風呂とお酒
暑いです。
部屋にクーラーがないのでパソコンを起動させると軽く我慢大会状態になります。
あーうー
「なんていうかさ俺、悪くないよね?」
カウルは現在、風呂場のタイルの上に正座している。
目の前には服を着てオロオロしている半泣きの女性と怒りの形相の2人の女性がいた。
ツインテール金髪ツリ目の小さい女性が苛立った感じで叫ぶ。
「何言ってんの?ミンミの裸を見といて、泣かせといて悪くない?死にたいの?」
ミンミというのはさっきのスイカ胸の女性で、今現在オロオロしている女性のことだろう。
赤髪ロングのおっとりした感じの女性だ。彼女は今も半泣き状態だった。
「私達は女湯が掃除中だから男湯を一時的に女風呂にするってこの宿の娘さんに言われたのよ。男湯には人がいないから大丈夫ですっていわれたんだから!」
そういったのは青髪ショートの女性だ。こちらもかなり怒ってらっしゃる。
カウルはそんなこと知らんがな、って思いで一杯だった。
「あううぅ・・サラサちゃん、ライナちゃんもういいよ。止めようよぅ。」
ミンミが半泣きの状態で二人の女性の袖を引っ張っている。
どうやら金髪の方がサラサ、青髪の方がライナというらしい。
ミンミはもう裸を見られたことは良いみたいだ。多分カウルが悪くないと分かっているからだろう。恥ずかしいが、カウルに怒りをぶつけるのは違うと思っているようだ。
しかし他の二人はそう思っていないらしい。
特にサラサの方の怒りがすごい。自分の裸を見られたわけじゃないのに凄い怒っている。
「何言ってんのよミンミ?こいつはアンタの裸を見たのよ?良いわけないでしょ!」
「そうよ?こんな下卑た男にミンミの裸を汚されたと思うと・・もう、私はもう!」
二人はミンミの言葉に聞く耳を持つことはないみたいだ。
しかし、裸を見ただけで汚されたとはこれいかに。
「おいおい、触ってもいないのに汚されたとか無いだろ・・」
カウルの言葉にサラサとライナの怒りが最高潮に達する。
因みに今のカウルの状態はタオルを腰に巻いただけの状態だ。
そんな丸腰のカウルに向けてサラサが持っていた武器である大槌を振り下ろす。
ドゴゥッツ!!
カウルは寸でのところでサラサの攻撃を躱した。
さっきまでいた所に大穴があいている。攻撃が当たったとしても今のカウルなら死ぬことはないだろうが、多分すごい痛いだろう。
「サ、サラサちゃん!?その人死んじゃうよ!!止めようよぅ!!」
「そ、そうだぞサラサ!武器で攻撃するのはやりすぎだ。せめて殴るくらいですませるべきだぞ!」
ミンミとライナが慌ててサラサを止めに入る。
大きな音を聞きつけてアリスとガードルがやって来たのでカウルは事情を説明した。
全面的にガードルとアリスの連絡不備がこの事件の発端だと分かり、ガードルに土下座されてようやくサラサとライラの怒りも鎮火したようだ。
そしてカウルはミンミに裸を見たことを謝って自分の部屋に戻るのだった。
・・・
「えらい目にあった。」
カウルは現在、ベッドの上でごろ寝中だ。
外はもう暗く、店もほとんどが閉まっている。
まだ開いている店は酒場くらいのものだろう。時刻は20時を回っている。
何時もなら寝ている時間だが、さっきのこともあって目が冴えてしまっているためカウルは外へ散歩に出ることにした。
今なら多少懐も暖かいし、酒場で高級なお酒を注文なんてのもいいかもしれない。
カウルはそう考えて夜の散歩に出かけることにした。
アルファの夜は早い。ほとんどの店が19時には閉まり、酒場も長い所で22時までで閉まる。
つまり22時を過ぎれば店の光は殆ど消え、民家の光もその頃には大体消える。電灯なんてないからランタンがないと先が見えないくらいの暗闇がアルファを包む。
そんな時間に起きている人間は見張りの兵士くらいなものだ。
今の時間からだと酒を飲んだとしても2時間も飲めないことになる。
しかしカウルは飲みたい気分だった。のんびり風呂に入っていたらいきなり罵倒されて風呂場のタイルに正座させられたのだ。こっちは悪くないのに。
酒だって飲みたい気分にもなる。
カウルはこの1年で出来たお気に入りの居酒屋【黒山羊屋】でこの嫌な気分を忘れることにした。
黒山羊屋は酒も美味しいが一緒に出てくるおつまみが絶品なのだ。
カウルはここの【熊肉の塩漬け】が大好きだ。
嫌なことがあると何時も黒山羊屋に来て熊肉を食べながら酒を飲むことが多かったりする。
「おじゃましまーす。おっちゃん、今日も何時もの熊肉よろしくー。」
「おう、カウルじゃないか。いらっしゃい。」
おっちゃんと呼ばれた男の名前はガウルという。
お坊さんのように光る頭がトレードマークの黒山羊屋の店主だ。
黒山羊屋はもうすぐ閉店時間だというのに満席に近い賑わい様だった。
カウルは奥の方の席に座って熊肉を待っていると
「あーっ!変態がいる!!なんであんたがいんのよ!」
入口の方から大きな怒鳴り声が響いた。
何事かとカウルは入口の方を見るとそこにはカウルの方を憎々しげに睨むサラサがいた。




