乱戦
デットオーガを倒しても休む暇はなかった。
遠くの方から黒い魔物が大量に走ってきているのが見えているからだ。
そのほとんどを遠くで四聖獣が倒しているのが見えるが、それでも倒し切れなかった魔物達がこっちに向かってきている。
魔物はサイクロプスやキマイラ、ワイバーンなんかの有名なのから真っ黒な人間みたいな良く分からない魔物までいる。
どの魔物も四聖獣の攻撃を受けて弱っていたので苦労せず倒す事が出来たが、それでも数が多いだけに精神的に疲れる。倒した魔物達の血の臭いも合わさって気分は最悪だ。
30分くらい戦っていただろうか?取りあえず魔物の波が落ち着いてきたのでカウルは一度アルファに戻る事にした。
アルファに戻ると反対方向からドラゴン系の魔物が群れで到来したとギルド員から報告をうける。
アルファにいた冒険者が討伐に向かうが全滅したらしい。
休む暇なくカウルは息をつく間もなくドラゴン退治に向かう。
現場は目を背けたく程の惨状だった。
空はブラックドラゴンの群れで黒く染められ、目の前には冒険者を貪り喰らっているジャバウォックの姿がある。
大地は赤く染められ、異臭が風に乗ってカウルの鼻に届く。
怒りより先に吐き気がカウルを襲う。
さっきまでの魔物との戦闘で結構ギリギリになっている所にこれだ。
思わず胃の中の物を吐きだしそうになるが、それに耐えてカウルはジャバウォックに向かって走る。
まだジャバウォックはこちらに気付いていないみたいだ。
事前に使った気配遮断のスキルのおかげだろうか。それとも食事に夢中なだけだろうか?
どちらにしても好機なのは間違いない。
カウルはそのままジャバウォックの両足を斬りつける。
痛みでジャバウォックがカウルに気付いて食べかけの冒険者を投げ捨てた。
ジャバウォックは怒りの咆哮を上げながらカウルに襲い掛かる……が、痛みのせいか攻撃は鈍い。
カウルは攻撃を紙一重で避けるとそのままジャバウォックの胸を斬りつけて後退した。
ジャバウォックが大きな雄叫びをあげながら息を吸い始めた。
ジャバウォックの腹が大きく膨れ上がる。
(ブレスが来る!?)
カウルは危険を感じて回避しようと走りだすが、間に合わない。
カウルが走りだすのと同時位に黒い炎がカウルに襲い掛かった。
「ぐぁっ!?」
何とか全身を焼かれる事は回避したものの、左腕を焼かれてしまった。
左腕は肘から下が黒く変色して感覚が無くなってしまっている。
不幸中の幸いなのか、利き腕に攻撃が当たらなかった。もしこれが右腕なら武器が持てなくなってしまうところだ。
どうやらあの黒い炎は特殊な炎のようで、回復薬を掛けても魔法で治療しようとしてもダメみたいだ。ジャバウックを倒すまでは治せないのかもしれない。




