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最弱の有能冒険者  作者: 夜つ七
第一章 ─劣等生─
2/13

【Prologue】

助言を頂いたので書かせていただきますが、この物語にはNTR要素は今のところ存在しません。プロット段階ではそのような物が存在しないので、それを期待している人には謝罪を。それを嫌悪している方はご安心ください。

 似たような描写が多くてすみませんでした

 私がまだ幼かった頃の話だ。

 私は人見知りが激しく、家族以外には心を開かなかった。いや、家族相手にも壁を作っていたかもしれない。理由は分からないが、昔から人が怖かったのだ。


 毎日自宅に籠り、商人だった祖父に頂いたオモチャで一人楽しく遊んでいた。私はそれで十分楽しかったんだが、どうも兄と幼馴染みは気に入らなかったらしい。無理矢理私を連れ出して動けなくなるまで駆け回されたのを覚えている。

 正直に言うと、この当時は幼馴染みすらも恐ろしかった。鬼ごっこなんて洒落にならない。汗と涙を流して森を疾走し、気が付いたら気絶なんて何度もあった。


「フィルは情けないわ」


 余計なお世話だ。自分は人間が怖いと何度も言っているではないか。君だって昔から虫が苦手だろう。


 だが、そんなショック療法染みた遊びのおかげが、それなりに人付き合いが出来るようになった時は驚いたものだ。尤も、それは自分よりも隣の幼馴染みの方が喜んでいるからだが。


 さて、気が付けば私達もそれなりに歳をとった。昔はお転婆だった君も、いつの間にか美人に育ち、村の男達にちやほらされる毎日だ。それを見る度に苛立ったのは、多分、きっと、友達だったからだ。友達が遠くに行って寂しいのは当たり前だろう。


 でも、ある日気付いたんだ。それがただの言い訳でしかないことが。


「フィル、私は学園に行こうと思う。学園に行って凄い冒険者になるの。フィルも一緒に来ない?」


  気が付けば私も行くと答えた時、彼女の抱き締められたのが忘れられない。あの笑顔が忘れられる訳がない。


「嬉しいわフィル。貴方が側にいないと全然楽しくないんだもの」

「わた、僕も、ルキナがいないと、寂しい」


 その後、付き合う事になった僕達は、互いに支えあうと誓いあった。

 だから僕は心に決めたんだ。彼女を守るために強くなろうと。






 目を覚ませば見慣れた天井。ああ、またダメだったのかと、それだけの情報で分かってしまった。

 此処は所謂保健室。今回は側頭部に一発だったなとこめかみを押さえる。もう傷は治療されているようで痛みはそれほどない。


「ようやく目覚めたか」


 この怪我人だろうが病人だろうが凍り付かせる声は保健室の魔王こと、アウェイン先生だ。女性らしいが男性より男らしいお方である。紅の髪と瞳だが何故か炎より氷を連想してしまうのは何故だろうか?


「また派手にやられたな。流石は劣等生、噂に名高い最弱ぶりだ」


 言葉のナイフが突き刺さる。泣きたいけどその通りなので泣いてはいけない。魔力はあるのに初級魔法すら使えない。闘気は人一倍あるのに使う事が出来ない。身体能力はある程度はあるが、基本性能だけでは強化した相手には勝てる訳がない。思わず嘆息してしまう。


「そこで憂鬱そうな顔でため息吐く暇があるなら帰れ」

「……はい」


 涙を堪えながら教室に向かう。ああ、目標は果てしなく遠い。彼女を守る事など不可能で、そもそも彼女は僕に守られる必要がない。いや、嫌われた僕が守れる筈がない。

 ……それを理解しているのに何故足掻き続けているのだろうか?



 ◆◆  ◆◆



 先程までいた馬鹿者の事を思い出す。フィルと呼ばれているあの少年の成績は正直に言うと芳しくない。実技が足を引っ張っているせいで最底辺、劣等生と嘲られている程だ。

 だが、嘲ている者達は彼の何を知っているんだろうか。一度骨が折れた時に調べたあの肉体は例えるなら孤剣だ。徹底的に鍛えられ、機能美を追求した無駄のない肉体は魔力や闘気に頼っている半端者とは最早別物だ。一朝一夕であそこまで鍛えれる筈がない。日夜努力し続けているんだろう。


「世の中は不公平、というか訳が分からん」


 あのように鍛えているのは付き合っていた(・・・・・・・)少女の為だ。神様からの呪い(ギフト)で実力が発揮出来なくなった彼があそこまで足掻くのは恋心の為。だと言うのに、少女は少年を捨て、別の男を愛している。噂では彼が浮気をしたと言われているがとんでもない。不器用且愚直なあの男が浮気するなら世の中の男子は全員浮気するだろう。これだけは断言してもいい。


「むしろ、才能のない彼を見捨てたと言われた方が説得力がある」


 彼女が他の男に走ったのも呪いが発動してから僅か2ヶ月だ。タイミング的にもそちらの方が納得出来る。むしろ、こちらの方が信憑性が高い、高過ぎると言ってもいい。

 彼女が今付き合っている男は皮肉にもフィルの双子の兄だ。どちらかと言うと女性的なフィルとは違い、巌のようなあの男。確か名前はウィルスだったか。あらゆる意味でフィルとは正反対な青年だ。


 さながら写し鏡のよう。見た目も、性格も、得意科目も全てが正反対。この学園では実技が優先される為、ウィルスが優秀だと言われているが単に得意分野だっただけの話だ。冒険者になったなら本当に役に立つのはフィルのような知識と経験の両方を持っている奴だろう。

 彼女がもしフィルを見捨て、優秀なウィルスを取ったのだとしたら……私は彼女を殴るかもしれない。


「そんな理由で見捨てた訳じゃないよな?」


 フィルの為にもそうであって欲しいものだ。あの少年の努力は、そんな理由で蔑ろにされていい物ではないのだから。



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