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最弱の有能冒険者  作者: 夜つ七
第一章 ─劣等生─
6/13

【Episode4】

※感想にて質問があったので此処で書かせていただきますが、この物語がNTR、つまり寝取られ物かと言う質問には「その予定ではない」と答えさせていただきます。


 喫茶店の中、小さな悲鳴が響き渡る──わたしの声だ。

 尻を撫でられたからであり、驚いたのと、あまりの不快感に声が我慢できなかったという情けない現実である。


「いい尻してるじゃねえか」


 ゲラゲラと笑いながらステーキに齧り付く酔っ払いに思い切りトレイを投げつけてやりたくなったが、現在は仕事中。何があっても粗相をするわけにはいかない。

 ──それにだ、


「おうコラ、そこの馬鹿野郎。今すぐ有り金全部置いて死に晒すか、営業妨害で殺されたいか選べコラ」


 指を鳴らしながら奥から飛び出して来た店長はニコリと、残酷な笑みを浮かべて客へと近づいていく。

 それを見てはやし立てる者と、問題行動を起こした客へと哀れみの視線を向ける者。

 彼等は知っているのだ、店長──キャロさんが元【A級】の冒険者である事を。


「ああ、こっちは客だ。何したって問題な────」


 最期まで言い終わることなく、店の外へと吹き飛んでいく客に周囲のものは同情、せずに楽しげに笑っている。中にはざまあみろと吠える者まで存在した。

 その後、気絶している客を見付けた冒険者が何処かへと運んでいくのを見終わった後、店長は優しげな笑みを浮かべ、わたしの頭を撫で始める。


「フィル坊、こういう時は文句言ってもいいんだぞ?」

「そ、そうは言ってもわたしはバイトの身です。店の評判を下げるような行為は出来ません」

「……お前は本当にいい子だな」


 何故か撫でる力が強められ、そろそろ首が痛くなっていた。

 どうにかして欲しいんだがと周囲の者達に視線を送ると、男性客のほとんどがわたしの頭上で揺れる果実を凝視しているのに気付き、思わず溜息を吐いた。


「店長」

「どうしたフィル坊?」

「いい加減仕事に戻りましょう。注文がまだ途中です」


 ハッとした表情で急いで中へと戻る姿を見送った後、わたしもバイトを再開するのだった。


「フィルちゃん、こっち酒ちょうだい!」

「はい、少々お持ちください」


 ◆◆  ◆◆


 フィル坊──フィリルシェリアがこの店に来たのはある種の必然で、完璧な偶然だ。

 学園での評価を両親に知られ、学費等の援助を全て切られたフィル坊が仕事を探していた時、何故か人が来ない事で有名なこの店に足を踏み入れた時は驚いた。

 理由を聞けば寮から近いから、と何とも単純な理由で拍子抜けしたが、最初はファンクラブの面々がいつ襲ってくるか若干怯えていた。──事実何回か闇討ちを掛けられた事がある。


「いやはや、何がどう転ぶか分からんね」


 有能だと様々な知り合いから聞かされてはいたが、正直冗談半分に聞いていた。ギルドが欲しがっている、なんて聞いた時は腹を抱えて笑ったものだ。だが、

 フィル坊がバイトに来るようになってからと言うもの、わたしは奥で料理をする以外に仕事がなくなってしまった

 接客、掃除、飾付け。この辺りは既にフィル坊一人で行っている。その上帳簿や仕入れまでしており、どちらがバイトか分からなくなる程だ。まあ、楽が出来るのはいい事だ。


「店長、火吹き蜥蜴のステーキの大が1、中が2。野菜炒めを大皿でお願いします」

「分かった」


 言うが早いか、即座に材料を取り出して来たフィル坊はそのままジョッキに酒を注ぎ厨房を飛び出した。

 あの速度で一切の強化をしていないのだから驚きだ。無駄がないにも程がある。


「何で冒険者なんて目指してるんだろうな」


 理由は知らないが、どう考えても向いてない。魔力と気力の完全封印などと言う、ふざけた呪い(ギフト)持ちであるあの子が目指す職種(もの)としては不適切にも程がある。

 本人がなりたいのなら仕方がないと思わなくもないが、やはり危険だ。まだ若いのだから他の職を探した方が良いと思う。


「っと、フィル坊! ステーキ焼けたぞ!」

「分かりました」


 まあ、個人的言わせてもらえるなら。このままこの店で働いてもらえるのが一番なんだが。

 日刊ランキング2位……(呆然)

 読んでくださる皆様ありがとうございます。

 読んでくださる皆様に恥じないよう、一生懸命書かせていただきます。

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