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最弱の有能冒険者  作者: 夜つ七
第二章 ─長期休暇─
12/13

【Episode1】

 お久しぶりです七つ夜でございます。

 一年以上更新停止をして申し訳ありませんでした。諸事情でログインできなかったんですが、何とか復活しました。

 HDDがぶっ壊れ、パソコンは使えなくなりましたのでプロットが消失しましたが、少しずつ書き、投稿していきたいと思います。

 ────冒険者。

 名前からは想像しにくいが、現実は何でも屋の集団に近い。

 尤も、その殆どが魔物の討伐や秘境の探索に興味を示している為、現実を知らない田舎者達からすればそれは憧れを抱くには十分な、夢溢れる職業に見えてしまうだろう。

 そんな夢を抱いているのか、子供がギルドの前を何度も行き来しては、少し怯えながらギルド内を覗いているの事に苦笑しながら、私はギルドの扉を開ける。

 今日は珍しく伽藍としていて、普段の活気さが嘘のように静まり返っていた。今日は何か特別な事があるのだろうかと、いつも通りにアインさんの前まで移動した。


「お疲れ様です」

「おや、ようやく来たね」


 待ってましたと言わんばかりのその一言に思わず小首を傾げてしまう。自分に何か用なのだろうか。……だとするのならそれは個人的な事なのだろう。ギルドからの要件は全て学園に連絡され、終了時にその内容を教えられるのが一般的だ。そうでない場合は指名依頼か、もしくは個人の要件で、例外はまず存在しない。


「来て早速で悪いんだけど、この依頼を受けてもらえないかな?」


 渡された書類の内容は簡潔に言えば───件の先輩からの救援依頼だ。

 情けないことに、指摘された点を直そうと必死に努力したが自分ではそれでいいか判断できず、店長に謝ろうにも踏ん切りがつかない。だから僕に、正確には店長と仲が良く、駄目な点を指摘して、アドバイスくれそうな存在に頼ったらしい。


「アインさんですか? 私に頼むように進めたのは」

「やだなぁ、フィルちゃんに面倒事を押し作るなんて僕には出来ないさ」


 胡散臭さを爽やかな笑みで偽装した犬耳美形に殴りたいと内心で舌打ちし、こちらも満面の笑みでそうですか、そうですよねと笑い会う。皮肉だが、鉄仮面は流石の不動だ。年季が違いすぎる。


「分かりました、承ります」

「うん、ありがとう。アレでも若手ではそれなりだから潰れられると面倒なんだ」

「……期待はしないでくださいね」

「本来は個人の問題なんだから最低限しか期待しないさ」


 そう言いながらも楽しげに微笑むアインさんの眼差しが真っ直ぐに私を射抜いていた。

 ああ、憂鬱だ。期待されても出来ることなど限られている私としては、なるべく指名依頼(こういうの)は受けたくないのに。



 ◆◆ ◆◆



 さて、と。

 青春している学生らしい悩み事をわざわざ依頼するなんて奇妙な輩もいるもんだと、最近の学生の迷走具合にやれやれと溜め息を吐いたけど、まあ、何にせよ良いタイミングだった。

 今回、と言うか学園の連休中はあまりギルドに来て欲しくない事情がある。

 事情と言うか、厄介事と言うか、……まあ、何にせよ無垢な──純粋ではない──フィルちゃんに関わらせるにはあまりに面倒な輩から遠ざける理由が出来たのは行幸だった。その点だけは依頼人であるアダルブレヒトを評価しても良いだろう。


「おい、受付」


 背後からの声に内心で舌打ちする。紙一重で邂逅させずに済んだが、もしかしたらフィルちゃんを知られた可能性がある。

 そんな内心をおくびも出さず、満面の笑みで背後に存在する(クズ)に振り向いた。


「はい、何ですかカンゼィルさん」

「いつになればフィルと言うガキは来る? 俺は仕事で来てるんだ、さっさと連れてこい」

「お言葉ですがカンゼィルさん、彼は冒険者である前に学生です。所属先はギルドではなく学園である以上、我々が直接的に関わる事は御法度なのでは?」

「だから友人関係である貴様が連れてこいと言っているんだ。その程度も分からんか駄犬が」


 ギルド関係者が学園の生徒に干渉する事そのものが御法度なのだと目の前の男爵は理解していないらしい。

 そもそもギルドと学園の創出者であるヴァイゼ・フォアルペルクは互いの関係を構築する際に学園有利にルールを設けた。これは未来ある若者を、大人のくだらない意地、見栄、興味、欲望諸々から守るためだ。

 だと言うのに、ギルドの看板である受付が、交遊関係を盾に馬鹿な貴族に学生を売るわけがないだろう。


「それは出来ませんね、僕はあくまでもギルド職員として彼に接しています。ですので私的な付き合いはありませんし、何より僕はギルドの職員であり、貴方の部下ではありませんので首を縦に振るうつもりは毛頭ありませんよ?」

「ふん、──流石は元【S級】か、他所でうまく言ったからと権力で屈する筈もないか」

「はい、我々冒険者ギルドは権力に屈しませんので。──ところで屈したらしいギルドは何処かを教えていただいても?」

「知らん、自ら調べろ駄犬が」


 そう捨て台詞を吐いて男爵は奥の部屋、貴族用の来客室に戻っていく。見た目はともかく中身はそれなりに有能モドキなので隠しきれるか微妙だな。


「まあ、無理強いするなら潰せばいいし」


 マスターがいればまだ安心なんだけど、今は娘さんと旅行に行ってるし、……肝心な時に役立たない大人って必要なのかな。

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