決着
今回短いです。
いつも短いですけど。
首が180度回った状態になった麒麟はゆっくりと力をなくしていった。
カウルは急いでブラハムとガラフトに回復薬を振りかける。
回復薬は飲まなくても効果は発揮する。2人の傷は回復薬によってある程度回復した。
あくまでもある程度なだけで、ガラフトはまだ黒焦げだし、ブラハムにも所々に青痣が見えるが、それでも2人は動くことができる位には回復したみたいだ。
体中が痛いみたいだったが、2人はフラフラと立ち上がりカウルにお礼を言ってきた。
「「助かりました、カウルさん。」」
「別にいいさ。2人が生きててよかったよ。テントに行って手当をしてくるといい。見回りとかは俺がやるから。」
カウルは2人にテントに行くように伝えると、麒麟のヒゲや角を採取した。
毛皮も欲しかったが、剥ぎ取りの道具なんて持ってきていない。こんな高レベルの魔物が出るとは思っていなかったので、剥ぎ取り用の道具は全部売ってしまっていたのだ。
そんなに邪魔になるものでもなかったし、持ってこれば良かったなぁ、とカウルは少し後悔した。
自分の手元にある刃物といえば相棒でもある長剣の【夜月】だけだ。
ゲーム時代からの相棒を剥ぎ取りになんか使いたくない。
あとは残った麒麟の死体をどうするかだが、そのままにしておくと魔物が寄ってきそうなので燃やすことにした。
カウルはランタン用の油を麒麟に満遍なく振りかけて麒麟の死骸に火をつけた。
なんとも恥ずかしい話だが、カウルは魔法が殆ど使えない。身体強化系の魔法ならある程度は使えるが、攻撃系の魔法は覚えていないのだ。
これはゲーム時、攻撃魔法を無視して近接系のスキルばかり取っていたせいだ。
なので今回火をつけるのは火打石をカチカチ鳴らしてつけている。
油を大量に振りかけているので火がつくと勢いよく燃え出した。
しかしそれでも完全に燃え尽きるまでには時間が掛かりそうだ。
「あぁ、ちくしょう。こんなことなら基本魔法は覚えるんだったなぁ。」
ゲームだったときは覚えられるスキルには上限があり、例えレベルがカンストしても全てのスキルを覚えることはできなかった。
だからカウルは近接戦闘に役立つスキルを重点的に覚えていき、カンストレベルになる頃にはトッププレイヤーの仲間入りを果たしていた。
カウルは自分が覚えてきたスキルに後悔はないが、今回火打石をカチカチ鳴らして火をつけていると少し魔法にスキル枠をとっても良かったかもしれないと思わずにはいられなかった。
ゲームだった頃ならともかく、現実となった今なら初期魔法はかなり使い勝手が良いものになっているはずだ。
水系魔法があれば井戸を往復しないですむだろうし、土系魔法とかは農作業に使えそうだ。
まぁ、いまさら仕方ないだろう。もしかしたら独学で覚えられるかもしれないとカウルは考え、ベータに着いたら少し調べてみようと思った。
とりあえず麒麟を燃やし終わったので(まだ少し香ばしい匂いはするが)カウルは麒麟の死体を遠くに放り投げてテントに戻ることにした。
テントに戻るとガラフトとブラハムの手当も終わっている。
しかしこれ以上戦闘には参加できそうもないので、2人は馬車の折り返し地点である【グラウフル】で護衛の依頼を降り、そこで体を休めるそうだ。
馬車の御者はまた護衛を雇わないといけないとボヤいていたが、これは仕方ないだろう。
麒麟が出てきたんじゃ、金ランクの冒険者がいたとしても同じだと思うし。
イタズラに御者を怖がらせるのもあれだし、カウルは麒麟の事を黙っておくことにした。
そうそうあんな魔物は出てこないだろうと思ったからだ。
とりあえず明日の昼頃にはグラウフルには到着するそうなので、それまではカウルが護衛を一人で行うことになった。
カウルは周囲の見回りをするためにテントを出る。
エルフの森にあるはずの暗黒大陸の封印が無かったり、こんな所にいるはずがない麒麟がいたり、ゲームと違うところが多すぎだ。
しかもそんな状態にも関わらずこの世界の人間のレベルが低すぎる。
麒麟みたいな高レベルの魔物が出てきたりするのがこの世界の日常だとしたら人間なんてとっくに滅んでいていいはずだ。
カウルは何か黒幕がいる気がしてならなかった。
その日はキャンプ地付近に魔物が近づいてくる事はなく、平和に過ぎていった。




