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闇の力⑦(第二部ケイトの夢編完)

やっと第二部が終わった(*´ω`*)

さて、読んでいってくださいませ。

そこに気がついたのも束の間、ケイトは突然誰かに持ち上げられる様な感覚と共に後方へと吹き飛ばされた。


体が風を切る感覚と視覚だけが今自分の置かれている状況を把握する。

だからといって、体の自由を簡単には取り戻す事ができないケイトは背中から地面へと激しく落下した。


「く・・・ってぇ・・・」


(大丈夫ですか!?ケイト様!?)


直接脳内へ響くルーリの声を聞きながら、ケイトは痛む首筋を押さえつつ起き上がった。


「一体どうなってるんだ?何で急に・・・

ってリコは!?」


「うっ・・・うっ・・・」


ケイトが顔を上げた視線の先には先程と変わらぬ光景が広がっていた。

むしろ、先程よりも状況は確実に悪化している。


それを物語るかの様にリコは呻き声を上げながら、自分の首を絞める少女の手に手を重ね脚をばたつかせては抵抗を試みていた。


しかし、リコの抵抗虚しく締まりはどんどん強くなっていく。


「はぁう・・・あぁうぅ・・・・」


リコの口からは涎が溢れ視点も定まっていないかの様に震え始めていた。


「やめろ!っく・・!?」


立ち上がろうとしたケイトは突然何かに躓いたかの様に前のべりで転倒した。


「っ痛・・・」


「ケイト様!」


何処からともなく姿を現したルーリはケイトの脚を見て驚愕していた。


「脚が・・・」


「何処行ってたんだ・・・って、これくらいの傷たいした事・・・・!?」


ケイトとルーリの視線の先にあったのは、幽霊の様に透けたケイトの右脚だった。(服部も含む)


「!?何だこれ!?」


ケイトは唖然としながらも自分の脚をじっと見つめ、同時にこの世界へ飛ばされた当時の事を思い出し始めていた。


この世界へ始めてきた時、ケイトには体が無かった。幽霊の様な曖昧な存在。

それはユン婆が言った過去を変えてはならないと言う教訓そのものだ。


だが、ケイトはその禁忌を破り真意はどうであれユン婆はケイトに力を与えた。それを使う使わないかを判断したのはケイト自身なのだが。


「これって・・・」


(私にもわから・・・です・・・。それに・・・なんだか意識が・・・うにゅぅ・・・)


ケイトが突然力が抜けた様な声で呟くルーリへと視線を向ければ、自身の脚同様に存在が消えてしまいそうな程弱弱しい姿を晒していた。

それを見るや、ケイトはこの世界に存在していられる時間が残り僅かなのではないか?という疑惑が頭を過ぎる。



「しっかりしろ!意識をしっかり持つんだ!」


(は・・・はふぃ〜)


(こりゃ・・・長くもたねえな・・・)



そんな事を考えながらもケイトは透けていない左脚を軸にゆっくり立ち上がると、

偶然かそれともまだ余力が残っていたのか右脚は元の存在する脚へと戻った。


(まだ・・・やれる!)


ケイトはふと足元に落ちている魔剣セルシアスで目が止まった。

その魔剣もまた透けたり実体化したりと点滅していたからだ。


(魔剣と呼応している・・・のか?いや・・・今はそんな事より・・・)


ケイトは脳裏に過ぎった疑問を頭の片隅に追いやると、魔剣を拾い上げリコの元へと走り出そうとした。


その時だった。



少女の横で仰向けになっていたセーラの体が突如としてひかりだし、小さな粒でできた発光体がセーラを覆い囲む様に湧き始める。

次第にその発光体はセーラの胸の前へと集約すると、最後の力を振り絞るかの様に轟々と燃え上がり始めた。


「「・・・」」


唖然とした表情で少女やケイト、ルーリがその光景に見とれる中、少女に首を締め上げられたままのリコは驚きの表情から一変、

泣き崩れる様に表情をくしゃくしゃにした。


ポロポロと涙を流すリコを他所に青い炎はセーラから序々に離れ天へと登る様に上昇していく。

そんな状況の最中ゆっくりと誰にも悟られない様動く存在がいた。


その存在は突如として覆い被さる様に這い上がり青い炎を飲み込んだ。


「!?」


次々と目の前で繰り広げられている光景に全員が目を奪われる中、

黒い影であるヤミネだけはゴボゴボと音を立て歪な存在感を漂わせている。


それを見るや否やリコは呼吸不全の症状を伴うと共に壊れた人形みたくだらりと気を失った。


「リコぉおおお!」


ケイトは今にも輝きを失いそうな魔剣を手に持ち走り出した。


ケイトの頭の中はもうくしゃくしゃだった。言うなれば”わけがわからない”だ。

ケイトに目の前で起きているこの現状を把握するだけの知識はない。

だが、この状況、この雰囲気がわからない程愚かでもない。



そんなケイトの思いとは裏腹に更に事態は大きく動いていく。


突然氷面が突き上げられる様な地震に襲われたからだ。


その振動で辺りに点在する氷柱には亀裂が走ると共に崩れ始めケイトもまた大きく道を外れ転倒した。

それまでずっとケイトを困惑めいた目で見つめていた少女も視線を周囲へと泳がせる。


「何?何が起きたの?」


青い炎を飲み込んだヤミネは氷面へと泥水の様に荒々しくも派手に落ちるが、

すぐに少女の足元へとすぐさま戻り影としての役目に戻った。


そして、少女の影から丸い目と口を露にし淡々と口を開いた。


「ん?まあ、たぶんだが、そいつの罠だろうな」


2回、3回と突き上げられる振動は回数毎に強くなり次第には氷面を亀裂が大きく走った。

その亀裂からは水が溢れ、気付けばセーラ達を中心に半径30メートルはあろうかと思う程の魔方陣が浮き出ていた。


魔方陣には霊語れいごと呼ばれる特殊な文字が刻まれ青く輝きを放つ。


霊語とは精霊や妖精をその主人がいなくとも使役する事ができる、もしくは強制執行させる事ができる言葉の事。


「この魔方陣もそいつ?」


「セーラ・・・だっけか?そいつだ。そいつの聖魂せいこんに何にも魔力残ってなかったからな。

つまり、イレギュラーな死じゃなかったって事だ」


「初めから道連れにする気だったって事?」


「簡単に言えばそうなるな」


「なるほどね」


少女とヤミネが話をしている間も揺れは更に大きくなっていく。

海底地震でも起きているのかと思える程荒波が立ち始め、ケイトとリコ達は別々の流氷にて流されている状態になっていた。



「次から次へと・・・ちくしょーが!」


ケイトの視界にはリコ達が少しずつ離れていく様が映っていた。

しかし、滑る氷面と荒波に脚を地に着けじっと耐えるのに精一杯なケイトは動く事すらままらなくなっていた。



少女は自分の手の中でうな垂れるリコに視線を戻すと同時に地面へゆっくりと下ろした。



「殺さないのか?」


「今は殺らない。だって・・・」


少女は自分の影に蠢くヤミネの言葉に応えつつも流氷の上で這い蹲るケイトへと複雑な視線を向けた。


「あの人がサーガ様にとても良く似ている。その人にあんな顔されたら・・・」


「わかった。わかった。のろけ話はそれ位でいいぞ」


「あのね!別に私は・・・」


ヤミネの言葉に対し恥ずかしそうな表情を見せるも、

すぐに気を引き締めケイトの方へと向き直った。


「もう戻ろ。あまり長居したい気分じゃない」


「そうしたいのはやまやまなんだが・・・」


「ん?どうしたの?」


「ずっと前を見てみ?」


少女がヤミネに言われるがまま視線を辿っていくと、数百メートル前方には荒野と荒波のフィールドが区切られている場所が存在している。


「ん・・・?」


少女は何かに気付いたのか途端に目を細めた。


「あれは・・・結界・・・」


フィールドの区切りには白い幕が薄っすらとだが張られている。


「まあ、簡単には帰してもらえる気はしなかったがな」


「瞬間転送は無理なの?」


「この結界を壊さないと無理だな」


「壊すのは大得意だよ!」


少女は大剣を背中から引き抜くと数百メートル前方の結界へと走り出し、身軽なステップから思い切り結界の膜へ向けて振り下ろした。

結界の幕と赤黒い大剣がぶつかり合い黄色の火花が迸る。


「か・・・たい・・・いいい・・・。腕がぁぁ・・・!?」


少女は苦痛の表情を浮かべたままくるりと一回転して近くに浮いていた流氷へと着地し、

同時に切り込まれた大剣の位置からはその衝撃の波紋が伝わるかの様に結界の膜に変色の波が立った。


「そりゃ・・片腕で思いっきりやりゃ・・・負担大きいわな・・・」


「しょうがないじゃん!腕もげちゃったんだから!」


「しかたないと言うか・・・何と言うか・・・」


「それよりも・・・もう一回よ!」


少女は結界の膜から更に距離を取ると再度助走をつけて大剣を振り下ろした。

しかし、結果は変わらず傷一つ付く気配がない。


「う・・うぅぅ・・・・くはぁ・・・」


少女は腕が痺れたのか結界のすぐ傍にある流氷の上でしゃがみこみ呻き声を上げた。


「片腕とは言え、パルシスの攻撃で傷一つ付かないとか・・・しゃれになんねえな」


「むぅぅ・・・」


ヤミネの言葉にパルシスと言われた少女は唇を尖らせ悔しそうな表情を見せるが、

それも束の間、突然ヤミネに体ごと包まれると強引に後方へぐいっと引っ張られた。


「ひゃ・・・!?」


パルシスの悲鳴と共に先程までしゃがみこんでいた流氷の一部が砕け激しい音と水飛沫が高く上がった。


「今度は何!?」


「・・・下だ!飛べ!」


「もーっ!」


パルシスはいつもらしくないヤミネの言葉に緊張感を覚えつつ高く跳躍し、

視線を下方へ残したまま大剣を構えた。


すると、大きな水飛沫と共に水面下から液状の人型をした何かが飛び出して来たからだ。


「なっ!?」


その者の顔と見られる部分には黒い眼帯が装着され、両腕には氷でできた剣を二刀流の様に構えている。


そのままパルシスに向かってあからさまな殺意を持って切りつけて来る者に対し、

パルシスも驚きはしたものの冷静に剣を交えて対応していく。


水の生き物狙いは殺意通りパルシスの首を重点的に狙ってきていた。

それを読み越したパルシスにさえ鋭い一撃を放つ。


「くっ・・・」


故に水の生き物の初手からによる切り込みを受け止めたパルシスは表情を引き締める結果となった。


(見かけで侮った・・・早い・・・)


両者の戦いは所々に点在する流氷の上を舞台とした跳躍での空中戦となった。


パルシスの焦りという表情から見て取れる明らかな劣勢交戦。

それは剣をぶつけ合う度に表面化していった。


初めの内はお互いに攻守攻防を繰り返していたが、片腕と体力面で不利が来ているのかパルシスの攻撃回数が減った。

減ったと言うよりも自ら避けては移動という場面が増えてきていたのだ。


実際にはそれだけでは無く、強引に剣を交えた際の小さな切り傷はパルシスの集中をも乱していた。


剣と剣がぶつかり合う衝撃でお互いに距離が開いても、間髪いれずに水の生き物はすぐに距離を縮めようと向かっていく。

それに比べパルシスは肩で息をし、踏み込む一歩が明らかに遅くなっているのも見て取れた。


「ちょっとまずい展開だな」


「五月蝿い!」


「あれ出すか?」


「うっさい!黙れ!」


パルシスと水の生き物との戦いは形勢が変わる事も無く続いていく。


「・・・後5分・・・」


「何?」


ヤミネは水の生き物を見つめながら何かを呟いたがそれ以上は何も言わない。

それに対してパルシスも気にはなったものの、目の前の現状がそんな暇を与えてはくれない。


しかし、パルシスはこの時妙な違和感を視界に捕らえていた。

液体化している敵の一部に黒ずんだ染みが広がっている事に。


(・・・ん?)


黒い染みが水の生き物を蝕んでいるかの様にさえ窺える。


パルシスが逃げ水の生き物がその後を追うという状況の中、

突然水の生き物は飛び掛る形で二本の剣を大振りに構えた。


地に足が着いてない状態で改心の一撃を叩き込む技は相手の変化に対応し難い。

つまり、必中条件化のみで使われる技。


にも関わらず水の生き物はそれを行った。



劣勢に立たされていたパルシスは考えるまでもなく真っ直ぐ突っ込んで来る水の生き物の動きを読んではタイミングを合わせ、

ギリギリで真横へ逃げるとカウンターを突っ込む形で薙ぎ払った。


パルシスが放った気合の一振りは完全に水の生き物の胴体を捕らえていた。


しかし、水の生き物は体を自由自在に体を変形させ後方へと窪ませると完全に避けきった。

それだけではなく、人でいう前方をするりと後方へと切り替え顔が後頭部へとすぐさま移動したのだ。


「!?」


パルシスは眼帯がある箇所を前だと完全に思い込んでいた。

液状の体に前も後ろもないのに。


その瞬間にこれが水の生き物による罠だとパルシスの脳裏に警報を響かせるが、

完全に敵の間合いに入ってしまったパルシスにとって蜘蛛の巣に絡み取られた獲物同然と言えた。


自分が危機的瞬間、もしくは死ぬ寸前と言うのは一瞬にして最長の時間をスローモーションの如く脳内へと再生さると共に、

人種の内に眠る生存本能の一種ではないだろうかと常々思うところがある。


そして、水の生き物の間合いに飛び込んでいってしまったパルシスへと双剣が容赦なく振り下ろされると同時に、

戦ってきたお互いにのみわかる決着の時が訪れる。


パルシスは何処を見るわけでもなく少しだけ寂しそうな表情を浮かべた。


しかし、水の生き物がパルシスの体を切り刻む音が響く事は無く、

それと変わって大きな空気振動がこの地域全体を飲み込んだ。


「うっっ・・・・」


耳から脳内へ伝わる振動でパルシスは苦痛の表情を露にした後すっと気を失い、

水の生き物もまた氷剣を落とし体が崩れ落ちていった。


空気振動の影響はそれだけに留まらず結界という閉鎖空間内で反響し暴れた。

その影響はすぐさま結界外へ出ようとするの力となって現れ、負荷に負荷を重なった結界に亀裂が生じ始めた。


そんな空間の中でパルシスは気を失ったまま流氷の上をすべり水面下へと落ちていった。


しばらくして流氷の上部では水滴同士がくっつきあい、水の生き物は元の体を取り戻していく。

そして、元に戻った自分の両手や体を交互に見やった後、結界内を吹き抜ける風の吹く方角へと視線を向けた。


その一方で波に流されるまま水中を漂っていたパルシスを発見したのはケイトだった。

ケイトはすぐさまパルシスを抱き上げ、それに寄り添う大剣にも手を伸ばした。


(お・・・おめぇ・・・・)


大剣を一緒に持っていてはパルシスを浮上させる事ができないと判断したケイトは、

諦めきれないと言った表情で大剣から手を放した。


しかし、大剣は不思議な事にパルシスだけを抱えて浮上し始めたケイトの後を付いてきた。

まるでケイトの持つ魔剣同様に何らかの意思が働いた様に。


ケイトはその光景に不思議を覚えつつもパルシスを抱き上げ水面上へ浮上した。


「おい、しっかりしろ!」


その声に反応する様にパルシスは口から水を少し吐き出すと、

意識を取り戻したのか体を震わせケイトへと身を寄せた。


パルシスの状態と行動に、ケイトは先程まで感じていたこの少女から漂わせる恐怖という気配は微塵も感じられなかった。

むしろ、パルシスの震える体を抱き締めて実感する。やはり(・・・)目の前の少女は守るべき存在ではないのか?と。


「サ・・・サーガ・・・様・・・」


今にも消え入りそうな声を出すパルシスに、ケイトは”もう大丈夫だ”と言わんばかりに少しだけ強く抱きしめ返した。



ケイトは近くに漂う大きな流氷を見つけるとパルシスを抱えたまま泳ぎ移動し、

辿り着くと同時に少女をそこへ仰向けの状態で寝かせた。


パルシスの持っていた大剣もまた少女の隣へと勝手に移動し寄り添う。

まるでパルシスを護る様に。


悪夢にでも魘されているのか時折表情を歪める少女パルシス。

そんな少女をケイトは複雑な思いで見つめた。


目の前の少女が水の里で何をしてきたか。

それは此処まで来たケイト自身分かっていた。


水の里を混乱に陥れ、人々を殺し、あまつさえセーラの命を奪った。


いや、それは断片に過ぎないだけかもしれない。もっと多くの命を・・・。


ケイトはぐっと堪えた様な苦渋の表情で腰に刺した魔剣へと手を伸ばすと力強く掴んだ。

まるで自分の心臓を強く握り締める様に。


次の瞬間ケイトの体は反射的に動いた。まるで精密機械の様に。


上空から落下してきた水の生き物が持つ双剣とケイトの魔剣から溢れ出る魔力のオーラがぶつかり合いスパークすると共に、

お互いに距離を開けたままオーラ同士の激しいせめぎ合いが始まった。


「くっ・・・」


水の生き物は先程までと違い片目赤眼を持ち、水色から泥で濁った様な色に変色していた。

それに加え、パルシスとその前に立ちはだかるケイトに向け殺意を放つ。


「何故護る!?」


水の生き物の声は低く腹の底から搾り出す様に発せられた。

それに加え、さもパルシスを殺して当然とも憎むべきとも取れる言葉を口にする。


そんな相手にケイトは困惑めいた表情をしつつも魔剣を前へと押し出し牽制する。

魔剣もまたケイトの意思を尊重するかの様にオーラを放った。


「護るって何の事だ!」


「そやつはセーラ様を殺した闇の者。生きて返さぬ」


鬩ぎ合いスパークする中、ちらりと映る水の中にいる者の小さな影とその者がつけている眼帯。

それに加えて”セーラ様”と言った口調にケイトは心当たりがあった。


「リュー・・・か?」


「・・・」


ケイトの問い掛けに水の生き物は沈黙を貫きその代わりとばかりにオーラを更に強めていく。

ケイトもまた負けまいと魔剣を持つ手に力を籠めるが、それでもじりじりと押し戻されていった。


「くっ・・・もう・・・これ以上は持たない・・・」


ケイトがそう言葉を漏らした瞬間に魔剣セルシアスは手の中で砕け、

それと同時に力尽きたと言わんばかりにケイトはその場へ倒れこんだ。


(くっそ・・・俺は未だリコの言葉すらまもれねえのか・・・よ・・)


流氷の上で悔しそうな表情を見せるケイトは、

この場へ来る少し前の事を思い返していた。


ケイトはセーラの横で倒れこむ幼きリコの背中を優しく起こし安否を確認していた。


「リコ!しっかりしろ!」


「ケンタ・・・早くあの子を助けて・・・。絶対に死なせちゃだめ」


「何故?」


「セーラ様は私に”助けて”って言った・・・たぶんあの子の事・・・」


「そうか・・・。わかった。少し此処で休んでろ。死ぬんじゃねえぞ!」


ケイトはすぐにパルシスの後を追った。

追いながらセーラの残した言葉を自分なりにすぐ解釈する事ができた。


”そうあの時言葉にする事ができなかった言葉”


確かにセーラの口元だけ見れば”助けて”と確認する事ができる。

それと同時に、あの少女の事だったと理解する事ができた。


それでも現実はケイトが倒れ、水の生き物であるリューが立っている。


ケイトが倒れるのを見るや否やリューもまた流氷の上へと降り立ち、

ゆっくりと少女の方へと歩き始める。


倒れているケイトは悔しさを噛み締めながら、幽霊の様に透けていく自分の体を見つめた。


(もう声もでない・・・ちくしょー!)


そんなケイトの横をリューが通り過ぎようとした時、ドロドロという音と共に氷面へ黒い泥水が散乱した。


何が起きたのかわからない状況の中でケイトは突然脳内へ響くリューの声を聞いた。


(闇は所詮闇・・・。どんだけ足掻こうとも闇は誰も救えない。

それに・・・闇にとって月は邪魔な存在・・・)


ケイトはその声が言った”闇”という部分が出る度に、胸の鼓動が高鳴った。

まるで自分がその闇だと言わんばかりに。


それでもケイトは最後の力を振り絞りパルシスへとにじり寄ると無事を確認すると共に、

泥水に塗れて落ちていたリューの眼帯を見つけた。


(やっぱりリューか・・・)


薄れ行く意識の中でケイトは誰かに呼びかけらていた。

それが誰だったのか思い出す事が出来ず、ケイトはそのまま眠るように意識を失った。



―――― 時は現世へ戻る ――――



「はっ!?・・・ハァハァ・・・・」


ケイトは呼吸を乱しながら目を覚ました。


「こ・・・此処は・・・」


周囲を見渡せば此処がネバルゲ村だと言うことがすぐに把握する事ができる。


すぐ右を見れば村の出入り口があり、門兵らしき人達が立っている。

左を見れば聖騎士団と村の人が使用している馬小屋。


「・・・」


現世へ戻って来れたにも関わらずケイトの表情は冴えなかった。

それは当然と言えば当然。


あの後、結局どうなったのか全くわからないからだ。


リコとセーラ、それに謎の少女。

水の里の人達、そして自分の父であるグリム。


考えてもしょうがないのはケイト自身わかっていた。

それでも、傷付き倒れていった人々の顔がケイトの思考を妨げる。


そんな時、ケイトは突然何かに殴られた。いや、正確には蹴り飛ばされたと言うかもしれない。


「痛って・・・」


ケイトはジンジン痛む頬を押さえながら、自分を蹴り飛ばした者へと目を向けた。


「セリス・・・」


そこには木に括り付けられたリコの愛馬セリスがいた。


(・・・そうだ・・・俺は・・・行かなくちゃ!リコの元へ!)


此処へ来る前の記憶を取り戻したケイトは心の中でセリスへ感謝すると共に、立ち上がりネバルゲ村の中へと走り出した。


(体が重い・・・重いんじゃない・・・元に戻ってるんだ・・・。やっぱり夢か)


先程まで見ていた夢が何だったのかケイトにはわからない。

それでも確実に得たものがケイトにはあり、それを実行せずにはいられない自分自身がそこにいた。

読んでいただきありがとうございます。

大変分かりづらい場所があるかもしれません。

でも未熟でごめん><


では次回でまた会いましょう!

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