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タウルス

ちょっと短め。

全部バイトが悪い。



「しっかし、タウルスが出てきてるのにあんまり騒ぎが起きてないわよ?アンタ、ホラじゃないでしょうね?」


料理が進み、酒も随分と回ってきたサラサ達はカウルに絡み酒状態になっていた。

さっきからサラサはカウルに「タウルスが出現しているのに町がこんなに穏やかなのはおかしい」とずっと言っているし、ライラはタウルスの容姿がどんなだったかを執拗に聞いてくる。

唯一のストッパー的存在であるミンミは酒が弱いらしく、一杯飲んだ時からオネムな状態だ。

他の客に助けを求めるも誰もが目をそらす。



「まぁまぁ、お客さん落ち着いて・・」


見かねた黒山羊屋の店主であるガウルが止めに入るが


「うっさい!!」


サラサの容赦ない右肘が顎にクリーンヒットして床に倒れることになる。

さすが銀2ランクの冒険者といったところだろうか。床に倒れたガウルはピクリとも動かず、店にいた客に引きずられて今は店の隅で治療中である。


サラサの悪酔いはこれを境に更にヒートアップ、ライラも加わり悪酔いは加速する。

客はガウルが一撃で倒されるのを見て顔を青くした。

ガウルは黒山羊屋を始める前は冒険者だった。

銅5ランクの時に【死の使い・タイプ黒山羊】という高レベルの魔物に遭遇し、運良く逃げる事が出来た後、彼は冒険者を辞めて店を始めたのだ。


アルファで銅5ランクといえば上位のランクといえる。

そんなガウルが一撃で倒されたとしたら今店にいる客がどうこう出来る相手ではない。

最早触らぬ神に祟りなしといった感じでカウルたちの周りには客が一人もいなくなっていた。


「大体ねぇ、タウルスなんか出てきてたらアルファなんてとっくに廃墟よ、廃墟!誰が討伐してんのよ!」


サラサはタウルスの事を信じてはいないようだ。

それはわかる。サラサ達が言うことが本当ならタウルスは金ランクがパーティを組んでようやく倒せる魔物なのだ。

アルファの住民が混乱していないのも本当はタウルスなんて出ていないと思っているからかもしれない。


「パッソー夫人と俺、あとブラドさんで討伐してるよ。ちゃんと討伐部位も持ってきてるからギルドに確認でもしてみるといい。」


カウルはため息を吐きながらそう言った。

実際はカウル一人で討伐しているのだが、それだとカウルの異常なレベルがバレてしまうため、パッソー夫人とブラドに同行してもらっている。

この1年でアウルはパッソー夫人に本当の実力を知られてしまっていた。


カウルの実力は他の人間とは次元が違う。本気のカウルは魔物よりよっぽど化物だろう。


カウルが実力を封印しているのは町の人間を怖がらせないためと理解したパッソー夫人はカウルの力がバレないように協力してくれているのだ。


「パッソー夫人ってあの【雷天】?そういえば引退してアルファにいるって聞いたことがあるわね。」

「そうだよ。因みにブラドさんも引退してるけど金ランク冒険者だった人だよ。」


【雷天】はパッソー夫人が冒険者だった頃の通り名だ。

雷魔法が得意で良く使っていたらそう呼ばれるようになったらしい。


「へぇ、それならまぁ分からないでもないかな。あの雷天がいるなら納得だ。」


ライラはそう言いながらうんうんと頷いている。

これにはサラサも同意見みたいだ。同じようにうんうんと頷いている。


(そんなに凄いのかパッソー夫人って。)


カウルが見たパッソー夫人の身体能力はゲームの時に当てはめると大体110程度だ。

金ランクだったとは聞いているが、そこまで強いとは思っていなかった。


しかしサラサ達の反応を見る限りパッソー夫人の実力はかなりのものらしい。

もちろん戦闘技術や度胸、戦術センスなんかも含めればパッソー夫人の実力はレベル150位だと考えてもいいかもしれないが、それでも身体能力はあくまでレベル110程度だ。


「そんなに有名なのか、パッソー夫人って。」

「何言ってんの?あの人はガンマやシータでも戦えると言われた天才よ?」


ということはガンマやシータにはパッソー夫人レベルがゴロゴロいる訳か。

どうやらベータまで初級者エリアってのはゲームの時と同じみたいだ。

ガンマ、シータは中級者エリア・・レベル70~110の魔物が出てくるのかな?

暗黒大陸や浮遊都市ガンマの噂は聞かないからこの世界の冒険者の身体能力はそこまで高くないのかもしれない。


(まだまだ情報が足りない、か。)


少なくとも今の情報だけでは仲間を作っても死体を作るだけのような気がする。


最低でもパッソー夫人以上の能力者がこれからは必要になってくるだろう。

サラサがパッソー夫人の武勇伝を話しているのを聞き流しながらカウルはこれからどうするかを考えていた。




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