大敗
マッドハッターがいなくなった後、青龍と白虎が遅れて到着して操られていた仲間の死体やスケルトン達は残らず倒された。
生き残った人間はアーサー、ミンミ、サラサとカウルのみ。
しかもアーサーは重傷で動くこともままならない…それ以前にマッドハッターとの戦闘で明らかに心が折れている状態だ。
ミンミは目を覚まさずサラサはいつの間にか何処かに消えていた。
まともな状態なのはカウルのみと言ってもいいだろう。
青龍と白虎はマッドハッターが残した「一ヶ月後に総攻撃」という言葉をカウルから聞くと、険しい顔で朱雀と玄武と一緒に地上に降りて行った。
オメガの設備や道具は自由に使っていいとのことだ。カウルはどこか死地に向かうような青龍達の横顔を見て、彼らの向かう場所が何となく分かった気がした。
マッドハッターの言葉が本当なら一カ月後に暗黒大陸の魔物達の総攻撃が始まる。
こちらの戦力はゼロに近い。暗黒大陸の魔物と渡り合える人間はもうカウル位しか残っていないのだ。
1番戦える可能性がある冒険者達はマッドハッターにほとんどやられてしまった。
アーサーの傷は朱雀が管理している【生命の泉】に行けば治るが、マッドハッターとの戦闘がトラウマになっているみたいで戦えるかどうか分らないし、戦えたとしても戦力として見るのは難しい。
マッドハッターは総攻撃と言った。それはつまり暗黒大陸のボスクラスも出てくるという事だ。それに対応できるのはカウルのようなチート人間や青龍、白虎のような神獣くらいのものだろう。
それにマッドハッターが言っていた王の存在も気になる所だ。
ゲームだった時はそんなのは出てきてなかった。
(とてつもなく強力な魔物なんだろうなぁ…)
カウルは激しく憂鬱な気分だった。
やっとできた戦力になりそうな仲間達はほぼ全滅、その上さらに強力な魔物だと思われる王の存在の確認。
神獣達は味方っぽいけれど、それでも戦力が足らなすぎる。
「とりあえず修行どころじゃ無くなってきたなぁ。一旦地上に戻るとするか。」
とりあえずアーサーとミンミはオメガで療養してもらう事にして、カウルは久々にアルファに行くことにした。
・・・
「許さない…絶対に。」
カウルがアルファに向かう事を決めていた頃、ピラミッドを一人の少女が歩いていた。
髪はボロボロ、服も血で真っ赤に染まっている。
彼女の目には確かな憎しみの炎が宿り、壊れた機械のように許さないと呟いているその姿は最早、人とは呼べるものではないだろう。
彼女の名前はサラサ
彼女はピラミッドの魔物たちを一撃で砕きながらフラフラとした足取りで下へ下とピラミッドを進んでいく。
彼女の額にはオメガに行くまでは無かった大きな角が生えていた。
腕や足も女性の細腕から筋肉質な男の腕へと変異している。
サラサは人を捨てていた。
友を失った絶望と、友を殺した敵への憎しみがそうさせたのだ。
サラサは憎しみの炎を滾らせながらピラミッドを下へと降りていく。
復讐をするために。その為の力をつけるために。




