りゅうすいしょうを選び、構える。

 そんな真面目な英とは対照的に美麗幼子は腰に括り付けた酒壷を解いて、酒壺のまま、ごくごくと喉を鳴らして美味そうに飲んでいた。


 幼子「うめぇー。イヴんちの城から貰った酒は最高だな。イヴが飲めないから貯まる一方だって言ってたし、これからもちょくちょく、行ってやんぜ」


 時雪卑弥呼は幼子の酒を飲む姿を見て、プラカードに言葉を書く。


 卑弥呼【こいつら、チームとして成り立っているのだろうか?】


 戦堕始せんだはじめ「大丈夫だよ、ばあさん。僕っちが酸で全て、やっつけ――」


 自分をババアと言ってくれた短パン姿の似合うショタっ子に反射的に卑弥呼はプラカードを投げつける。


 始「いてぇー」


 抜群の命中率でプラカードはショタっ子――始の染め上げた汚い金髪の頭にぶつかった。

 卑弥呼は心の中でざまぁーと思った。



 *


 ~凪沙南イヴ班~


 明日葉「そもそも、空虚次元空間って何だ! このお兄ちゃんに教えなさい」


 イヴ「ツッコミを真央並みに入れたい処だが時間がないのだ。教えよう。空虚次元空間は各神層世界の外にある空間の事なのだ。地球と宇宙のような関係と覚えておけば間違いではないだろう。概念は同じ」


 イヴ「ってひーちゃん! 暑苦しいのだ」


 心「駄目よ。イヴたんは心お姉たんの愛の拘束から逃げられないの♪」


 いつも、麗しく黒髪、おかっぱ頭の着物美人の聖心も大好きな妹的存在である凪沙南イヴの前ではついつい、弄りたくなってしまい、今のようにイヴの小さな身体を自分の両腕に包み込んでいる。

 盲目でありながら、聖心は人生を謳歌していた。その人生でイヴの優しさと出会えたことが目では見えないあらゆるモノの微弱な魔力を完全に把握してその位置を捉える技術を習得する切っ掛けになり、あらゆる感情を知るイヴとの友達付き合いに繋がった。

 だからこそ、護らなければいけない分家筋 聖家の者としてではなく、自称 お姉ちゃんとして、と聖心はそっと、イヴの身体から手を離し、十本の指全てに魔力の糸を構築する。


 イヴ「綺麗なのだ。ひーちゃんの糸」


 心「綺麗に決まっています。これは妹を護りたい姉の切実な祈りの糸ですから」


 イヴ「ありがとう、ひーちゃん」


 心「お礼なんて言わなくても良いわ。これが私、聖心の生きる道……失った明日の代わりに見つけた白銀の明日だから」



挿絵(By みてみん)


イラストはトシさんに描いて頂きました。


新刀寺 明日葉という男性で新刀寺銀行の跡取り息子です。

自称 イヴのお兄ちゃんを名乗るアキバ系男子で、漫画、アニメ、ラノベ、ゲームなどのサブカルに詳しいですよ。



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