準備
短いです。
「て、天空都市修行ツアー?」
「そう、修行ツアー。」
カウルの提案にアーサーはポカンとする。
気絶しなかった他の9人も同じようにポカンとしている。
「あんた、ふざけてるの?」
声がした方を見るとそこにはサラサ、ライナ、ミンミが騎士鎧を身につけて立っていた。
サラサが憎々しげにカウルを睨んでいる。
(あいつ等、いつも忘れた頃にやってくるなぁ。)
カウルはサラサ達を見て驚いていた。確かにベータまでは一緒に来たが、それから煙のように彼女達はどこかに消えてしまっていたのだ。騎士団ということは知っていたが、まさかここにいるとは思っていなかった。
「ふざけてなんかないよ。気絶しなかった人達に提案だ、天空都市オメガで修行をしないか?暗黒大陸の魔物に対抗できる力が欲しくないか?」
カウルの問いかけに十字の騎士団は黙っている。
沈黙を破ったのはアーサーだった。
「それをやれば今よりもっと強くなれるんだな。」
「あぁ、もちろんだ。」
カウルがそう言うとアーサーは頷いて十字の騎士団の前に出る。
そして修行に参加することを立っている全員に伝えた。
十字の騎士団の面々の中には不満そうな顔をする人もいたが、総団長であるアーサーの決定は絶対のようで、文句を言う人はいなかった。
それでも一部の人たちはカウルを睨んでいたが。
その筆頭がサラサであったことは言うまでもない。
・・・
カウルは一旦ベータの冒険者ギルドに戻ることにした。
前から集まってくれていたパッソー夫人やグレン、ソモンに修行を開始する事をつたえようと思ったからだ。
天空都市オメガには幾つか行く方法があった。
その1つにベータのピラミッドの頂上にいるオシリスというモンスターを倒すと開かれる【天上の門】がある。
そこそこ強いオシリスという魔物を倒さないといけないが、それ以外の条件はない。
他の場所では海賊の宝とか神雪の結晶とかのレアアイテムを探さないといけないが、ここは腕力さえあればなんとかなる場所で、ゲーム時代、プレイヤーに一番人気があった場所だ。
誰かがオシリスを倒せば天上の門はしばらく開かれているのでどんなにオシリスが強くてもカウルが倒せば済む。カウルならオシリスくらいは簡単に倒せるのだ。
ギルドに入るとパッソー夫人とグレンがいた。どうやら早めに依頼を終えて早めの晩御飯を食べているらしい。
「お、カウルじゃないか。」
「あらあら、十字の騎士団とは上手くいったの?」
パッソー夫人とグレンはカウルを見つけると手招きしてきた。
カウルはパッソー夫人とグレンにさっきの十字の騎士団との出来事を話した。
そしてもう少ししたら天空都市に向かうと伝える。
パッソー夫人とグレンはやっとか、みたいな感じでワクワクしたように席を立つと準備をするといってギルドを出て行った。
カウルはコップの洗い物をしているオヤジさんには修行に参加できない、まだレベルの低い騎士団の連中を頼むことにした。
こんなバーテンダーみたいな人でもここのギルドの責任者だ。上手くやってくれるだろう。
十字の騎士団の主力は修行で長時間抜けてしまう。そのまま放置という訳にもいかないだろう。
「多分隊長格はみんな修行に参加すると思う。残った人達の面倒をお願いできませんか?」
「そういうことか。まぁ、こっちとしても実力のある騎士団連中の手を借りれるんなら願ったり叶ったりだけどな。」
オヤジさんの了承は得られたので、今度アーサーに会った時にでも伝えておこう。
勿論アーサーが嫌がれば無理強いはできないが、結構いい話だと思うし。
カウルはオヤジさんにお礼を言ったあと、回復アイテムの買い出しに向かうことにした。




