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自殺+手違い=転生  作者: トカゲ
始まり
10/60

熊と蛇と蜂蜜

バトルあります。

書くの苦手なバトルシーンがあります。

・・え?じゃあ得意なシーンはどれだって?


ノーコメントで。

大熊はカウルの方を見て獲物を見つけたかのように唸り声を上げた。

その姿は熊そのもので、迫力も肉食のそれだ。


カウルはその雰囲気に当てられて混乱していた。

万が一にも負ける事のない能力差がカウルと大熊にはある。それはカウルも分かっているつもりだった。


だけど、それが分かっていても逃れられない恐怖ってものはある。

大熊はカウルに向かって左腕を振りあげた。

しかしカウルは動かない・・いや、動けないでいる。

絶対的な恐怖・・キラービーの時とは比べ物にならない恐怖のせいかカウルは動く事ができない。


ゴスン・・


鈍い音がした。大熊は勝利を確信したように笑う。

だが、カウルの体には傷という傷が見当たらない。小さい擦り傷のような物はできているがそれだけだ。


今度は大熊はそれをみて混乱する。逆にカウルは大熊の攻撃が予想以上に弱かった為、少し冷静さを取り戻しつつあった。


「あれ?こんなもんか?」


カウルの何気ない一言に大熊は怒りの咆哮を上げた。

律儀にも大熊は蜂蜜の壺を地面に置いてから攻撃に移った。

大熊はさっきまでの余裕な態度を180度変えてカウルに攻撃を連打で当てて行く。

ゴスゴスと鈍い音が続くが、一向にカウルにダメージが入る様子はない。


だんだんと大熊の攻撃が煩わしく思えてきたカウルはそっと大熊の右腕を掴み攻撃を止めてみる。

大熊は苦しそうに唸り、残った左手でカウルを攻撃しようとするが、それもカウルは止める。体格的には大熊の方が勝っているが、他はカウルが圧倒的に上だ。

カウルが少し力を入れるだけで大熊は辛そうな声を上げる。


いつの間にか大熊とカウルの立場は逆転していた。

カウルは大熊の腕を離して大熊を解放する。

大熊は解放された喜びよりも今まで握られていた腕の痛みによる恐怖が勝り、土下座のようなポーズで丸まっている。


カウルは拍子抜けといった感じで大熊を見ていた。

さっきまでの大きな肉食獣の姿はどこにもなく、カウルは大熊の姿が何処か小さな子供のように見えていた。

急に面倒になったカウルは大熊が地面に置いた蜂蜜の壺を拾い大熊を放って他の場所の散策を続ける事にした。


大熊は動く様子がない。体は小刻みに動いているし死んではいないだろう。

だけどしばらくは動けないだろうし、カウルを攻撃する事はもうないと思う。


カウルは大熊から離れて他の魔物がいないか探すが中々に見当たらない。

ゲームではここに魔物がウジャウジャとまで行かないものの、そこそこにはいたハズなのに・・カウルは少し不思議に思いながらも日が暮れてきたのでヘビ森を後にする事にした。


・・・


カウルが帰ったのを確認してから草むらからガサガサという多くの音をたてて数十体の魔物が顔を出した。その全てに恐怖が張り付いている。

草むらから現れた魔物の名前はリザードマン。知能は人並みにあり、多彩な連携で敵を翻弄する魔物だ。


彼等は大熊が赤子のように倒されるのを見て自分達では戦っても殺されるだけだと考えて隠れる事にしたのだ。

ヘビ沼で大熊は上位の魔物だ。

大熊を越える力を持つのはリザードマンの族長であるリザードキングや大熊の変異体であるレッドべアーだけだ。その大熊があんなにも簡単に倒されてしまった。


この時のリザードマンの恐怖は誰にも否定できる物ではないだろう。

リザードマン達はアルファに攻撃を仕掛けようと準備していたのだが、族長達がカウルの存在を知って攻撃を止めた。

その出来事はヘビ沼全域に伝わりそれ以降しばらくはヘビ沼で魔物の姿を見る事はなくなったのだが、これはまた別の話。


・・・


カウルは蜂蜜の壺を肩に担いでアルファへと戻って来ていた。

時刻は19時くらいだろうか?店も閉まっている所が多く、蜂蜜を売って宿代を稼ぐ計画は煙になって消えてしまった。(そもそも蜂蜜が幾らで買い取られるか分からないから売っても宿代になるか不安な所だったが)


蜂蜜はカウルの頭より一回り大きい位の壺の中にタップリと入っている。

少し舐めてみると、今まで味わったことのない様な上品な味がしてカウルは驚いた。


ゲームでも大熊が落す蜂蜜の説明文では最高級蜂蜜とか書いてあったが、まさかこっちでも同じ様に最高級蜂蜜だったとは。

熊のくせにこんなの持ってるとか生意気だなぁ、とカウルは思った。

しかしこれなら宿代くらいには余裕でなるだろう。カウルは最後の手段を実行すべく穴熊亭に向かう事にした。


「この蜂蜜が宿屋の代金の代わりになるといいな。」


そう、カウルは蜂蜜を宿代の代わりにしてもらうつもりなのだ。

穴熊亭は宿屋だけでなく、食堂として利用する客が多い事は朝の混雑から分かっている。

この蜂蜜がこの世界でどれだけの価値があるのか分からないが、これに賭けてみる価値は充分にあるだろう。


こういう交渉は初めてで、カウルは緊張しているが、こういう時は堂々としていないと失敗するって何かで聞いた事がある。

カウルは少ない勇気を振り絞って穴熊亭の前に立った。


「あれ?カウルさんどうしたんですか?」


決意を固めて穴熊亭に入ろうとした時、後ろからアリスの声がした。

振り向いてみると、どうやら仕事が終わって帰って来た所の様だ。アリスは両手に一杯の荷物を持ちながら不思議そうに首を傾げている。


「あ、いや今日も泊めてもらおうと思ってね。」

「そうなんですか?ではどうぞ中に。」


アリスはそう言って先に穴熊亭に入ろうとする。

カウルはここがチャンスだと思った。宿の主人であるアリスの父親よりも女性であるアリスの方が甘いものは好きなはずだ。ここでアリスを味方に付けてしまえば宿に泊まれる確率は大幅に上がる。カウルは急いでアリスを止める。


「実はなんだけどさ、宿に泊るお金が無くて・・無理は承知なんだけど、この蜂蜜を宿代の変わりにはできないかな?」


カウルはアリスに蜂蜜の壺を見せる。

黄金のように輝く蜂蜜からは上質な甘い香りがしてアリスの鼻をくすぐる。

間違いなく高級品だ。それもかなりの大きさの壺一杯に入っている。


「なんだったらチョット舐めて味を確認してくれても良いよ。」


アリスはゴクリと喉を鳴らし、蜂蜜を指ですくって舐める。

舐めた瞬間衝撃が奔る。こんなに甘く、爽やかな蜂蜜をアリスは食べた事が無かった。

それもそのはずだ。

大熊が持つ蜂蜜を手に入れるには当然ながら大熊と戦って倒した後でないと手に入らない。

しかし蜂蜜の壺は戦闘中に結構な確率で割れてしまう為、最高級品として取り扱われ貴族以上の地位の人間の所にしか出回っていないのだ。


カウルが持っている量の蜂蜜ならば売るべき所に売れば10金貨位の値は軽く付いてしまう。この蜂蜜はそういう蜂蜜だった。


アリスはその事を知らなかったが、直感で『そういうもの』だと言う事は理解した。




この小説が変な方向に走り出した時、止められるのは読者様しかいません。


何か変な所、矛盾点がありましたら教えていただけると嬉しいです

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