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砂漠、もしくは荒野、またあるいはジャングルの中で(平原だけでは無いこと) 消失ショート10 

作者: 羽生河四ノ

すっかり忘れていました。ちなみにこれは読みにくさを重視して書いたので、「読みにくい」が褒め言葉です。まとめるつもりがまとまりませんで、無駄に長くなりました。

 水が飲みたい。そのいずれか(あなたがタイトルの三択肢の中で一番好きなところで)で、遭難に近いような(もしくははっきりと遭難)目にあった時、一番に考えることはそんなことではないかと思う。私はそうだ。今少なくとも私は、明日のことや、野生動物のことや、株のことや、老後のことや、空の青さや、読書のことや、パラドクスのことを考えたりしない。だからと言って、怪人のことや、窓際の花のことや、北海道や、公園のことを考えたりもしない。来世のことは少し考えるかもしれない。でもやっぱり今一番私が考えることは(思考独占禁止法があれば引っかかるかもしれないくらい)水の事だ。私の頭には水が溢れている。今水が飲めるのなら、ほとんど死んでもいいと思えるくらいそう思う。今水が飲めるなら、もう一生飲まなくてもいいとすら思う(創作のすごい純愛の何かの話みたいに激しく)。

 ところで人は危機において何かを学ぶらしい(何かの映画で誰かが言っていた)。つまり私も今この状態で何かを学んでいる最中なのだ、ということだ。こんな状態で?何を?私は学ぶのだろうか?せいぜいが水を大事にしましょうと、懇切丁寧に教えてくれた小学校の先生の顔位しか思い出せない。そんなのはっきり言って糞だろう。何の意味もない。もし生きて帰ることができるなら:。それなら私は水を大事にしようと、そう考えるかもしれない。でもその志に何の意味があるものか?何も無い。私が水を大事にしても、他人はお風呂から水を溢れさせるし、歯磨きの最中に水を止めることも無い。そんなものである。 ひとりひとりの協力が必要?そんなもの出来るわけない。何もできないままに人間は生きている。何も解決しないままに人間は生きているのだ。私が今、きっとここで水も飲めずに(愚かに惨めに)死ぬみたいにそれは確実的なことなのだ。きっとそうだ。人は生きながらに死に向かって歩んでいる(何かの作品の何かの表現として言っていた)。そうだ。そのとうりだ。自らを実験台にして人は日々を暮らしている。例えば、どうしたらガンになるのか?どうしたら熱中症になるのか?どうしたらタンクローリーの事故で高速道路に5時間の渋滞を作るのか?どうしたらビールは美味しくなるのか?そんな感じだ。

 ・・・少々自虐的かつ加虐的すぎるかもしれない。あまりにも希望がないかもしれない(実際そんなもの無いけど)。でも理由がある。ネガティブ過ぎる状態になるだけの理由が私にはある。今の自身の状態が大変悲惨だからだ(レイプされたとか、実は既に死んでいるとかでは無い)。大変な状態だからだ。

 私がもう何時間か、何日か、何ヶ月か、何年か(体感時間としては、無量大数とかそれ以上の数値)の間、こうして何処かをさまよっている間に、ある時に、私の右手が消えた。 ゆっくりと消えた。

 詳しく話すなら右手、右腕、右肩がある時に突然ゆっくりと消えたはじめた。

 スネークに噛まれたわけではない。コヨーテにやられたわけでもない。タイガーに持って行かれたわけでも無い。私の右手(右手=右手から右腕にかけての全体のこと)はある時にふ~っと消えた。消失した。生命を維持するために水分の代わりに突然に代償を請求されたみたいだ。差し押さえられたみたいに(実際そんな目にあったことは無い。まだ無い)。 悲惨な思考になっているのはこの為だ。どう?そうなってもそれはしかるべしではないだろうか?

 消えた右手の返却はありえるのだろうか?

 そんなことを考えているうちに、私の体はどんどんと消え出した。今は既に両腕が無い。足はまず太ももから消え始めた(今は右足の甲だけがかろうじて残っている状態)。

 だから私は今、中空に浮いたようになっている(歩いている感覚は残っている)。

 体(胴体の部分)もだんだんと消え始めている。まず最初にヘソのあたりから消え始めた。 徐々に私の体は焦げ跡のように所々無くなっていった。それでも私は水が飲みたいのでオアシスを探して歩いている(既に足も無くなっているので私は浮いている状態なのに)。 もしくはアスファルトとか建物とかを探して歩いている(歩いている?)。

 

 私の九割位が消失した(私は既に頭と首だけ中に浮いている)。喉が無くなれば乾きも収まるかもしれない。私(首だけの状態)はそのことを今考えている。それに頭が無くなればもう何も考えなくていいかもしれない。この遭難のことも、水のことも、消えた体の部位のことも、私がこれからどうなるのかも。

 そしてついに頭が消え始めた。驚く事にその最中、突然に頭から大量の水が溢れてきた。

 きっと水のことをずっと考えていたからだろう。

 咄嗟にそれを飲もうとした。飲もうとしたが、無理だった。もうその時には既に口が消え始めていたから。私が消えても喉の乾きだけが残った。

 それに私は全消えしたのに、私がいた所から相変わらず水だけは出続けた。

 私はどうなったのか?(もしくはどうなるのか?)意識が残っていることがこんなに煩わしいのは初めてだ。


 どうやら私はそこでオアシスなったらしい。難儀な事に私自身が遭難者の希望になった様だった。

 人間だった頃、何もならない、何も出来ない、そしてそれはずっとそのまま。として生きてきたので(あるいはそれを信条または、座右の銘として)、これからの自分が意味のあるものになるなんて、そんなの冗談じゃない!と思った。

 そう思ったが・・・まあいいかな。

 今の私はもう人間ではない様だから。

 私は今でもそこにいる。オアシスになっても乾きは残っている。水が飲めないのは何も変わらない。私自身の心(精神体?)は何も変わらない。でも今ではそれでもいいだろうと思っている。きっと私が潤ってしまったらこのオアシスは枯れてしまうと思うからだ。何となくそんな気がする。


 (後日談)最近、よく人がわざわざこんなところまで来る。このオアシスはどうやら、「本当に乾いた人しか発見できないオアシス」として有名になっているらしい。その効用として、私の水を一度飲めばもう一生水を飲まなくてもいいらしい。乾いた人って結構多いんだな(他薦か自称かわからないけど)、私はそう思った。でも私にはもはや関係のないことである。

 私は今もそこにいる。このオアシスが枯れるのはまだまだ先の事になるだろう。

最初は消えるだけだったのに、何かこうなった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 危機迫る恐怖を感じました。身体は消えてゆくのに、喉渇だけ残るは惨いしエグイ切ないし苦しいと思う、かなりえげつなさが伝わりました。 ホラーのようで哲学だと思います、奥が深い。深すぎます。さ…
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