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防御壁

カウルが転生してから1年が過ぎた。

今では文字の読み書きも問題なくできるようになり、カウルの冒険者ランクも銀3ランクになっている。


そろそろ他の町に行く事を考えてはいるが、アルファに知り合いが多くなってしまったカウルはそれができないでいた。

穴熊亭のアリスやガードル、ブラドにパッソー夫人・・他にも常連になった店の店主や隠れた場所にあるステーキハウスの店員達・・アルファの住民はみんないい人たちばかりだ。


最近は暗黒大陸の魔物が活性化してきているのか時々アルファ周辺に出現することもカウルがここを離れられない理由になっていた。

暗黒大陸の魔物の最低レベルは120、アルファの住民で暗黒大陸の魔物を倒せる人間はカウル以外にいない。

そんなに頻繁に出てくるわけじゃないから今のところカウル一人でも何とかなっているが、本格的に暗黒大陸の魔物がこちらに出てきたらまずいことになるだろう。


カウルは今、アルファの住民に呼びかけて防御壁を作っている。いつまでもアルファだけに留まっているつもりはないし、このまま魔物の数が増えていったら多分カウルがいてもアルファは滅んでしまうからだ。

カウルは確かにレベル255の能力は持っているが、無敵ではない。

それに暗黒大陸の奥にはレベル200以上の魔物もいるのだ。もし、そんな魔物たちが押し寄せてきたらどうすることもできない。

そうなったらカウルだって自分が逃げるので精一杯だろう。


少しでも生存確率を上げるための、逃げる時間を作るための防御壁だ。

なんとも逃げ腰な理由だが、暗黒大陸の魔物が強いことは皆知っているので、防御壁を作ることを反対する人間はいなかった。


「カウルさーん、こっちの方も頼みまーす。」

「もうちょい待っててくれ。すぐ行くから。」


防御壁にはカウルが魔力を込めて強化した石材を使って作っている。

カウルの仕事は材料を強化するだけなのだが、他の人間にはできないことなので結構忙しかったりする。

ギルドが依頼を出して職人や冒険者を集めての大工事なのだが、強い魔力を持った冒険者は魔物退治の方に行ってしまうため、作業員のほとんどはアルファの職人で構成されている。そのせいか魔力を資材に込めることができる人間がいないのだ。


カウル達が防御壁を作り始めて半年が過ぎようとしていた。

とりあえず暗黒大陸の方面を優先して作っているため何とか見れるものになってきているが、アルファ全体を囲むにはまだ時間が掛かるだろう。

しかし暗黒大陸側だけでも防御壁が完成すればカウルがいなくなっても安全に避難するくらいの時間は稼げるはずだ。

そこまで完成したらカウルは他の町を見てまわろうと思っていた。

最終的にはアルファに戻って自分の家を持とうと考えているが、とりあえず他の町もみてみてみたいという気持ちが抑えられなくなってきたのだ。


ベータは砂漠地帯でピラミッドがあり、ガンマはすぐ傍が海だ。海にはゲームだと海賊船とかあったはずだし、財宝探しなんかも面白いかもしれない。

シータは雪国で、確か雪女の集落があったはずだ。ゲームだった時は美人しかいなかった雪女の集落、是非行ってみたい。

そしてゲームでは未開拓地として行くことのできなかったそれぞれの町の先がどうなっているかも気になるところだ。


暗黒大陸の魔物が活発になっている今、他の町をまわるのは戦力を集める為でもある。

アルファには現役で金ランクの冒険者はいないが、他の町には普通にいるらしい。

余程のお人好しじゃないと手は貸してくれそうもないが、やらないよりはやった方がいいだろう。


・・・


日も暮れてきたので今日の作業は終わりにしてカウルは穴熊亭の自分が借りている部屋へと戻ってきていた。

思えば穴熊亭とも長い付き合いだ。もうアリスともガードルとも家族みたいな感じになっている。朝飯とか一緒に食べてるし、アリスなんか昼飯作ってくれるようになった。

美少女の手作り弁当は始めの頃かなりの男達から嫉妬を買ったものだ。


防御壁を作ってくれているお礼とのことなので別にフラグが立った訳じゃないのが寂しいところだったりするが。

晩飯にと屋台で買った焼き鳥を頬張りながら長剣【夜月】の手入れをして、この世界の文字の書き取りをする。

これがカウルがこの世界に来てからの宿の過ごし方だったりする。

もう1年近く続けているので手馴れたものだ。


日課の作業を終わらせたので、カウルは風呂を借りることにした。

因みに穴熊亭の風呂は共同だが、男女に分かれている。

脱衣所もしっかり区切られているので扉を開けたらドッキリイベント☆みたいなことは残念だが皆無だ。とても残念だが。


ガードルに風呂に入る了解を得て、風呂場に向かう。

今、男湯の方は誰も入っていないそうだ。

穴熊亭の風呂は小さい銭湯くらいの広さがあるので、別に他の客がいてもそこまで気にならないが、ノビノビできるのはラッキーだ。


・・・


カウルが広い風呂を満喫していると、ガラリと扉が開く音がした。

別の客が入ってきたようだ。カウルはもう充分に風呂を楽しんだので入ってきた客と入れ替わりで出ようと思って立ち上がる。


「きゃーーーーっ!!」


瞬間、女性の悲鳴が風呂場に響く。

カウルが立ち上がった先には男ではなく、大きなスイカを胸に付けた・・そう、女性が立っていた。

女性は両手で胸を隠して逃げるように風呂場から出て行く。

脱衣所からは数人の女性の声が聞こえてきた。

何やら「変態がいた」だの「全部見られた」という半泣きの声と共に「いい度胸してるね。」とか「襲われないように潰すしかないわね。」とかいう物騒な言葉も聞こえてくる。


(確か、今日ベータの方から女性の冒険者が泊まりに来てたっけ。)


カウルはさっきのスイカを必死に頭から追い出して、どうしてこうなったかを考えていた。

自分は男湯に入っていたはずなのに、と―――



先の展開を考えずにとりあえず新キャラ投下!

やっちゃった。これ、大丈夫かなぁ・・

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