群れ4
短いですよ。
カウルが修行の間に着いた時は既に手遅れと言っていい状態だった。
動いているのを確認できたのはサラサとミンミ、アーサーのみ。
他のみんなはピクリとも動いていない。
修行の間は赤で染まり、部屋全体に漂う生臭さにカウルは顔を顰めた。
臭いだけじゃない。カウルのすぐ横にはパッソー夫人だったと思われる首がない死体が転がっている。
グレンは首と両腕があり得ない曲がり方をしている。ソモンにいたっては腹に大穴が開いていた。
アーサーは壁にめり込んで現代アートみたいになっているものの、動いているから生きてはいるみたいだ。
中心には何が楽しいのかニヤニヤした表情で紅茶を飲んでいるマッドハッターの姿があった。
「貴様ぁああああっつ!!」
カウルは大声を上げてマッドハッターに飛びかかろうとするが瞬間、パッソー夫人だった物に足をつかまれてしまう。
(マッドハッターが操っているのか!?)
ゲーム上ではアンデット系の魔物を取り巻きにしていたマッドハッターだった。どうやら死体を操れる能力があるようだ。
「マッドハッター、貴様ぁっつ!!」
「そう怖い顔しないでくれよ。僕はもう帰るからさ。」
カウルはパッソー夫人の死体を振りほどこうとするが、意外と力が強くて引き剥がせない。
他の死んだ仲間達や新しく召喚されただろうスケルトン達がカウルの足を止めようと群がってくる。
スケルトンとグールが数十体、そして死んだ仲間達が武器を持ってカウルをマッドハッターに近づかないようにしてくる。
苦戦しているカウルを見ながらニヤニヤと笑っていたマッドハッターだったが、突然思い出したように呟いた。
「そうそう、僕らの王から君に伝言だ。【1ヶ月後に総攻撃する事にしたよ団長。まぁ、頑張ってね】だってさ。」
カウルは力任せに仲間だった死体やスケルトン、グールを吹き飛ばした。
しかしアンデットとなった仲間達は立ち上がりカウルに向かって攻撃してくる。
後ろの方ではマッドハッターがクスクスと笑いながら転移するのが見えた。




