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修行

馬車の中ではまだ意識を回復できていないガラフトをブラハムが治療している。

乗客は護衛が瀕死状態になってしまい不安で一杯の表情をしていた。

2人の戦闘を見ていた乗客もいただろう。2人のあまりの不甲斐なさに不安になっているはずだ。


馬車の折り返し地点である【グラウフル】がゲームでいう中継地点だった場合、行くまでにブラウンウルフより強い魔物も出てくるはずだ。そいつらが馬車を襲ってきた場合、ブラハムとガラフトでは時間稼ぎにもならない。

せめてブラウンウルフを倒せるレベルだったなら倒せない魔物は出ないんだが、あの様子じゃちょっと辛いだろう。


カウルも少し心配になってきた。行きの場合は自分がいるから大丈夫だが、帰りは自分はいないのだ。その場合、帰りの乗客達はどうにもならない。


(うーん、グラウフルに着くまでに装備だけでも強化して、魔物が出てきたらできるだけ2人に戦わせて俺はサポートに徹するかな。)


とりあえず人が死ぬのが分かっていて見過ごすのは嫌なので、カウルなりに2人を強化することにした。グラウフルに着くまで後2日位の間だが、装備を強化して魔物との戦闘に慣れさせる事にする。

2人が嫌がったとしてもこれをやらないと死ぬ可能性があるとでも言えばなんとかなるだろう。


カウルは手当が終わり少し顔色が良くなった2人に近づき、目の前に立った。


「なぁ、お前らの装備、強化してやろうか?」


・・・


2人はカウルの突然の申し出にキョトンとしていた。

カウルは2人に自分の考えを話す。今の2人では護衛は務まらないこと、このまま行ったら自分がいる内は良いが帰りに乗客もろとも命が危ないことを伝えた。

2人・・特にガラフトは悔しそうにしているが、ブラウンウルフとの戦闘で自分の実力が分かったんだろう、何も反論はしてこない。


「で、だ。まずは装備を俺の強化魔法で強化する。後は戦闘の時に俺が出来るだけサポートするからそれでお前等の戦闘スキルを磨いてもらう。」


カウルはそう言うとガラフトの両手剣を奪い取り強化魔法を掛ける。

ガラフトは何か言いたそうな顔をしたが、黙って頷いた。


「・・・よろしくおねがいします。」

「お、お願いします!」


カウルはブラハムとガラフトが頭を下げるのをみて少し居心地が悪くなる。

前の世界ではブラック企業の下っ端だったため、こういうのは今でも慣れない。


「あぁ、よろしくな。」


カウルはそう言うと、ブラハム達の装備一式を預かり強化魔法を掛けていった。

戦闘訓練は魔物が来ないとどうにもならないので、この周辺に出るであろう魔物の弱点部位なんかを教えていった。

カウルの話は乗客達にもいい暇つぶしになるようで、いつの間にか乗客全員がカウルの話しを聞いて質問をするようになっていった。


魔物の弱点や特定の魔物に効果的な技を教えたり、魔物から簡単に逃げる方法などを教えている内に日は暮れて、今日のキャンプ地に到着、その頃にはカウルは乗客全員と仲良くなっていたし、ブラハムとガラフトも尊敬の眼差しでカウルを見るようになっていた。


・・・


「昨日も言ったけどブラウンウルフはぶっちゃけ直線の突進しかしてこないんだわ。」


2日目の昼前に都合良くブラウンウルフが3体出てきたのでカウルはさっそく2人に戦闘訓練をしていた。


「問題は必ず群れで行動しているところだな。だから1人での戦闘だとちょっと難易度が高いかもしれない。でもお前らは2人だろ?」


今の2人の戦闘方法はブラハムが完全に後衛で回復に徹するという形をとっている。

前衛に実力があったり、何人かいるのならまだ良いが、ブラハムにそこまでの実力はない。だから前衛がボロボロになって回復が追いつかないのだ。


「ブラハムも敵の気を引く位の行動を起こさないとダメだ。後ろから石を投げるとかでもいいから。ガラフトもブラハムの方に敵が行かないように前より動き回ることになるが、これを上手くやればダメージを受ける回数も減ると思うよ。」


ブラウンウルフは直線に突進か近くで爪攻撃、噛み付き位しかやらないハズなので、ブラハムの方に向かっているところを攻撃すれば簡単にダメージが入るはずだ。

そうすれば昨日みたいに避けらてダメージを与えられないとかいう事態にはならない。


問題は魔物の数だが、ブラウンウルフの最大同時出現数はゲームの時は5匹だった。

今回の3匹をクリアできればなんとかなるだろう。


「ブラウンウルフの弱点は横腹だ。その強化された武器なら3発も当てれば倒せる。」


ブラハムとガラフトはカウルの指示に従って必死に動いている。

まだガラフトの方にブラウンウルフが行くこともあるし、攻撃ミスも多いが昨日とは違ってかなり拮抗した戦いになっていた。


「おらぁ!!」

「キャインッ!?」


ガラフトの一撃がブラウンウルフの横腹に当たり、ブラウンウルフは地面を転がって動かなくなった。

まずは1体目。昨日は1体のブラウンウルフに瀕死になっていた事を考えると、これはかなりの成長だ。

ブラハムも半泣きになりながら石をなげている。

ブラハムは身体能力がかなり高いようで、ただの小石といえど当たればブラウンウルフにそこそこのダメージを与えているようだった。


――30分の激闘の末、ブラウンウルフ3体を2人が倒したときに、乗客とカウルから拍手が起こったのは無理もないだろう。



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