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自殺+手違い=転生  作者: トカゲ
戦う世界
43/60

天空都市に行く前に2

短いです。

あと風邪ひいたっぽい。

カウルの目の前にはパッソー夫人、グレン、アーサーがいた。

顔には笑顔が張り付いている。理由は目の前にある大量の魔法カバンだ。


カウルは3人に荷物の説明をしていた。

この魔法カバンだけでも数ヶ月は生きていける値段がする。しかもその中には高級な薬品や大量の食材がはいっている。

それを無償で貰えるというのなら誰だってニヤつくだろう。


「一応用意したけど、自分たちでも準備してくれると嬉しいかな。予定としては1週間以内に出発したいんだけど皆の予定を聞かせてくれないか?」

「食料の質が悪いわね。食料は私に用意させてちょうだい。」


パッソー夫人はそう言うとカウルの返事も聞かずに床に風呂敷を広げて魔法カバンに入っている食材を出していく。


「別にいいですけど…食料は保存が効くやつにしてくださいよ?」

「わかってるわよ。」

「1週間か…もう少し遅くはできないだろうか?」


次に反応したのはアーサーだ。

まだ残していく十字の騎士団達の活動方針が決まっていないらしい。

2~3日の修行ならともかく、何ヶ月も隊長格がいなくなるので、方針をはっきりと決めて、各地にいる他の団員達に通達するにはもう少し時間が欲しいらしい。

通信手段が手紙だけなのでこれは仕方ないだろう。


「あ、そのことなんですけど、ベータのギルド長が仕事の依頼を残った騎士団に頼めないか、みたいな事を言ってましたよ。魔物討伐が主になるらしいですが。」

「む、それはベータ以外のギルドでも頼みたいと言っている、ということかな?」

「そこら辺は分かりませんが、隊長格がいない間はギルドで衣食住を面倒見てもいいとか言ってましたよ。」


これは暗黒大陸の魔物に対する防御の力が欲しいから、らしい。

十字の騎士団が優先して魔物討伐をしてくれるならそれくらいはしても損はないとオヤジさんは言っていた。

カウルの提案にアーサーは少し悩んだあと、ギルドに騎士団の指揮権を一時的に与える方向で持っていくことを検討してみるといって去っていった。

衣食住の最低限の面倒はギルドが保証できるし、そこまで束縛はしないそうなのでこれは決定と見ていいんじゃないだろうか?


パッソー夫人もグレンも早くオメガに行きたいのをのを我慢していた位だから文句はないだろう。


「装備は今のものでも大丈夫かしら?」

「パッソーの姉御、あなたの装備がダメなら伝説級の装備探さないといけなくなりますよ。」


パッソー夫人の問いかけにグレンがため息を吐きながらいう。

パッソー夫人とグレンは昔、師弟関係にあったらしく仲がいい。まるで兄弟みたいだ。

パッソー夫人をアルファから呼んで、酒場でグレンを紹介したときの両者の顔はどちらも印象に残るものだった。

グレンは苦虫を噛み潰したような顔、パッソー夫人はおもちゃを貰った子供のような笑顔だったのは記憶に新しい。


パッソー夫人はベータにユニコーンに乗ってきたり、一軒家をキャッシュで買ったりと中々な伝説を少ない期間で見せてくれている。


今もベータで売りに出されている高級干し肉とかを端から端まで買いあさりに行くとか言っている。恐るべきブルジョアだ。

この食材はどうするんですか?とカウルが聞いたら「ユニコーンの餌にちょうどいいじゃない。」と返された。


確かに量を買う必要があったため、味はそんなに良いものじゃないが、それでも普通に食べれる食材をユニコーンの餌にはしたくない。というか、ユニコーンは干し肉を食べるんだろうか?

カウルが戸惑っていると「冗談よ、ギルドにでも寄付すればいいんじゃないかしら?」とパッソー夫人は笑いながら言った。


「グレン、付いてきなさい。全員の食料を買いに行くわよ。」

「また俺が荷物持ちですか……」


そう言って食材を全部出して軽くなった魔法カバンを片手にトボトボとパッソー夫人の背中を追いかけるグレンは妙に老けて見えた。


「ってかこの食材はどうしようかな。せっかく買ったのにユニコーンの餌にするのは嫌だな…やっぱりギルドに寄付かなぁ。」


捨てられているかのごとく床に放置された食材を眺めながらカウルは呟くのだった。



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