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実力者

 カウルとグレン、ソモンは簡単な挨拶と自己紹介を終えて椅子に座った。

カウルは今のベータの実力を測る為にも聞かなければいけないことがある。それはどれだけの強さの魔物を彼らが倒しているか、ということだ。


「いきなりで失礼ですが、あなた達ブラスターが今まで倒してきた魔物の中で一番強かった魔物を教えてくれませんか?」


カウルにはこの世界によく似た設定のゲームの知識がある。そしてその知識はそこまで間違ってもいない。

だから倒した魔物で今の彼等の実力もある程度測る事ができる。まぁ、あくまである程度でしかないが。


「ブラスター全員で戦った中ではムラクモ、私個人ではヘビーサイクロプスかな。」

「我個人では赤の凶狼が最大だな。」


 ムラクモはレベル120のボス、ヘビーサイクロプスと赤の狂狼もレベル90クラスの魔物だ。金ランクってのは嘘じゃないらしい。

でも、足りない。暗黒大陸の魔物と対峙するには全然足りない。


「そうですか。2人共強いんですね。」


2人がトップクラスというのも嘘じゃないだろう。ベータでこれ以上の人材を確保するのは無理だと思う。

だから、カウルは今起こりつつある危機を2人に教えることにした。


「でも、まだまだです。全然弱い。」


 カウルの言葉に2人は眉をひそめる。今のカウルは封印の腕輪をしているためレベル的には2人よりも弱い。技能面ならともかく身体能力なら天と地ほどの差があるだろう。

そんなカウルに弱いと言われては不機嫌にもなるというものだ。


「なんだい、キミは私よりも強いと?」

「まぁ、少なくともあなたよりは。」


グレンはカウルの肯定の言葉を聞いた瞬間、椅子から立ち上がってカウルを睨みつけていた。ソモンも怒っているようでグレンを止める様子がない。


「私は見ただけでその者の実力をある程度図ることが出来る。キミは私より弱い。」

「そうですかね?」

「そうですね、なんなら勝負しますか?」


グレンはそう言うと壁に掛かっていた大剣を手にとってこちらを睨みつける。

カウルはため息を吐いて立ち上がると自身の相棒である長剣【夜月】に手をかけた。


「ここでやるんですか?別にいいけど。」

「部屋の心配はしなくてもいいよ。一発で終わりますからね。」


グレンがそういった瞬間、大剣をありえない速さで振るう。

しかしカウルはスキル【未来予知】と【瞬間強化】を使ってその攻撃を避ける。

攻撃を避けられた事でグレンの顔つきが変わる。

 今の攻撃を避けたことで相手を侮っていた顔つきから同等の相手を見るような険しい顔つきにかわった。

今は大剣を正面に構え直してカウルの動きを観察しているようだ。


「グレンさん、確かに今の状態の俺の身体能力はあなた達の半分くらいしかない。でもそれくらいで満足されちゃ困る。」


カウルは移動用スキル【瞬歩】を使ってグレンの後ろに回る。

瞬歩はレベル200にならないと取れないスキルだ。グレンは見たことも無いスキルだろう。だから反応も遅れている。

 あまりの速さにグレンの動きが止まった。そしてそのスキを狙ってカウルは夜月をグレンの首筋にあてる。そのままカウルは封印が破壊されていた事を話すことにした。


「実はエルフの森にある封印の入口が破壊されていたんですよね。」


カウルの言葉はグレンとソモンに衝撃を与えたようだった。

彼等もエルフの森にある封印のことは知っているだろうし、暗黒大陸の魔物についても大体の事は知っているはずだ。


「封印が解除されたならまだ良いんです。壊されたんですよ。今はまだ大丈夫かもしれないけど、暗黒大陸の魔物が攻めてきたら……このままでは人類は全滅です。」


カウルは封印の腕輪を外す。

意図的に力を見せるために全力で力を貯めて、放つ。

溢れ出す力は風を起こし、周囲の物を吹き飛ばし、窓ガラスには衝撃波だけでヒビが入った。


「あ、あぁ……」

「なん、だ、これ?」


カウルの力の解放にグレンとソモンは口を開けて呆然としている。


「暗黒大陸の魔物の中にはムラクモの倍以上の力を持つ奴等もゴロゴロいます。そこで相談なんですが、有望な人材を集めて修行をして戦力の底上げをしたいと思っています。あなたたちは強くなりたいですか?」


 カウルの問いかけにグレンとソモンは震えながらもしっかりと頷いた。

カウルはそれに満足げに頷くとひとつ条件を提示した。


「じゃあ、手伝って欲しい事をひとつ。強い人で信頼できる人を紹介してくれませんか?今は実力者がひとりでも多く欲しいんです。」




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