ラクダ屋に向かう前に
あれから5日が過ぎてようやく騎士団は帰ってきた。
壮絶な戦いをくぐり抜けたような感じで帰ってきた騎士団をグラウフルの住人達は暖かく向かい入れた。まるで凱旋パレードだ。女性の黄色い歓声を向けられている所がちょっと羨ましい。
しかし無事に帰ってきたみたいで何よりだ。
(あの様子だとキングスコーピオンはいなかったみたいだな。よしよし。)
もしまだキングスコーピオンがいたらどうしようとカウルは考えていたが、どうやら大丈夫だったみたいだ。
カウルはホッと胸をなでおろす。
これで騎士団の警戒も解かれるだろう。
明日にでもラクダ屋に行ってラクダを借りて出発することにしようとカウルは考え、今日はゴロゴロすることにした。
宿の部屋からは食事の時以外出ないという自堕落っぷりで今までの疲れを癒そうと考えたのだ。
暗黒大陸の魔物とか封印を破壊したやつの事とか色々な不安要素はだらだらしているだけじゃどうにもならないけど、今はダラダラするくらいしかやることはない。
勿論ダラダラしながらもこの数日の間は戦闘の仕方なんかを工夫するのに費やしてきた。
おかげで一般の武器を装備して、しかも封印状態でもゲームの時にレベル70だった魔物に勝利することができた。
かなりギリギリの状態でだが、それでもレベル差が20もある魔物に勝つなんてゲームの時は考えられなかった事だ。
カウルは確実に成長しているのを手に取るように感じていた。
この世界はカウルだけかもしれないがゲームの時と同じようにシステムアシストがある。
これはこの世界に来て数日の間に気づいた事だが、この世界でも攻撃をする時にシステムアシストが発生して最適な攻撃ができるようになっている。
攻撃をしようとすると体が勝手に動くのだ。そしてこれには先がある。
最近気づいたことだがシステムアシストは自分の意思で解除することができるのだ。
システムアシストによる武術の手本の様な動きとアシストとは違う自由の効く動き・・これを合わせることでゲームの時にはできなかった複雑な動きが可能になる事がわかった。
そしてそれを合わせた強力な連続攻撃をカウルは先日ようや完成させた。
まだ完全ではないが戦闘には問題なく使うことができる。現にレベル差20の魔物も倒すことができたのだから完成といってもいいだろう。
そしてもう1つ発見したことがある。
なんと筋トレをすると筋肉痛になるのだ。この世界に来てから過度な戦闘とか動きとかはしてこなかったので気づかなかったが、試しに限界まで筋トレしたら筋肉痛になった。
つまりこのカウルという肉体はまだ成長するということだ。
そもそもこの世界にはレベルという概念がない。魔物のレベルだってゲーム時代の物をカウルが勝手に当てはめてるだけだ。
それでもカウルは自分にはもう身体能力の成長はないと思い込んでいた。ベースのレベルがカンストしているからだ。だからまずは戦闘技術の工夫をしようと考えた。
しかしまだカウルの体が成長する、能力が向上すると言うのは確定ではない。筋肉痛にはなるけど筋肉量は変わらないかもしれない。
この世界にきてからいくら食べても体重や体型が変わらないから、もしかしたら有り得ない話じゃないところが怖い。
・・・
翌日
今は太陽が真上に昇った頃だ。もうそろそろ昼だろうか?そろそろラクダ屋に向かおうとしていたカウルが装備を整えていると扉がノックされた。
なんだろうと扉を開けてみるとそこにはサラサとライナ、ミンミが立っていた。
「何か用か?」
「あのさ、あんたベータに行くんでしょ?」
サラサが言いにくそうに目をそらしている。
カウルは少し不安になった。一体なんだというのだろうか?
「そうだよ。俺は今からラクダ屋に行くところだけど。」
カウルがそういうと、サラサの代わりにライナが話し始めた。
どうやら3人もベータに向かう所だったが、キングスコーピオンの事もあって少し不安になったんだそうだ。
そこで人数は多いほうがいいという事になってカウルを誘いに来たんだそうだ。
「というわけで良かったら少しの間、キミと一緒に行動させてもらえないだろうか?」
ライナはそう言うと頭を下げた。ミンミはいつも通りニコニコしてお願いしますと言っている。サラサだけは恥ずかしそうに目を逸らしているだけだったが。
別にカウルに問題はない。一人旅よりも賑やかでいいかもしれない。
「別にいいよ。ラクダのレンタル料は自分で払ってくれるならな。」
「それくらい当たり前だよ。」
カウルは準備を早々終わらせるとそのまま3人とラクダ屋に向かって歩き出した。




