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砂漠へ


ベータ側の村の入口には騎士団らしき集団がバリケードを作り、人を通さないようにしている。

この暑いのに騎士鎧を着込んだ集団を見てカウルは少し可哀想になった。

暑そうだ。流石にフルアーマーではなく、所々衣服が見える場所はあるし、頭装備は外している。だがそれでも砂漠一歩手前でしていい格好ではない。


もしかしたら鎧に冷気を感じる魔法でも掛かっているのかもとカウルは考えたが、明らかに騎士団の方々は辛そうに顔を歪ませているので、それはないだろう。


干物を売っていたおっちゃんにあの集団の事を聞いてみると、キングスコーピオンが出てすぐに何処からかその事を聞いてやってきたらしい。


この世界には大陸を守る【十字の騎士団】と呼ばれる騎士団が存在する。

十字の騎士団は国に属していないし、主も持たないので正確に騎士団と呼べるのか分からないが、彼等の歴史は古く長い。


暗黒大陸の魔物を封印した5英雄が一人、【騎士王】が率いていたのが十字の騎士団だ。

確かゲームでは国を滅ぼされた王子が【騎士王】になり率いたとかいう設定だった。

彼が魔物との戦闘で戦死してしまったために十字の騎士団は仕える国も主もいないというストーリーがあったはずだ。


騎士団の名前も一緒だし、この世界の十字の騎士団の歴史も同じと考えていいだろう。

十字の騎士団関連のイベントには空中都市に行くために必要な【大鷲の勲章】を託されるイベントや上級防具の【騎士王の大盾】を復活させるイベント等、かなり有用なものが揃っていた。

彼等と知り合いになれるのはチャンスと言える。


「すいません、みなさんキングスコーピオンの討伐ですか?」

「ん?なんだお前。」


カウルはリーダーっぽい威張った感じのオッサンに話しかける。

オッサンは背が3m近くあり、盾は持っておらず自分の背とほぼ同等の大きさの大剣を背中に背負っていた。


「俺はカウルっていう冒険者で、ベータに行く予定だったんですよ。」

「そうか。それは災難だな。俺は十字騎士団第5部隊隊長のルークだ。悪いが冒険者でも一人では危険だ。ここを通すことはできない。」


ルークはすまなそうな顔をして頭を下げると、他の騎士たちの方に行ってしまった。

どうやら通してもらえそうもない。騎士団は相当な数が来ているようで、交代で休憩をするため隙はなさそうだ。無理やり通る事もできるが、騒ぎを起こしても得はない。

別の道から行くしかないだろう。


騎士団も村の人達がベータに進まないように、周辺の魔物やキングスコーピオンが攻めて来た時に対応できるように村にいるだけなので、村の外までは見回りをしていない。

村から離れた場所からなら騎士団も気付かないだろう。

キングスコーピオンを討伐してしまえばラクダを借りることができるだろうし、道を塞いでいる騎士団も帰るだろう。


どうやって倒したかも誰も見ていないならうやむやにできると思う。

倒したキングスコーピオンの証拠をこっちに持ってくる時には顔を隠すのもいいかもしれない。


干物を売っていたおっちゃんの話だと、キングスコーピオンはスフィンクス型の遺跡である【守護獅子の迷宮】付近にいるらしい。

ちょうどグラウフルとベータの中間地点で、休憩所のオアシスが近くにあるから、そこら辺に住み着いたんだろう。


カウルは装備を整えてグラウフルから出る。

そのままグラウフルを離れてしばらくしたところで砂漠に突入、そのまま全力ダッシュだ。

容赦なく靴の中に砂が入り、暑さで汗が吹き出す。不快感MAXだ。


守護獅子の迷宮の近くにあるオアシスにはカウルが全力ダッシュすれば夜くらいにはたどり着けるだろう。今日はそこでキャンプをして明日、キングスコーピオンを討伐すればいい。

早くオアシスに到着して休みたいカウルは一心不乱に走り続けた。

途中で砂漠を縄張りにしているサンドウルフやファルコン、砂漠軍隊アリの姿を見つけるが全て無視してオアシスを目指す。

封印の腕輪を外して能力を開放したカウルの走りは馬車の約2倍のスピードだ。

風を切るように走り、何とかその日のうちにオアシスにたどり着くことができた。


オアシスに着いたら火を起こしてキャンプの準備だ。

火をお越したあとはグラウフルで買っておいた干し肉を火で炙り食べる。

ここは既にキングスコーピオンの縄張りになっているはずだ。カウルは装備を外さずに焚き火を眺めた。




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