表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺+手違い=転生  作者: トカゲ
始まり
13/60

依頼と虫

書き忘れてたけどちょっと前に冒険者を除くこの世界の平均レベルを30から10に変更しました。




カウルはまだ文字を覚えていないのでベルを鳴らしておじいさんに依頼書の内容を教えてもらう事にした。

なにしろ依頼書を読んでもらうのはタダなのだ。これを利用しない手はない。


おじいさんに銅ランクの依頼で1日以内に終わりそうなやつを探してもらう。

ギルド掲示版はお助け掲示版の倍以上の依頼が張り出されていて、銅ランクの依頼だけでもかなりの量があるのでその中に1日で終わる依頼もあるはずだ。


「そうじゃのう、これとこれと・・あとこれ位じゃな。」


おじいさんは3つの依頼書をカウルの前に出してきた。

依頼の説明を受けてカウルは一番報酬が高額の【鬼蜘蛛駆除】を選ぶ事にした。

どうやら依頼者の家に鬼蜘蛛が巣を作ってしまったので駆除してほしいらしい。

鬼蜘蛛は成長すると人間を食べる魔物だから、手遅れになる前に駆除しないとマズイとのことだ。

見つけたのが早かったおかげか、親虫以外はまだ幼虫で、親虫も巣を作り終えたばかりなのか少し弱っているらしい。


鬼蜘蛛のレベルは確か30だったはずだ。蜘蛛って所が少し気持悪いが、町から出なくて済むし、報酬も50銀貨と他の依頼と比べて高額だ。

これだけあれば美味しい晩御飯を食べられるはず。カウルはアリスの所に依頼書も持っていき喜び勇んでギルドから出て行った。


・・・


「カウルさんったら、そんなに良い依頼だったのかしら?」


カウルがアリスの所に依頼書を置いて走り去った後、アリスは依頼書を確認してある事に気付く。


「・・これ、鉄7ランクの依頼書だ。」


アリスの顔が青くなる。カウルは文字が読めないので文字読み係のおじいさんに依頼を選んでもらっていたはずだ。だからアリスも安心しきっていたのだが・・

アリスは文字読み係のおじいさんの所に向かい話しを聞く。


「どういう事ですかゲインさん!カウルさんはまだ銅1ランクですよ!?」


いくら戦闘技術や身体能力が高いと言っても銅ランクの新人が鉄7ランクの依頼をこなせるわけが無い。

もしかしたら死んでしまう可能性だってある。

そんなアリスの混乱した様子を見ながらゲインは静かに言った。


「これはパッソー夫人からの頼みでな?あの者の実力を知りたいそうなんじゃよ。」


ゲインの言葉にアリスはますます混乱する。

パッソー夫人といえばアルファでは一番の金持ちで過去に金ランクの冒険者だった事もある人物だ。

そんな人が何故こんな事を頼むんだろう?アリスは訳が分からなかったが、自分ではどうする事もできないので、とりあえずカウルの無事を祈る事にした。


・・・


依頼者の家は南門のすぐそばにある3階建の家だった。

前回の依頼者であるパッソー夫人の屋敷とは比べ物にならないが、それでも他の家より少し豪華な造りをしている。

カウルが家のベルを鳴らしてからしばらくして、白髪の男性が出てきた。

60歳位だろうか?顔に刻まれた皺でそこそこな歳だというのは想像できるが、筋肉は引き締まっており背筋はピンとのびている。

中々ダンディなおじいさんが出てきたなぁとカウルは思った。

カウルは依頼に来た事を伝え、証拠の依頼書をおじいさんに渡す。


「ほう、キミがカウル君ですか。パッソー様から良く聞いていますよ。私の名前はブラドです。よろしくお願いします。」


老人は依頼書に目を通してカウルの方を見る。

パッソー様というのは前回の依頼主であるパッソー夫人の事だろうか?

カウルはこの町に来て知り合った数少ない人の名前が出て驚いた。


「パッソー様ってパッソー夫人の事ですよね?お知り合いなんですか?」

「ははは、私はあの家の元執事でして、今でも時々若手の指導をしたりしているんですよ。」


なんとも世間は狭いものだ。

まさか前回の依頼者の知り合いが今回の依頼者とは。まぁ、パッソー夫人は顔が広そうだし、大体の人と知り合いなのかもしれないが。


カウルはブラドに案内されて家の中にはいる。

鬼蜘蛛が巣を作ったのは屋根裏部屋で、今は封印の札を張って外に出ないようにしているが、破られるのは時間の問題だという。


しかし封印は直ぐに破られるものでも無いらしく、まずは休んで行くように言われて、カウルは客間で紅茶とお菓子を食べながらブラドと話をした。


大体はブラドの昔話だったがカウルの過去を探る様な質問も時々あった。

過去を探る様な質問の時は少し答えに困ったが、深く追求はされなかったし、それ以外はとても楽しい物だった。

1時間位ブラドと談笑して、いよいよ鬼蜘蛛のいる屋根裏部屋に行く事になる。

鬼蜘蛛はゲーム時代、レベル30の魔物だったが集団でいる事からソロで戦う場合、プレイヤーのレベルは最低50は必要だったはずだ。

行動パターンは単純で、動くものの方に向かってきて、集団で噛みついてくるだけ。

ゲームだった時はパソコンの画面越しに気持悪がるだけだったが、今回は本当に戦わないといけない。カウルは蜘蛛というか虫が嫌いなので鳥肌が今更ながら沢山出てきた。


屋根裏部屋に入る為の扉には封印の札がべたべたと貼ってあり、扉の向こう側からカサカサと音が聞こえてくる。


「これ、扉を開けたら鬼蜘蛛が外に出てくるんじゃ・・」

「そうですね。だからカウル君には屋根に上って貰って、窓から屋根裏に侵入、退治をしてもらおうと思っています。窓は割っていただいて構いません。」


鬼蜘蛛は日差しが苦手なので窓の傍にはいないらしい。

そこから侵入して鬼蜘蛛を退治、もし危険を感じたり退治が無理そうだった場合は壁や扉を叩けばブラドが封印を解いて扉を開けてくれるらしい。その場合は依頼失敗になるみたいだが。


「では屋根に上がって貰いましょう。こちらのベランダから行けますので、ついて来てください。」


ブラドに案内されてカウルは屋根に上がり、屋根裏部屋の窓を覗く。

そこには大小合わせて20匹以上の鬼蜘蛛が蠢いていた――


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ