闇の力①
2月10日に間に合ってしまいました(;´Д`)
ですが、29章は短いです。区切りが悪くて申し訳ないです。
一方でリコに頼まれたものを探すケイトは、白い布数枚と水が入った桶をもったまま立ち往生していた。
「避難したのか?・・・人っ子一人見あたらねえ・・・。
まあいいか、えっと・・・。後は薬草か・・・。薬草・・薬草・・・そういえば、
確か・・・リコの家で栽培してたよな。今も栽培しててくれればいいんだが・・・」
すぐにリコの家へ走ったケイトは庭で育っている沢山の草類を見つけた。
「あった。えっと・・・どれが薬草だ・・・こんな沢山じゃわからねえ・・・。
しょうがない、適当に持っていくか」
数種類の草花を摘んだケイトはすぐにリコと少年のいる場所へと引き返した。
すると、薄っすらと青い光に包まれているリコと横たわる少年を目撃する。
「たぶん・・・貴方がこんな仕打ちを受けたのは闇の精霊が貴方を守護してるから・・・。
それに、他所の場所から貴方は来たのでしょう?」
「・・・」
リコの言葉に、当然だが気絶している少年は応答しない。
そんなリコ達の背後へ、言われた通りの物資を集め息を切らしたケイトが立っていた。
「そいつは無事か?」
「大丈夫。助かる。生命力は少しずつ回復してるから。
それより、薬草と水ある?」
「おう。此処にあるぜ。俺に手伝える事あるか?」
「うん。布を水で濡らして体中にある切り傷の周りを綺麗にして。
頭も怪我してるからよく拭いてね」
「はいよ」
リコはケイトが持ってきた草花の中から薬として使えそうなものを選別していく。
「俺が持ってきた物、それで良かったか?薬草の類はちょっとわからなくてな」
「大丈夫。全部使える。知識がないのに良くこれだけの物を持ってきたって関心するくらいよ」
「そ、そうか・・・」
(まあ、リコの家で栽培してる類はリコ自身から五月蝿い程聞かされていたからな・・・)
リコは慣れた手つきで周囲に落ちていた石を綺麗に洗い、
それを使って磨り潰した薬草を布で絞り液体化した薬草の成分を少年の傷口へと塗っていく。
そんなリコにケイトは話しかける。
「この少年の痣・・・」
「私は何も見ていない。貴方も何も見ていない。
この痣をつけたのは恐らく里の人達でしょうね。だからと言って里の人達を悪く言う事はできない。
この少年を庇う事もできない」
「・・・」
「でもね、もし、次に私がこの子と出会った時、本当の言葉を私に投げかけてくれたのなら、
それに全力で応えようと思う」
この時俯いたリコがどんな表情をしていたかケイトからは見えない。
だが、握り締めた拳と一瞬だが震えた体を見て想像は容易にできた。
「・・・そうだな・・・それが一番良いだろうな」
薬草をつけ終わり顔を上げた頃には、既にいつものリコに戻っていた。
「よし、これで終わりっと。ケンタ、この子をおぶって。すぐ移動するよ」
「了解」
リコと少年を背負ったケイトは逃げ遅れた人が他にいないか、
里の西側にある家々を散策してながら移動した。
「さすがにもういないかもな。それに、この子をずっと背負ってるわけにもいかんだろ」
「それもそうね。一回里の中央に行きましょ。たぶん、まだ守護人達か衛女隊の人達がいるはずだし」
「わかった」
ケイト達一向は周囲を警戒しながら中央へ向かって走っていく。
「かなりの家が壊されてるな。燃えてる家も多々あるし」
「うん。絶対許さない。それより・・・」
「それより?」
「ううん。何でもない」
この時リコは魔物を守るかの様に覆った謎の黒い煙について考えていた。
そこへ突然、リコの名前を呼びながら頭にバンダナを巻いた男性が走ってきた。
「リコ様!ご無事ですか!?」
「ショウ。私は大丈夫。それより避難の様子はどうなってる?」
「もうほとんどの人は避難しましたぜ。後はリコ様と・・・、そちらの方はどなたで?」
ショウと呼ばれた30台と思しき男性は突然ケイトに話を振った。
「俺はケ・・・ンタと言います。よろしくお願いします」
「こちらこそよろしく。俺は守護人をやってるショウってもんだ。
ところで・・あんた、この里の者じゃないな?」
ショウは水巫女の卵であるリコと見知らぬ人物のケイトが一緒にいる事に対して、
何処か疑う様にじっとケイトを見つめる。
それに対し、ケイトはどう応えるべきか目を右往左往させた。
「ど・・・どうだったかな・・・」
「そんな事より!私を探しに来た理由があるんでしょ?」
ケイトがこの時代の者ではない事を知ってか知らずか、困惑するケイトを助けるかの様にリコがショウへと口を挟む。
「そうなんす!そうなんす!ユン婆様がリコ様を探してますぜ?」
「ユン婆が?何処にいるの?」
「北の森の美鈴湖ですぜ。他の皆もそこにいます」
「急いで行って20分・・・時間がないのに・・・もー!わかったわ!行く!
守護人達にもすぐ北の森へ移動するように伝えなさい。
それと守護長見かけたらすぐに私の元へ来るように伝えて」
「了解でさ!」
ショウは軽く敬礼のポーズを決めるとすぐに東の方へ駆けていった。
「それじゃ私達も移動しましょ。ついてきて」
「ちょ、まてまて、北の森いくなら北だろ?
何で西に戻るんだ?」
「気付かない?魔物がさっきから見当たらない」
「た・・確かに・・一体何処行ったんだ・・・」
ケイトは魔物の姿を探すように周辺を警戒するが、それをリコが袖口を掴んで止めた。
「ケンタ、周りをあまり意識しないで。私達は誰かに監視されてる」
「え・・」
「だからこのまま西の森へ入って監視を潜り抜ける。それから北へ向かうわよ」
「まじかよ・・・気付かなかった・・・」
気付かれまいと意識しながらじっと周りを見るケイトの表情は逆に不自然極まりなく、
リコは自分より背の高いケイトの頬を軽くつねった。
「いててて・・・。何すんだよ」
「もう行くよ!ほらほら!」
リコに言われるままその背を追って走るケイトは妙な寒気を覚えた。
「なんか肌寒くないか?」
「うん。私もそれはさっきから感じてた。たぶん・・・これはセーラ様の魔法による余波だわ」
「余波って・・・まじかよ・・・」
「たぶん現地は極寒の地ね。でも・・・それがセーラ様の生きてる証・・・」
「・・・ああ。そうだな・・・」
リコがこの時一瞬見せた辛そうな表情にケイトの胸は強く鼓動するが何も言葉が出ず、
一同は西の森へと走っていく。
「ねえ、ケンタ」
「・・・・」
「ちょっと聞いてる?」
「あ、ああ。悪い。どうした?」
(偽名は呼ばれ慣れないな・・・)
「この里にもし人がいないとして、魔物が狙うものって何だと思う?」
「うーん・・・やっぱり穢れた宝玉の欠片じゃないか?確か魔物は穢れた宝玉の欠片を食うとかなり強化されるって聞いた事があるし」
「やっぱり・・・、貴方・・・何者?」
「何者って?どういう事だ?」
「その事は守護人と巫女しか知らない事。さっきの様子だと貴方は守護人ではないし、巫女と縁ある人と思えない。
ケンタと出合ったのは今さっきの事だし。名前も偽名?」
「はめやがったな・・・」
「どうなの?」
「・・・今は何も言えん・・・」
「そう、わかったわ」
(あれ、割とあっさり引き下がったな・・・まあ、いいか)
リコとケイト、お互い腑に落ちない点を抱えながらも北の森にある美鈴湖を目指す。
読んでいただきありがとうございます。
30章は長いです。アップ予定は明日か明後日です。よろしくお願いします。