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宴会と散歩

パソコンが本格的に調子悪いです。

夏の暑さのせいだろうか?

「えーっと、ここに防御札を組み込んでっと。」


カウルがエルフの森の封印を調査してから1ヶ月が過ぎた。

封印がない事がわかった以上、防御壁の完成は急がないといけない。


因みに今日でカウルの仕事である材料強化は終了したし、防御壁の方も70%程完成している。


明後日にはカウルはベータに旅立つつもりなので、今日のうちにカウルでないと出来無い防御札の組み込みを終わらせていた。

防御札はアイテムの耐久値と硬度を上げる強化アイテムだ。本来は盾や鎧に使うアイテムだが、この世界ではどんな物にでも使えるようだったのでありがたく使わせてもらっている。


もちろん防御札はカウルの手作りだ。

ゲームの時の限定イベント【錬金魔術師の夏期講習】で入手していたスキル【付加札作成】が役に立った。因みに材料はパッソー夫人の財力でなんとかした。お金って凄い。


「よっしゃー!今日で一区切り、そんでもってこれまで頑張ってくれたカウルが旅立つらしいから今日は黒山羊屋で宴会じゃあーっ!」


カウルが防御札を付け終わると同時位に防御壁建設のリーダーである男が叫ぶ。

その言葉を聞いて他のみんなも同意の声を上げた。


ぞろぞろと黒山羊屋に向かい扉を開けると、そこにはパッソー夫人やブラド、アリスやガードルに町の皆が集まっていた。

どうやらもうすぐ旅立つカウルの為に皆が集まってくれたみたいだ。


アリスが俯きながら大きな箱を渡してきた。

綺麗な紙で梱包されている。アリスはカウルに箱を渡すとガードルの方に走っていってしまった。


「それは私達からの選別よ。回復薬や保存食が入ってるから使うといいわ。」


なんだろうとカウルが首を傾げていると、パッソー夫人が箱の中身を教えてくれた。

どうやら町のみんながお金を出し合って旅に役立つアイテムを買ってくれたみたいだ。


カウルはちょっとホロリときた。周囲を見渡してみると皆ちょっと寂しそうな顔をしている。

この世界に来る前はブラック企業で馬車馬のように働かされて友逹とは疎遠になり、会社が倒産してからも新しい仕事を探すのに必死だった為、人との繋がりは本当に希薄だった。

カウルが死んでもあっちで泣いてくれたのは多分両親くらいのものだろう。


そんな自分が居なくなるのを寂しいと思ってくれる人たちがいる。

そう考えるだけでカウルは嬉しくて涙が出そうになった。


そしてこの町をこの世界を守ろうという気持ちを更に強くしたのだった。


・・・


酒場での送別会の翌日、カウルは穴熊亭で荷物整理に勤しんでいた。

戦闘系の装備は最初の頃から変わらないが常に来ている普段着はこの1年でかなり増えた。

アイテムボックスがないので、事前に買っておいたリュックに普段着を詰め込み、別のカバンに皆から貰った保存食と回復薬を整理して入れる。

クッキーやら本なんかも入っていたが、本は何故か魔物図鑑という鈍器として使えそうな位の分厚さだったのでしぶしぶ置いていく。


「誰だ【完全版魔物大全】なんて入れたやつ・・・」


クッキーは美味しそうだっだので食べながら作業をする事にした。

整理した結果、リュック1つとカバン1つで旅支度は完了する。

持っていくのを諦めた服や素材アイテムなんかは道具屋に売ることにして、部屋の隅にまとめておく。


「魔物大全は・・売るのもなんかあれだし、穴熊亭で預かっていてもらおうかな。」


正直に言うと売ってしまいたいが、貰ったものを次の日に売るのは人としていけない気がしたので預かってもらうことにした。

整理も終えたし、カウルは暇になったので、町に出ることにした。

ベータには乗合馬車を使う予定なので、明日までは暇なのだ


カウルはクッキーを食べ終えると町に出た。

まずは広場のベンチに座って今までのことを思い出す。

この世界に来て色々なことがあった気はするが、どれも楽しい思い出ばかりだ。


「大熊を狩って熊鍋パーティを広場で開いたり、凶鳥ダランダを狩って広場で焼き鳥パーティを開いたり・・・あれ?食物の思い出しかない?」


カウルはアルファでの思い出の70%が食べ物関連なことに驚きを隠せなかった。


(でも熊鍋や焼き鳥パーティを開いたおかげでアルファの皆と仲良くなるのが早まったんだよな。)


この世界で魔物を狩れる人間は限られているから肉は貴重だ。

まぁ、食べる為に育てられている魔物や動物もいるからそこまでじゃないが、それでも普通の住人達は3日に1回くらいのペースでしか肉は食べられない。(もちろんアルファでの話で、他の町ではまた違ってくるが)


そんな中で肉パーテイを開けばカウルへの好感度は急上昇だ。

カウルは料理が出来ないので材料を提供しただけだったが、皆喜んで調理してくれた。


「みんなで料理して・・あれは楽しかったなぁ。今度帰ってきたらまたやりたいな。」


カウルはよだれを拭いつつ広場を後にする。

次はギルドに向かった。


ギルドはこの世界に来てかなりお世話になっている場所だ。

ここの人達はいつも笑顔を絶やさないが、初めて暗黒大陸の魔物【サイクロプス】の首を持って行った時は全員の笑顔が消えた事を覚えている。


とっさにパッソー夫人と協力して倒したと嘘をついて、それが原因でカウルの実力がパッソー夫人にバレたのは苦い思い出だ。

まぁ、今ではパッソー夫人が1番の協力者なんだから結果オーライなんだが。


この後もカウルは日が暮れるまで街を散策し、自分の新しい故郷であるアルファの町並みを目に焼き付けた。





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