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砂漠店めぐり

オヤジさんに冒険者の紹介してもらう事を約束してから3日が経ち、ベータにも徐々に慣れてきた頃、カウルは一人、ギルドにやってきていた。


ギルドのカウンターにはいつの間にか大きな水槽があり、そこに黄金魚が2匹悠々と泳いでいる姿が見える。

ギルドのマスターでもある口ひげがダンディなオヤジさんはグラスを拭きながら黄金魚をウットリと眺めていた。


「オヤジさん、そろそろ冒険者と連絡取れた?」

「ん?あぁ、カウルか。もちろんだとも。このベータ筆頭ギルドともいってもいい【ブラスター】の団長に話をつけておいたぞ。明後日までは【猫の日和見亭】に泊まっているらしいらしいから、都合のいい時間に会いに来て欲しいそうだ。」


オヤジさんはそう言うと【猫の日和見亭】までの地図を書いてくれた。

ベータはアルファより見た目建物が少ないのだが、アルファの倍くらい敷地が広い。

結果アルファより目当ての建物が見つけづらかったりする。

特定の店とかは地図がないと見つけるのにかなり探し歩くハメになるだろう。

だから地図があるのはとても助かる。

それに、ベータは店の看板が砂嵐でかすれてしまっていて、近くに行かないと何の店か分からない事も多いのだ。

嘘だと思うかもしれないが、カウルはこの3日間で2回ほど雑貨屋と思って入った店が他の店だった。

カウルはオヤジさんにお礼を言い、ギルドとは名ばかりの酒場を後にする。


オヤジさんが言うには【ブラスター】の団員たちは大体夜の7時頃には宿に戻るらしい。

【ブラスター】は少数精鋭のギルドで、総人数が5人と人数は少ないが全員が金ランクという凄腕の集まりなんだそうだ。


団長のグレンは大剣の使い手。一閃でフレアリザードマンを両断する力と技を持っているらしい。これだけ聞くと大男を想像するが、身長はそこまで高くなく、赤い髪と狐のような細いツリ目が特徴の優男なんだそうだ。

副長はソモンという魔法使い。白髪で体格はお世辞にも良いとは言えないものの、身長自体は3mと高い男性らしい。

肉付きが良くなく、骸骨のような風体から【幽鬼】と世間から言われているんだそうだ。

しかも無口なので子供は愚か大人も泣き出す迫力があるのだとか。


団長と副長以外の団員も曲者ぞろいらしいが、今ベータにいるのはこの2人だけらしい。

団員は十字騎士団の依頼で外に出ているみたいだ。

なんでも団長と副長以外は十字騎士団の出身らしく、急な依頼を断れなかったとか。


・・・


今カウルは【ブラスター】との話を円滑にするためにお土産を買いに雑貨屋に来ている。

オヤジさんから事前調査をして、2人の好みはある程度把握しているので迷う事なく干物エリアへと足を運ぶ。

何でも団長のグレンと副長のソモンは干物が大好物なんだそうだ。

ベータを拠点にしているのも売っている干物の種類が豊富だかららしい。


「えーっと、グレンさんはフレアウルフの干物が好きでソモンさんはグレイベリーのドライフルーツが好物だっけか?」


2つとも地味に高級な食材ばかりだ。普通の干物の倍以上の値段がついている。

痛い出費だが、黄金魚を売って多少は余裕があるからまだ大丈夫だろう。


2人が帰ってくるまでまだ少し時間があるので、武器屋や防具屋の冷やかして回る。

普通の武器と防具を眺めて、隅の方で埃をかぶっている俗に言うイロモノなレアネタ装備を目立つところに置き直したりして過ごした。


店員たちから白い目で見られ始めたのでそそくさと退散して今度は露店を回る。

砂漠という過酷な環境から露店は少ないようなイメージはあるが、ベータの人達の商魂は逞しいようで結構な数の露店がひしめいている。

カウルはその中で一つ気になるものを発見した。


(あれはリングオブデス!?呪い装備じゃないか。しかもあんなに大量に?)


リングオブデスはゲーム時代、最強のアクセサリに進化する指輪だった。

進化する方法は累計1000時間リングオブデスを装備すること。外しても構わないので難易度は低いのだが、進化するまで装備しなければいけない時間が長すぎる為、進化後のアクセサリは幻の装備といわれていた。


しかもリングオブデスの装備効果は毎秒HP-5減少とステータス半減。

この効果のせいでログインしたまま放置して時間を稼ぐという事もできない。別名【運営の嫌がらせ】といわれるアクセサリだった。


見た目は只の真っ黒な指輪なのだから余計にタチが悪い。

ゲームとは違い情報が出回っていないこの世界でステータスが低い住民がこれを装備したら数分で死んでしまう。この露天商はそれを分かってて売っているんだろうか?


カウルが露天商を睨みつけると、露天商の口元がニヤリと歪む。

フードを被っていて顔は良くわからないが猫目の男のようだ。


「それをお求めですかにゃ?」

「あんた、これが何なのか知ってるのか?」

「おや、アンタ、これがわかるのかにゃ?人間も博識なやつがいるにゃあ。」


露天商が馬鹿にするように笑い、それを見たカウルが露天商の襟首に掴みかかろうとしたとき、大きな風が吹き、カウルの目に砂が入り目を閉じる。


「じゃあにゃ。」


カウルが次に目を開けたとき、露天商は消えていて、カウルの足元には大量のリングオブデスが転がっていた。





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