暁が浮かれているわけ
口調がつかめてないです。
「伊吹くん!」
僕は昔からの友人で、今は保育士として働いている伊吹くんに抱きついた。
「おい、離れろ。あーくん、周りに花が舞ってるように見える」
「さっすが伊吹くん! あのね、あのね、僕。定職についたんだよ!」
伊吹くんは、少し驚いた後、へぇーと言った。なんかつまらないな。
「伊吹くん反応薄いー」
「いや、だってさ、何についたかも分からないし、そんなにそれだけで喜ぶ?」
そう。実はもう一個あるんだよね。僕は伊吹くんを彼の職場から連行しようとすると伊吹くんが何か叫んだ。
「待って、俺はまだ仕事が……」
「園長先生! 伊吹くん少しお借りします!」
と、僕が叫ぶと園長先生はたまには休みなさいと許可を出してくれた。そして、駅前のカフェ、前まで働いていた所に行った。
「はぁ、で何あーくん」
僕は店員さんに紅茶とモンブランを頼んだ。
「あ、暁くん。と、お友達? ゆっくりしていってね」
声をかけてくれたのは、同じシフトで仲良くしていた梨依乃さん。僕より四個ぐらい年下だけど結構大人びて見えるので、さん付けだ。
「えっとですね、勤め先は郵便局で、お手紙を配達していたんですよ!」
僕はあのときの光景を思い出しながらしゃべっているので少し興奮している。
「そしたらですね、住人のかたと鉢合わせして、少しお話をしようと思ったら……」
伊吹くんは自分で頼んだガトーショコラを口に運びながらで? という顔をしてきた。
「その、女の方なんだけど、声が出せないらしくって僕にメモを渡してきたの!」
そう。相手はしゃべることができないので僕が話しかけても困った顔をするだけで、もしかしてと思い、紙を渡すと予想したとおり、声を失ってしまったようだ。
「いや、あのさなんでメモになるの?」
「彼女、文通してたんだって。でその……相手の人が不慮の事故で亡くなっちゃったらしくって、ショックで声が出なくなって暇だったんだそうです。そして、僕がじゃあ文通しようよ! といったのがきっかけでメモにお互いの名前、住所とかを書いて渡した。ということ」
「ずいぶん長い話だこと。で、あーくんは嬉しいんだ? 定職について、女性の友達ができて」
伊吹くんさすがだ。僕の友達なだけある!
「うん、栞さんって言うんだけど本当かわいいんだって! あ、また一緒に遊ぼうよ」
「俺、仕事あるし。お前も仕事……」
勤めてはや2週間。有休をとるのは引けるが、栞さんのため!
「僕は有休。栞さんは、二十歳の一人暮らしだから。ということでけってーい!」
僕がこぶしをあげると梨依乃さんがやってきて暁くんと話しかけてきた。
「もう少し落ち着いて? あと、三人で出かけるならこれどうぞ」
と、ポケットから3枚チケットを取り出した。それは水族館のチケットで入場料無料とでかく書いてあった。
「え、梨依乃さんいいの!?」
「ええ。楽しいんできて。私は仕事でいけなくなっちゃったから」
伊吹くんのほうを見ると見習えという顔で僕を見ていたが見なかったことにしよう。
「はぁ、まあいいよ。じゃああーくん俺はこれで」
伊吹くんはチーターのように店を出て行った。これって僕が払えってこと!? まぁ、誘ったのは僕だし……しょうがないか。
カランコロンとベルがなり、ありがとうございました。という声が聴こえると僕は自宅に急いだ。栞さんに手紙を書くためだ。
「今日もいい天気だな」