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騎士団と冒険者

夜が明けて朝日が昇る頃、カウルはグラウフルへ戻るための準備を始めた。

この2日間、ほとんど眠れていないが、何とかなっているのはステータスが高いからだろうか?カウルはあくびを噛み殺しながら立ち上がる。


カウルは取り敢えず焚き火の燃えカスに水をかけて消した。

そのままバケツを持って湖の方に向かう。黄金魚を捕まえるためだ。


湖にたどり着いて昨日作った生簀に泳いでいる黄金魚をバケツに入れる。

バケツはそこまで大きくないので2匹も入れるとそれだけでギュウギュウ詰めだ。

黄金魚は動くことも困難な場所に移されてバシャバシャと不満げに暴れている。


「こんなに元気ならまぁ、大丈夫だろ。」


カウルは黄金魚の元気な姿を見て満足そうに頷くとキャンプをしていた場所まで戻り、荷物であるリュックを背負うと右手に黄金魚の入ったバケツを持ち、左肩にキングスコーピオンの尾を担ぐ。


カウルはグラウフルの方角を確認して走り出した。

来た時よりは少しスピードを落としているが、それでも黄金魚の入ったバケツの水は溢れていく。

カウルは黄金魚が落ちないように気をつけながら走る。

そのせいかグラウフルに着く頃にはすっかり日が暮れてしまっていた。


・・・


グラウフルにたどり着いた時、冒険者らしき人達が門の前で騎士団の人達と打ち合わせみたいな事をしていた。どうやらあれがキングスコーピオン討伐隊らしい。


冒険者の数は5人、歴戦の猛者って感じの雰囲気からして多分全員が金ランクなんだろう。

カウルが彼等を見て最初に思ったことは


(やべぇ、わざわざ来て騎士団と打ち合わせまでしてるところに帰還とか俺、タイミング悪っ!)


である。まぁ、討伐に出発する前に来れたのがせめてもの救いだろうか。


ちょっと行きづらいけど、これ以上あの人達が無駄な労力を発揮しないように早めに報告しなくては!とカウルは思い勇気を出して騎士団の前に走っていく。

勿論封印の腕輪を付けて実力を隠すことは忘れない。


最初にカウルに気づいたのは冒険者の方だった。

今のカウルの姿は知らない人間から見たら結構異様なものだ。


左肩には巨大な蠍の尾を担ぎ、右手には水が入っているであろうバケツを持った黒いコートの男・・見る人が見れば死神系の魔物にも見える。

その姿の異様さに冒険者のリーダー格である男が大剣を抜いて構えて叫ぶ。


「おい止まれ!お前は何者だ!?」


その声で他の冒険者や騎士団もカウルに気付いて剣を構える。

カウルはその光景を見てかなりの不安を覚えた。

キングスコーピオンの尾と黄金魚の入ったバケツを地面に下ろして両手を上げる。


「俺は冒険者のカウルといいます。キングスコーピオンを討伐したから報告に来たんですが。」


カウルの言葉に冒険者も騎士団も信じられないといった顔をしている。

それもそうだろう。冒険者最高ランクの金ランクでも安全に討伐するには5人以上必要と言われているキングスコーピオンを目の前の男は倒してきたというのだ。


見た感じ男は一人しかいない。パーティは全滅したのだろうか?

しかし彼には傷を負った様子がない。もし一人で討伐したとしたら一体どれだけの実力を持っているというのか。


――それは最早人間の域を超えてしまっているんじゃないだろうか?


冒険者と騎士団はカウルに恐怖を覚えた。

最低でも金ランクの冒険者5人の実力を持つ男・・・そんな人間がいるんだろうか?

唯一カウルと面識のあるルークが前に出る。


「すまないなカウル君。今は皆、気が立っているんだ。ところでそれは本当にキングスコーピオンの尾なのかい?」

「はい。調べてもらっても構いませんよ。」


カウルはルークにキングスコーピオンの尾を渡す。

そして他の冒険者や騎士団の様子を見て、自分が規格外な事をやって恐怖されていることに気付く。


(マズイ、なんか怖がられてる。)


暗黒大陸の魔物と戦うための仲間を探す為にベータに来ているって言うのもあるから、実力を知られるのは良いんだが、大勢に知られて騒ぎになるのは避けたい。


「実はスフィンクスとキングスコーピオンが戦闘をしていて、弱って逃げ出したキングスコーピオンを仕留めたんですよ。」


咄嗟にカウルは嘘をいついた。

なんというか、騎士団に実力が知られるのはマズイ気がしたのだ。

騎士団に誘われる位ならまだいいが、要注意人物としてマークされそうだ。


「・・そうか、まぁなんで砂漠にいたのかは聞かないでおく。わざわざ来てくれた冒険者の皆さんには申し訳ない。報酬の半分を渡すのでそれで許して欲しい。」


ルークがそう言うと冒険者もそれで納得して帰っていった。多分酒場にでも行くんだろう。

次にルークはカウルの方に向き直りもう半分の報酬を手渡してきた。


「カウル君、これは少ないが報酬だ。今から我々がキングスコーピオンが本当に倒されているか、他にも強力な魔物がいないかの巡回を行い、それが終わり次第この封鎖は解除する。それまでは封鎖を解除できないので村でノンビリしていてくれ。」


ルークはそう言うと騎士団に指示を出し始めた。

騎士団は半分がルークと共に砂漠に行き、もう半分は村の警備に当たるらしい。


「俺が倒したキングスコーピオンの死体はオアシス付近にあります。では気をつけて。」


カウルがそう言うとルークは「ありがとう」と一言だけ言って砂漠へと向かっていった。



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