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創世する世界のイヴ # Genesis to the world's Eve  作者: 遍駆羽御
本編―――― 第3章 眠れる天賦
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第94話 あたしの職場を護れ! 前編

 

 第94話 あたしの職場を護れ! 前編


 視点 北庄真央

 場所 地球 旧世界 東京都 千代田区、地球 新世界 東京都 凪紗南市

 日時 2033年 4月9日 午後 3時45分



 地球、異世界 リンテリアで一番、駄目な神様 少女神 リンテリアがあたし達の乗る展望室付き自動車に近寄ってくる。にこやかに寄ってくる。その理由をあたしは100%の確率で言い当てることができる。

 あたし、”ちょっと”貧乏で異世界 リンテリアに在る竜族が多く暮らす国 北庄の姫 北庄真央はみんなにナイショだけど、覆面イラストレーター 西折真昼にしおりまひるなのです♪

 あたしが描いた新作 妹のことを思うと暴走しちゃう!(大きなお友達しか購入できないロリエロ漫画)を少女神 リンテリアは脇に挟んでいる。そのロリエロ漫画が接近中の銀色おかっぱ変態神様のご機嫌の理由だ。困ったことに神としての威厳はマイナス方向にいつも、急降下していて、その原因の一つがあたしの婚約者 イヴに似た登場人物が出てくるロリエロ漫画の蒐集しゅうしゅうだ。


 基本、イヴ大好きな少女神様は全面硝子窓を知らずに、イヴに近寄ろうとして、ガツンとおでこをぶつけた。痛そうにしゃがんだ後、迷うことなく、少女神 リンテリア様は飛び膝蹴りを全面硝子窓にぶつかる。

 ぶつかった瞬間、HP38000もの耐久性のある硝子はただの硝子屑の群れになって、あっちこっちに散らばってゆく。硝子家族の一家離散だ。

 それを成した少女神 リンテリア様は悪びれることなく、


 少女神 リンテリア「ごめんちゃい! 邪魔だからぶち壊しちゃった♪ 手加減したあたちをむしろ、褒めて、褒めて、いーちゃん♪」


 とほざいて、硝子の粉塗れの小学生体型の身体でイヴの胸元へと飛び込もうとしている。

 それを完遂される前にあたしが少女神の右腕を掴み、アイシャが少女神の左腕を掴んだ。セリカが待ってました! と何かを掴むような動作をするが……その何かがない。

 はっ! としたセリカが驚いた表情を浮かべた。少し尖った耳がぴくっと揺れる。


 真央「ねぇーよ、箒。あんた、持って来ようとして止められたでしょう。あんたのお父様に。お願いだから何時ぞやの式典の時みたくいきなり、掃除を始めないでくれって」


 セリカ「あらあら、そうでしたわ。わたくしのマイ 箒 カトリーヌは今頃、マリアちゃんと遊んでいますわ。マリアちゃん、カトリーヌでジブリごっこするのが好きなんです」


 真央「それ、大切にされてんの」


 咲良がいつの間にか、起きて何処から出したのか? は定かではないが、折り畳みの箒を仰々しく、片膝を床に着いて、両手でセリカに差し出す。


 咲良「通販、サワムラ、新作、折り畳み箒、いる?」


 と、首を可愛くかしげる。エメラルドの色の髪が太陽光に照らされて輝いた。その輝きを保つ新羅咲良が持っているのだから、折り畳み箒が特別に見えてくる。


 どうやら、セリカもそう感じたようでパン! と右手と左手を重ね合わせて喜ぶ。


 セリカ「まぁ、伝説の箒ですわ、きっと」


 真央「いやいや、安すぎるだろう。100円ショップ並みに安いだろう、その伝説」


 イヴ「さぁ、受け取るが良い、勇者 セリカよ!」


 イヴの声に合わせて、咲良の小さな口がパクパクと動く。まるで餌を待っているヒナのようだ。しかし、眠そうなヒナだな……巣から落ちそう……生後 1時間くらいで。


 セリカ「受け取ります! ところで王様、旅立つ勇者に100ゴールドくらいの支度金はケチり過ぎだと思います」


 りりす「勇者なんぞ、幾らでも代わりはいる。実はセリカ・シーリングよ。お前は219人目の勇者だ。くくくっ」


 無表情から繰り出されるドSな唇の歪みが残酷なフィクションをさらに残酷に彩る。しかし、こいつ、年上にこの口の利き方。いや、それは小学生であるあたしも同じか。むしろ、未来様に口の利き方で怒られる率が分散される。喜ばしいことだ。


 アイシャ「勇者を愚弄するとイヴが怒ります。近親相姦希望厨二病皇女様」


 うわぁー、そうだった。あたしの顔が恐怖で歪む。

 しかし、セリカに箒で硝子の粉を払ってもらっている少女神は微笑ましい者を見る優しい表情であたし達を見守っている。

 どういうことだ?

 イヴがふざけた事を後悔しているかのように下を向いているりりすに近寄ると……


 イヴ「めっ!」


 明らかに軽い拳がりりすの烏色の髪にぶつかろうとした処で、急にイヴの拳が解かれ、りりすの髪を撫でた。


 真央「おい、そこは拳だろう?」


 アイシャ「です。です」


 イヴ「可愛い妹を殴れないのだぁ。おしおきなんて可哀想なのだ……」


 りりす「イヴお姉様、最大の感謝を」


 りりすはイヴに感謝の言葉を捧げて、そっと、イヴの頬に口づけした。


 イヴ「くつぐったいのだぁ、りりすぅー」


 少女神 リンテリア「チミ達、姉妹で百合ってる場合じゃないのんよ。今、あたちの魔法で四体のディスターのいる半径 一キロメートルをドーム上に閉じ込めました。上空にも結界が入り巡らされているから、戦闘機とかいう虫のオモチャの攻撃は四体のディスターに届きません。チミ達以外の虫といーちゃん以外は逃げられるように設定してあるから逃げ遅れはない。さぁ、じっくり、経験値稼ぎに勤しんでねん」


 普段の少女神 リンテリア様とは違う真顔は王族? みたいな気品さに満ちあふれていた。あたし……いや、ここにいる全員は再度、認識しただろう……。”おちゃらけている普段の少女神 リンテリア様はやはり、演技”だと。


 未来様が代表して少女神 リンテリアに訪ねる。


 未来「ここまでしたからには、条件があるのだろう、神様? ここまでする理由は神様の仕事を継ぐイヴの成長促進だろう? ディスターという神、ヴァンパイア族、ヒーロー以外の物理攻撃、魔法攻撃を全て半減するゼウスの心臓搭載の木偶人形との戦闘経験を積ませたかったのだろう? あるのか? ”あれ以上の敵と戦うシナリオが神様に?”」


 少女神 リンテリア「後半の質問にはひみちゅ。前半の条件は戦闘メンバーは……いーちゃん、りーちゃん、真央、セリカ、アイシャ、咲良、ヒーロー フェニックス虫」


 そう言って、こちらへと飛んでくる白い全身甲冑のダサイ姿をしているヒーローを指さす。ヒーローは肩を落として呟いている。


 フェニックスリボルバー「ああぁー、せっかく、助けたのに……何故、ぼくちんが怒られる? お姫様抱っこが気持ち悪いってあの場合、仕方がない……うじうじうじうじ……」


 なんか、うじうじしていた。

 そのジメジメした感じが気に入らない性格である未来様がダサイヒーローに向かって叫ぶ。


 未来「駆け足で来い! 来ないと正体をばらすぞ! 借金2兆円男」


 フェニックスリボルバー「ちょ、ちょ、勘弁して下さいよ~。ぼくちん、ヒーロー稼業ができなくなる」


 そう言いながら、全身甲冑の背面に装備されたぼろいマントに隠されているブースターを噴かして、飛んでくる。


 そんなに時間が経ったない内にダサイヒーローはあたし達のいる展望室付きの自動車へと辿り着いた。

 今、展望室で額の汗を拭くような動作をしている。

 それにしても――――


 真央「ダサイ」


 イヴ「言ってはいけないのだ。これでもこやつは苦労しているのだ。女の子にしか見えない弟さんを抱えて生きている。実にできた借金2兆円さんなのだ」


 フェニックスリボルバー「こ、皇女様がぼくちんのプライベートデータをばらしてる。だ、だめー、それ以上、言っちゃ、めっ」


 りりす「随分、名乗りをあげた時と違う?」


 咲良「これ、素、ヘタレ」


 りりす「未来お姉様、神様に従い、凪沙南姉妹と愉快な下僕達でディスターを殲滅しますか? 今も建物を壊されて早くしないと排他的な景色に様変わりする」


 未来「ああ、そう――――」


 あたしはディスターがどれくらい、凪沙南市の街を破壊したのか? 目視で確認するべく、視線を窓枠のみとなった窓へと向けた。

 景気よく、ディスター 四体が建物を破壊してゆく。


 民間人達は逃げたようで誰一人、いなかった。いるのは宮内庁の人間や、警察、日本軍人等、公の人間だけだ。その人達もディスター 四体から距離を取っている。まずはディスターの強さを見極める処から始めるのだろう。民間人がいなければ、それがベストな選択だ。この闘いは……命を――――


 あたしの思考が停止する。


 ディスター 四体がこのままではあたしがバイトをしている南屋の牛丼店 凪沙南天皇支店に突っ込んでしまう。そんなツッコミいらねぇー。

 この闘いは命を賭ける闘いだ。

 護ろう、深夜シフト 週3回 時給 750円。


 あたしは背中の翼を羽ばたかせて、南屋の牛丼店のマスコットキャラ メイド服を着た雌牛 みなみちゃんを目指して飛ぶ。

 短距離ならば、頑張れば、竜変身しなくとも飛べる!


 真央「おおおおおおおーい。あれ、あたしの職場! バイト先! 壊されてたまるか! こんちょくしょう」


 未来「皆、あの馬鹿を頼む……」




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