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2話

太陽はちょうど脳天の上に昇った頃だった。


俺は人混みに紛れながら、ある目的地へと向かうためにこの茹だる様な暑さと燦々と降り注ぐ直射日光を浴びながら、無心に、ひたすら歩いていた。


現在、日本は四季でいう夏。summer。

そして東京都心はヒートアイランド現象状態である。


ヒートアイランド現象とは、和訳すると「熱の島」。

その名の通り、都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて高温を示す現象である。

特に、巨大都市とも呼ばれる東京は、郊外に比べて高温や乾燥で独特の風系を有する、何より人口密度が高い。

そのおかげでヒートアイランド現象の進行がアジアの中でも早いとか聞いたことあるけど。


歩いてるだけでアスファルトから熱気が伝わってくる。

額には汗がにじみ出てくる。

ただでさえ、あたりは見渡す限りの人、人、人。

この光景を見れば「人がゴミのようだ!」なんて某アニメ作品に出てくるキャラクターのセリフだって言いたくもなる。


そりゃ、こんなにガラス張りの高層ビルに囲まれたんじゃ。

アスファルトだって鉄板の上にいるようなもんだ。


そんな鉄板の上を進んで歩く気にもなれない。普段の今頃なら家に引きこもる。必要以上に体力を使うだなんて滅相もない。だが俺は目的有らずして動く男ではない。勿論、行く先に意味があるからである。


「春…」


俺はこれから会えるであろう人の名前をふと口に出す。

どんな子なんだろう、という未知の世界に触れるかのような期待と緊張に胸がざわつく。


そうして考えてると目的地はすぐ目の前に差し掛かった。

俺はポケットからスマートフォンを取り出し手慣れた操作で春からの連絡を確認する。少し遅れるとのことだったので先に店の中に入ることにした。


中に入るとメイド服仕様のウエイトレスさんに通され席に案内される。

装飾から見て「宇宙」をイメージされた空間になっていて、落ち着いた青色で包まれた小さな喫茶店だった。


「へぇ…こんな所あったんだなぁ…」


しかし、客は圧倒的に女性が占めていた。ここに男一人放り込まれた気分になり少し気まずかった。ハーレムの中にいる男の心境が知れたもんじゃない。


「(まぁ…春と2人きりってことなんだし、傍からみたらカップルにしか見えないんじゃね?うん、大丈夫だ落ち着け…)」


彼女いない歴イコール年齢な俺にとっては、夢にまで見たシチュエーションでもある。


春が早く来てくれるのをまだかまだかと冷や汗をかきながら、あたりを見回しているうちに。ふとある点に気がついた。というより疑問が浮かんだ。


「あいつ、俺の顔知らないのにどうやって探すんだ…?服装の話だって何もしてないのによ……」


入店する客を見ながらあの人か?いや、この人か?と模索していると男の子が1人店に入ってきたのが目に入った。


白のワイシャツに黒の七分丈のズボンとシンプルな格好の男の子は、身長からして中学生くらいなのだが、髪の毛が金色だったものだから驚いてつい見入ってしまった。


「(なんだあの中学生は…夏休みだからって髪染めてんのか…?随分と調子に乗ってんなぁ…しかし1人でこんな所来るもんなのかねえ……)」


するとその男の子はウエイトレスさんへの案内を断ると、こちらに向かってスタスタと歩き、平然とした顔で俺の目の前の席に座り始めた。


「…!?え、あの、悪いんだけど。俺、他の人と待ち合わせてるんでこの席空けてもらわないと困るんだけど…」


突然の流れ作業のように事を進められ戸惑いながら尋ねると、金髪少年はふいに微笑み聞き返してきた。


「マサトさん、ですよね?今日は俺のわがまま行ってここに来てくれて、ありがとうごさまいます。」

「な、なんで俺の名前……」

「初めまして、俺の名前は(しゅん)です。会えて嬉しいよマサト!………っても年上だからちゃんと敬語使わないとですよね!なので今日は敬語でお話させてください。」


「…………男ぉ!?」


ーそうだ。

いつ、誰が、どこで。


(しゅん)のことを女だと言っただろうかー。


「あははー。やっぱり女だと思ってましたね?なんかそんな気はしてたんですよー…って、マサト!?どしたのそんなに項垂れて!気分悪いの!?」


「いや…何でもねーから気にすんな…」




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