9 賞金首 大牙亭の夜
「―――”しょくざいのきしだん”?」
聞いたことのない単語に、ナギサは首を傾げた。思わずオリガたちを見上げた。
オリガたちも、何だという表情だった。別に、旅の一般常識というわけではないのだろう。イリサと二人、顔を見合わせる。
その様子に、ランクルが申し訳なさそうに言った。
「ああ、悪い。嬢ちゃんを、街の外で襲った連中について、だ。これなら、わかるか?」
「―――あ…」
街の外の丘の上、ナギサの見ている目の前で、『罪人の手枷』をはめたペナルティー・プレイヤーの腕を切り飛ばし、そして、殺した、黒い鎧の騎士たち。なぜか実体を持っていた、あのプレイヤーを殺した騎士たち。喉のあたりに、イヤなモノが上がってきた。
ナギサは、それをこらえて、うなずいた。
「分かります。黒い鎧を着けた―――」
「そうだ。あいつらについて、何か、分かることはないか?」
「いやぁ…」
顔を青くしたナギサは、首を振った。むしろこっちが聞きたいくらいだ。ナギサはのどの奥にあるものを飲みこんだ。
「…あの、あれ、贖罪の騎士団って、何なんでしょうか?」
ナギサの質問に、ランクルは、不機嫌に鼻を鳴らした。
「鎧と、殺し方から足がついたんだがな。それ以外は、よくわからん。ただ、あそこの”森”みてぇに厄介なやつらだ。ハンターを、一人殺しやがった」
「なにっ!? いつのことだ?」
オリガが鋭く声をあげると、ランクルがオリガを見た。
「―――ああ、お前らが出てったあとのことだ。お前らも知ってるだろう? ほれ、あの変わった銃を持ってた…」
「『グレイ』、とか言ったか?」
「ああ、そいつだ。ただ、良かったかも知れねぇ」
「何?」
いぶかるオリガ。
ランクルは、ため息をついた。
「理由は分からねぇが、ワケの分からないことを喚きだしてな。気が触れちまってたみたいだ」
そう言って、何か苦みを感じたように、言葉を切った。
ナギサが聞いた。
「あの、その、あのハンターは、殺されたんですか…?」
「―――ああ、助からなかった。悪いな、イヤなこと思い出させちまって、やっぱ、何も分からねえってことで、処理しとくか…」
「ランクル殿、警吏にでも、頼まれたのか?」
例の書類を難しい表情で見始めるランクルに、オリガが聞く。
ランクルは鼻を鳴らした。
「ちげーよ。”賞金首”だ。それで、殺されたヤツのこともあるから、俺にお鉢がまわってきたってわけだ」
「賞金首?」
指名手配?
ナギサは何となく交番のポスターを思って、首を傾げた。ランクルが、おもむろにもう一枚の紙を書類の山から抜き出した。
「せっかくだ、見とけ。もし討ち取れれば、なかなかの儲けだぞ」
ランクルが、グイとその紙を押しつけるように様に差し出す。
オリガが受け取り、イリサが覗き込む。ナギサも見たかったが、背伸びしてもいまいち、届かなかった。
「なぜ、お前が見るんだ?」
「いえ、せっかくなので…」
「今度は賞金稼ぎでもするつもり?」
―――ひょっとすると、向こうに帰る手掛かりになるかもしれませんから。
と、答えられないのが、もどかしい。
ナギサが悶々としていると、オリガが呆れたように鼻を鳴らしたが、一応は見せてくれた。
相変わらず迷路のような字が、髪の上でうねっていた。字が読めるというのは、ありがたい。あ、わら半紙だ。
ナギサが熱心に読んでいると、オリガが唸るのが聞こえた。
「―――ずいぶん、物騒な連中だな」
「本当。何、この罪状の数」
オリガたちが見ているところには、連中のやってきたことの数々が並べられていた。全て、最後は何々を殺害で締めくくられたそれは、ぱっと数えただけで四十件は超えている。
ランクルが、ため息をついた。
「そこに、もう一件、今回の件が付け加わるわけだ。このくそ忙しいときに、まったく、金ばっかり掛かりやがる」
ナギサはさらに読み進めた。”贖罪の騎士団”に賞金は、たしかに懸っていた。罪状が罪状だけにかけている側も多いし、金額も多い。
そこには、特に長い迷路文字が書かれていた。ボルーソワ皇国やら、タルク地底国などの名前が、ゾロゾロぞろぞろ書かれていて、後ろの方では傭兵、ハンター、行商などのギルドまで名前を連ねている。それには、どれにも何とか支部というのが書き添えられていた。
「何なんですか、この、”支部”って?」
「ああ、それか?」
ナギサが聞くと、ランクルが椅子をキーキー言わせながら、それに寄りかかった。頭の後ろに腕を組む。
「ギルド員の問題の始末は、それが起きたところのギルドの支部がつけなきゃならねえんだよ。つまり、今回はうちが賞金を出さねえといけねえ。ハンターへの払いも考えねぇといけねえしよ、まったく」
それで、ロックフォールの条件も飲んだのか。
ナギサは納得して頷いた。
どうやら”贖罪の騎士団”というのは、かなりの迷惑になっているらしい。懸賞金の額は、金貨で五万枚を軽く超えている。”騎士団”を壊滅させれば五万枚。一人倒しただけでも、金貨百枚出すそうだ。
その懸賞金の下に、”突き立った剣”(少なくとも、そう見える)の、マークが、写真の代わりに、手書きで描かれていた。
「なんです、このマーク?」
「ん? いや、私も見たことがない」
「”贖罪のマーク”?」
イリサが、その絵の下の書かれている文字を読んで言った。
ランクルが肩をすくめた。
「何だか知らんが、前に鎧を剥いだら、そんなモノを焼印してたんだとよ」
「焼印?」
イヤな言葉にナギサは顔をしかめた。焼けた鉄を体に押し付ける、あれか?
ランクルが、重々しくうなずく。
「ああ、イカれた連中だよ。まったく。五年前ぐらいから、ちらほら出てくるらしい」
ナギサが、思わず顔を上げた。
ランクルのしかめっ面を見ていった。
「五年前、ですか?」
「ああ、ちょうど、傭兵連中が仕事にあぶれだしたころだからな。ひょっとすると、傭兵どもが、やけになってるかもしれないって話だ。傭兵ギルドの連中は知らぬ存ぜぬだがな」
「傭兵が仕事にあぶれ出した?」
ランクルがナギサを見て、ピクリと眉を上げた。
「ずいぶん熱心に聞くじゃねえか。つーか、本当に世間知らずだな。”城崩し”から聞いてねえのか? あいつ、当事者だろうに…」
ポカンとする渚に、ランクルがため息をついた。
「おい、オリガ、イリサ。ちゃんと見とけよ? こっちが心配になってくる。嬢ちゃん、どこの箱入り娘なんだよ?」
「ワケありなんです。それで、なんで傭兵の仕事がなくなったんですか?」
ナギサはランクルの言葉を流して、聞いた。
ランクルが、難しい顔でうなった。
「―――”城崩し”みてぇな連中が、ごろごろ出るようになったんだよ。おかげで連中、商売あがったり、ってわけだ。そのせいで、”城崩し”本人もハンターに転向した」
「何で、五年前からなんですか?」
「わからん。細かい話は、どこかの研究屋にでも聞いてくれ。ま、戦も減ったし、悪い話じゃなかったがな」
そう言ってランクルは羽ペンを投げ出し、椅子を後ろ脚だけでたてて、ギーコギーコと揺らし始めた。何か、物思いにふけるような、そんな表情が、その顔に浮かんでいる。
ナギサは、その表情をじっと見ていた。たぶん、本当の話なんだろう。
本当に五年前だとすれば、それは、十分に納得できる話だ。
その細いアゴに指を当て、黙り込んだナギサに向かって、物思いにふけっていたランクルが、机から身を乗り出した。
「嬢ちゃん。本気で、ハンターやるつもりなのか?」
その言葉に、ナギサはランクルの顔を見た。
「―――ええ、ちょっと、その必要が、ありますので」
「そうかい…」
ランクルは、じっとナギサの顔を見つめた。何か品定めをするように、その顔を見つめている。ナギサは、それを黙って見返していた。オリガとイリサはただそのやり取りを黙ってみていた。
やがて、ランクルが口を開いた。
「―――別に、何を嬢ちゃんがやろうが、嬢ちゃんの勝手だ。なにか実績さえ上げてくりゃあ、こっちも認めるつもりだよ」
「ありがとうございます。では、何か実績になるようなことをやれるように、頑張ります」
ニコリと、ナギサは応じた。
ランクルが鼻を鳴らした。
「だがな、嬢ちゃん。これだけは、覚えとけよ?」
そう言って、どっかりと椅子に座りなおす。
そして、ナギサの目を、じっと見据えた。
「とにかく、死ぬな! 生き残ることを、考えろ。死んだら、もう、それまでなんだ。まず、自分のことを考えろ。他人は、そのあと、だ。自分が生き残れねェと、助けたくても助けられねェ。それだけは、肝に、銘じとけ!」
まるで、恫喝のような声だった。だが、とても温かい言葉だった。
ナギサは、笑顔でその言葉を聞いた。
「はい、ありがとうございます。肝に銘じておきます―――ボブ」
ランクルがポカンとして口を開けた。
ナギサは一人、くすくす笑って見せた。
ランクルの後ろ、窓の外、そこで、黄色い鳥が歩いていた。ただ一度だけ首を傾げると、ばさりと羽を広げて、飛んでいく。あっという間に、窓の視界からは消えていく。
窓の外には、ただ、トルメンティアの森だけが、広がっていた。
「はあ…」
取った部屋のドアをしめたあと、ナギサは、ドアに寄りかかるようにして、へたり込んだ。持っていたトランクが、ガタンと音を立てて床に落ちる。窓から差し込んでくる夕日が、ナギサを照らしている。その夕日のに照らされた格好は、街に戻ってきたときと、少し、変わっていた。
ボロボロだった服は無くなっている。その代わりに丈夫な上着に、乗馬ズボンのような、きっちりとした長ズボンをはいている。靴もブーツになっていた。
ここは、『大牙亭』という宿だった。家々の階段の中腹に建つ、ハンターには人気の宿だ。この宿の人気は、そのシャワーにあった。三階にだけ備え付けられている。それに使う魔石の分、宿代が高くなるそうだ。実際、掃除が行き届いていて、部屋は暖かい。良い宿なのは間違いない。入口のところに、ローフォレの頭の大きな剥製が飾られている。
そんな宿の三階に、ナギサたちは部屋をとっていた。
「疲れた―――」
部屋の中、自分ひとり。そう思うと、一気に疲れが溢れた気がした。
ランクルに別れを告げ、”太守館”を出たあと、ナギサたちは宿を取りに出かけた。その時に、イリサから物言いが入ったのだ。
―――その格好を何とかしましょう?
オリガに宿のことを頼んだ後、クレスヴィルの服屋にイリサとともに入り、そこで着せ替え人形になってきたところだった。
ある意味では、イリサに感謝すべきなのかもしれない。ここ数年、会社と家の往復のような生活だったため、この世に服屋という存在があることすら、ほとんど忘れていた。
言われなかったら、ボロボロの服のまま、ベッドに倒れ込んでいただろう。例え、疲れているのに、次から次へと着せかえられて(しかもあんまり実用的じゃないモノばかり)、なんだかイリサばかりが楽しんでいた気がしても、そこは感謝するべきだろう。結局、こういう格好に落ち着いたから、まあ、いいさ。アメリとの連絡がつかないか、試してもらってもいる。
「はぁ…」
ナギサはまた、ため息をついた。ありとあらゆることのあった一日だった。
突然、ゲームが実体を持ったかと思えば、殺されかけ、片方の部下に泣きつかれ、もう、片方は行方知れず。おまけに帰り方どころか、ここが何なのかすら、分からない。不思議の国に迷い込んだアリスって、こういう心境だったんだろうか?
ナギサは、ぼんやりと、窓の外、クレスヴィルの夕日を眺めていた。大きく、赤い太陽が徐々に、その巨壁の向こうに沈んでいく。濁ったガラスが、丸が半円になり、最後は、点になって、壁の向こうに消えていく様子を映し出す。
その飲み込まれる様を見終えると、ナギサはおもむろに、その重い体に鞭打って、立ちあがった。
ブーツを投げ出すように脱ぎ、上着を置いてあった椅子の背もたれにかけ、シャツのボタンをはずし、ズボンを下ろす。ほとんどいつも着ているスーツと同じような服なので、スムーズだった。例の下着も脱ぎ捨てる。
ナギサは、シャワー室に入った。
そこは、せいぜい、一人で立っているのが、やっとというスペースだった。はっきり言って、せまい。しかし、胸の高さ、そこに、見慣れた形のシャワーノズルがついているのを見て、ナギサは小さく息をついた。
真鍮だろうか、ヒヤリとする十字型の蛇口をひねると、温かいお湯がノズルの口から溢れだす。
「あぁ…」
思わず声が漏れた。
温かいお湯が、こんなにありがたいものだとは、思わなかった。あまり、長い時間使えないのが、惜しいくらいだ。
このシャワー、もちろん、向こうで言うところのポンプのようなものは使っていない。なんでも、上にある水槽に張った水を、魔石で暖め、高さを使って出しているらしい。朝になれば宿の人が水を張りなおしてくれるそうだが、あまり長いことは使っていられない。
ナギサは備え付けられた石鹸を手に取った。ぬるぬる感はあるが、泡だてて使う代物ではない。なにか植物のしぼり汁から作るらしい。それを体に塗りたくるようにして、ナギサは汗を洗い流した。洗う分には問題ないが、自分の体を見るにつけ、その表情はしょぼくれていく。
―――これが、何よりの大失敗だよね。
自分の体を見下ろしながら、ナギサはがくりと肩を落とした。
ゲームのことだと思って、適当にやりすぎていた気が、今更になってひしひしと感じられる。この長い髪って、どうやったら洗えるんだろう?
やたら長くなってしまった髪をもてあそび、ナギサは四苦八苦していた。それの扱い方は、まるで今日知った情報と同じくらい、扱い方が解らない。
―――”城崩し”みてぇな連中がごろごろ…。
ランクルの言葉は、いろいろと考えさせられるものだった。
『五年前』というのに、ナギサは、心当たりがあった。ちょうど、『フリー・ワールド・オンライン』の、サービスが始まったのが、むこうでは、そのくらいだったはずなのだ。大口契約だとかで、うれしそうな水沢チーフに見せられた『ワールド・クリエイト』との契約書に、そんなことが書かれていた。
一ヶ月は三十日、一年がどのくらいかは知らないが、こっちで言うところの五年前。
むこう、ナギサたちの会社があったところでは、六年前だったかもしれないし、四年だったかもしれない。そんなころ、むこうでは『フリー』が始まった。そして、キャラクターを育てるのには、結構、時間がかかる。正確な時間は分からないし、誤差はかなりあるだろう。しかし、そんな時間的にちょうど良いころに、”城崩し”たちは現れた。偶然だったとは思えない。そして、”城崩し”は、こちらで、実在の人物として扱われている。
当たり前だ。
『フリー』では、街にいるキャラクターのリアルさが、景色のリアルさと同じくらい、その売りになっていたのだ。名前が売れ始めてくれば、向こうからも話しかけてくるし、ウワサにもなる。受け答えも、ちゃんとする。それこそ、現実と同じように。そんなところで有名なことが、ロックフォール、六条の、自慢でもあったのだ。
そして、それがもともと現実であったのなら、別に今の状況も不思議じゃない。
ゲームのキャラクター達は、生きていて、ちゃんと、現実の生活を営んでいた。飲み食いもすれば、日々の仕事をして、ウワサ話をしたりもする。そこで、プレイヤーたちが人々にまぎれて、こちらでの、体を得て、遊んでいる。
そこまで考えて、ナギサは顔を上げた。
体を伝っていたシャワーのお湯が、止まっていた。クレスヴィルの夜、ヒヤリとした空気が体を撫でた。石鹸は、すべて落とせていた。シャワー室の横、手すりに下げられたタオルをつかむと、体をふく。体にまとわりつく冷めたお湯、それをタオルがきれいにふき取っていくのが、感じられる。
ナギサは、自分の体を見下ろした。すっかり女になってしまった体。
腕を動かし、一歩を歩き、息をするたびに、お前の体だ、と主張してくる、自分の体。
ナギサは、今日、買ってきた木綿のシャツを、会社に行くときのように着こんだ。さらしもあったのだが、使い方が分からない。胸のあたりが窮屈なので、上の方のボタンをはずしたままにした。例のとは全く違う下着をつけ、そのままズボンをはく。
ナギサは、部屋の隅、窓の横の、ベッドの上に倒れ込んだ。
ベッドの中身は綿らしい。ふわふわとするそれに身を横たえながら、ナギサは横の窓を見た。向こうの端、クレスヴィルの巨壁が遠くに見える。日が落ちたその上には、かがり火が赤々と燃やされていた。今日も、寝ずの番があるらしい。ハンターたちが、今日も見張りにあたっているのが、影絵になって見えた。
「―――”グレイ”、か」
それを見ていたナギサは、ぽつりとつぶやいた。
泣き叫び、腕を切り飛ばされ、殺された、彼。
ナギサは、その名前を知っていた。しかし、それは、ハンターではない。
『アカウント名』、”グレイ”。
それが、ナギサの知っている彼の名前だった。インターネット上でもそうだったし、どこの誰だったのかまでは、調べていなかった。
ナギサにとっての彼は、ただの”ハッカー”だ。『天国』謹製プロテクトを破り、自分たちの仕事の範疇に入ってきた、ただの迷惑者。
しかし、こちらでの彼は、一人の”ハンター”だった。オリガも知っていたし、ランクルも知っていた。たぶん、この街の誰かに聞けば、ああ、あいつか、と、答えが返ってくるだろう。ここは、現実なのだから。
そして、たしかに、彼は殺されたのだ。あの”贖罪の騎士団”に。
あれらも、五年前から現れ始めたらしい。
ナギサは枕に顔をうずめた。そばガラのような感触が肌に心地いい。臭いからすると、中身は麦だろう。もう、考えるのも、限界だった。
ここには、ナギサ一人だけだった。自分が何かも分からない。
唯一、まともな情報交換ができる相手がいるとすれば、それはアメリと六条の二人だけ。その二人も、今は遠くに見える壁の中だ。
水沢チーフ―――彼女が生きていたころは、いろいろ相談していたこともあったのだが、もちろんそんなことができるはずもない。
アメリと六条のことも、もちろん自分のことも、とにかく、なんとかしないと、いけない。生きていかないと、いけない。何より、帰る方法を探さないと。
ナギサは足元にあった毛布をつかんで引き上げた。前より、小さくなった体をそれでくるみ、クレスヴィルの冷たい夜気から体を守る。ナギサは、すぐに眠りについた。
その様子を、今日も空に昇っている、大きな青い月だけが、見下ろしていた。
第一章 異世界の迷子 了




