群れ2
どれだけの敵を倒しただろうか?
カウルの周りは敵の死体で溢れ、何とも言えない匂いが漂っている。
動けるようなスペースも少なくなってきている。
それでもカウルの動きは鈍らない。
一撃で5体のスケルトンを屠り、スキル【威圧】を含めた大声でドラゴンゾンビの動きを止める。ダメージを受けたら即座に回復薬を使い回復する。
しかし、それでもマッドハッターには届かない。
魔物の数も徐々に増えてきている。
「すごいね。人間…いや、上位の魔物でもでここまでのやつはそんなにいないよ?」
マッドハッターはそんなカウルを余裕の表情で笑いながら眺めている。
「あぁぁああっ!!【炎羅】ぁっつ!」
カウルは武器に火属性を追加するスキル【炎羅】を使い攻撃力を上げた。
炎羅は使用中常時MPを消費し続けるスキルだ。
レベルの割にMPの少ないカウルはできれば使いたくないスキルだが、そうも言ってられない。
炎を纏った斬撃はスケルトンを炭にゾンビを灰へと変えていく。
その激しすぎる炎はカウル自身にも火傷を負わせるほどだったが、効果は絶大で初めてマッドハッターまでの道が開かれる…が、ここがカウルの限界だった。
剣から炎が消え、カウルがこの戦闘で初めて膝を付く。
「これは、本当にキミは人間なのかい?明らかにコッチ側だよキミ。」
「う…るせぇ。俺は人間だよ。」
カウルはもう体力も精神力も限界に近い。
表示上のHPやMPは回復薬のおかげで7割以上を保っている。
しかし、それとは別のカウルの根っこにある部分が限界だった。
体はまだ動く。スキルだって使えるだろう。
だけど体がダルイ。思うように動かない。スキルが上手く発動しない。
カウルの動きが鈍くなり、スキが多くなる。
結果、魔物の攻撃が当たるようになる。さっきまでとは違いどんどんカウルに攻撃が当たるようになってきた。
アンデット系の魔物には疲れも恐怖もない。倒しても倒しても地面からどんどん湧いて出てくる。
「ガアぁァッツ!!」
カウルの体にドラゴンゾンビが噛み付く。
普段なら余裕で避けることができるその攻撃をカウルは躱すことができなかった。
「ぐっ!?」
噛み付かれた所から毒が回ってくる。
カウルは急いでドラゴンゾンビに剣を振るって吹き飛ばし、脱出して回復薬を飲んだ。
毒を回復して直ぐにカウルは周りの敵を一掃する…が一掃してもまた敵が押し寄せてくる。
(キリがない!)
1匹1匹はカウルにとってはそれほどの強さでもない。
攻撃を数発当てれば直ぐに倒せる。
しかしこの数はどうしようもできなかった。
カウルが諦めかけた瞬間、白い雷が敵の魔物達を一掃する。
「よぉ、面白そうなことをやってんなぁ。」
声の方を見るとそこには二本足で立つ白い虎がいた。
虎は体からパチパチと放電しながらカウルの傍までやってくる。
「遅くなって悪かったなぁ、ニンゲン。」
「あんたは、白虎か。」
カウルが白虎の方を見ていると空から氷の雨が降り魔物の群れを地面に縫い付ける。
「他の人間は…修行の間か。」
青龍が何時の間にかカウルの後ろに立っていた。
「朱雀と玄武は後から来るそうだ。白虎、一掃するぞ。」
「一掃ってなぁ。簡単に言うがこいつは骨が折れるぜ?」
白虎は呆れたように肩を竦めると魔物の群れに飛び込んでいく。
「お前は休んでいろ。後は我らがやる。」
青龍はカウルにそう言うと白虎に続くように走っていった。




