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リコの戒め

こんばんわ!

大分更新遅れてますね!

ですが!負けません!

今回はちょっと長いですね。

今月は最後の更新になりますんで!よろしくおねがいします!

ではメイアスの世界へどうぞ!

時はフィレーネ達がネバルゲ村に戻った時まで遡る。


リコ達が村入り口にて聖騎士団員達と合流した頃、聖騎士団の第一宿舎で眠っていたレアラは外の騒がしさに目を覚ました。

「うぅ・・・はむはむ・・」

レアラはゆっくりと頭を机から起こし半開きの眼で辺りを見回した。

「此処って・・・」

目を瞑り自分の記憶を辿るように考え込み始めたレアラは、思い出すように声を出した。

「ああ!フィレーネに呼ばれたんじゃった!でも・・・」

レアラは再度辺りを見回すが人っ子一人いない事に不満そうな表情を見せた。

「童を呼びつけるだけ呼びつけて無視じゃと!?昨日はあれだけ童を貶めおったくせに!

むかつくやつじゃ!」

部屋で一人不満を言葉にするレアラはふと机の上に置かれた一枚の紙を見つけた。

「ん?なんじゃこれ・・・」

二つ折りにされた紙はレアラに対する置手紙の様に感じられ、疑う事なくレアラは紙を開いた。


「何々・・・『レアラ様へ。朝までに自分のすべき事を決め、自分で判断してください。

聖騎士団と一緒に行動するか、それとも・・・』・・・ってもう朝ではないか!

手紙を置くなら置くと一言言うべきじゃないのか!そうであろう!」

レアラは読み終えると同時に机へ手紙を叩きつけ偉そうに指差し文句を言った。


「・・・・。」

指差したまま反応するはずもない手紙を見つめ、

今度は宿舎から明るくなり始めた外を見て慌てた。


「手紙と喧嘩をしている場合ではない!と・・・とりあえず此処をでるべきじゃな!

手紙から推測するにフィレーネが置いたとは思えんしの・・・」


レアラが慌てた様子で宿舎のドアを開けるとそこにはフィレーネが立っていた。

口に手を当て罰が悪そうな表情を見せるレアラはその場を右往左往し、

隠れる充てもない部屋を見渡した。


立ったまま何もいわないフィレーネを前にレアラは開き直った。


「お・・・おはよう。今日も良い天気・・・って・・おわ!?」


突如としてフィレーネはレアラに向かって倒れこみレアラは慌てふためいた。

良く見ればフィレーネは目が半分程しか開いておらず、抱き留めたレアラの手には血がついていた。


「え!?お・・・おい!大丈夫か!?」

「大丈夫です。あまり大きな声を出さないでもらえますか?」


いつものフィレーネが熱い女と例えるならば、この時は冷たい水と言っても過言ではなかった。

逆にこのギャップがフィレーネの受けたダメージの大きさを物語っていた。


「と・・・とりあえず中に入るんじゃ」


レアラはフィレーネの片腕を掴み、部屋の中で横になれる場所を探す。

部屋には寝れるような場所はなく、棚の上に毛布が数枚置かれていた。


「ちょ・・ちょっと待っておれ!今横になれる場所を作る!」


そう言うとレアラは机やイスを片っ端から隅に避け床に毛布を広げた。


再度フィレーネの腕を取りそこに俯けになる様に寝かせると、

背中に包帯が巻かれ薬草が塗られていた痕跡があった。


「本当に大丈夫か?!背中から血が滲みでておるぞ?!」

「大丈夫・・・。しばらく横になってれば治ります・・・」

「そ・・そうか・・」


フィレーネは大事にしたくないのか、レアラに表情を見られないよう顔を反対に向けた。

レアラはそんなフィレーネをほっとけず杖を使って神獣ラリムを召喚し回復を命じた。


「と・・・とりあえず・・・これで大丈夫じゃな・・・。たぶん・・・」

「レアラ様ありがとうございます」


「わああ!?って・・・えっと・・誰じゃったっけ・・・」

「ソフィアですわ。レアラ様」


ソフィアはいつの間にかレアラの背後に立っていた。


「びっくりするであろう!部屋に入る時はノックくらいせんか!」

「しましたわ。あまりにも真剣にフィレーネ様の看護をしてくださっていたので気付かなかったんですわ」


「童はそんな事・・・」


レアラは照れた様子で自分の手と手をもじもじさせ、ソフィアはその様子を笑顔で見つめた。

その後でソフィアはフィレーネの元へ行き床へ膝を突くとラリムと一緒に看病に入った。


「譲ちゃん何もじもじしてるんだ?トイレならあっちだぞ?」


デリカシーの欠片もない唐突な言葉にレアラは顔を真っ赤にさせたまま言葉の主の方へ顔をむけた。

そこにはいつの間にかイスに座ったギルダがいた。


「トイレじゃないわ!そなたにはデリカシーの欠片もないのか!?」

「そもそも譲ちゃんにデリカシーなんて気遣う必要あるのか?」

「ギルダは童を何だと思うておる!?女性に対する態度を改めんか!?」


「お二人とも静かに!喧嘩なら外でやってくれますか?フィレーネ様の怪我に差し支えますの。」


普段あまり感情を表に出さないソフィアにレアラとギルダは目を丸くした。


「す・・すまぬ・・・。ほ・・ほれ、ギルダも謝らんか」


「俺は大声だしてねえし。悪いのはお前だけだ」


見下したようなギルダの言葉にレアラは悔しそうな表情を見せるが、ギルダは既にレアラを無視するかの様にソフィアへ目を向けていた。


「フィレーネの様子はどうだ?」

「正直言って重症ですわ。でも、そうせざるを得なかった。ですわよね?」


「ああ」


ギルダは穏やかな口調で話すソフィアの背中をじっと見つめた。


「これをやったのはギル・・・むぐむぐ・・・」


何か言おうとしたレアラの口をギルダは手の平で封じ込めた。


「無粋な事いうんじゃねえよ。これだからチビっ子は」


ギルダは自分の手の中で暴れるレアラを他所に部屋の壁にかけられた時計を見やった。


「そろそろだな。さて、行くか」

「何処へ行くんですの?」

「ちょっとしたイベントさ。それにいつまでも牢行きの人間が此処にいちゃまずいだろ?」


「皆ギルダが悪くない事くらい分かってますわ」


「ったく、芝居甲斐のない連中だぜ」


「それだけ信用が厚いって事ですわ。」


笑みを浮かべるソフィアに対してギルダは溜息をつき重い腰を上げるように立ち上がった。


「この譲ちゃん借りてっていいか?」

「無傷で返してくださいね」


ギルダはソフィアに向かって左手を挙げ了承のサインを出すと、右手に収まるレアラを引きずりながらドアへと歩を進めた。


「はがせぇ〜〜!童をむぁ・・・・」

「ちったぁ静かにしろ」


ギルダは反射的とはいえレアラの頭を軽く殴ると宿舎内が静かになった。

良く見ればレアラはギルダの手の中で気絶し、ラリムはギルダへと威嚇する体勢を取った。


「おい、おい、伸びるの早いぞ〜?譲ちゃ〜ん?」


ギルダは弱弱しい声でレアラを気遣うが起きる様子もなく、

同時に背後から冷ややかな視線に気付きゆっくり振り向くと目を細めたソフィアが自分を見ていた。


「こ・・・これはだな・・・ははは・・・・。あばよ!」


反射的とはいえ拳を出してしまった事に罪悪感があるのか、ギルダは気絶したレアラを抱きかかえて飛び出していった。

それを追いかける様にラリムも飛び出し、ソフィアは静かになった宿舎で溜息をつく。


「ギルダには困ったもんですわ。レアラ様は皇女だというのに・・・」

「ギルダは首にしておけ」


眠っていたと思っていたフィレーネの言葉にソフィアはすぐに体を元に戻す。


「五月蝿かったですか?申し訳ありません」

「いや、元々起きていた。それよりも、ソフィアには面倒をかける。すまなかったな」


「いえ。私はフィレーネ様が生きてさえいてくれればよろしいのですわ。

それと、ジェネス様が託したかった物はこの指輪だけではないと思いますの。

次の聖騎士団総隊長がフィレーネ様じゃなかったとしても、ジェネス様の意思と思いは託されたと私は思っておりますわ」


「意思と思いか・・・。荷が重いな」


フィレーネは微かに笑みを浮かべ、ソフィアはタオルを濡らす。


「それは今じゃなくてよろしいですわ。時が来ればいずれ」


「そうか」


横になるフィレーネの背中についた血を優しく拭いながらソフィアは優しい眼差しで見つめた。




一方飛び出して行ったギルダはレアラを抱きかかえ足首には噛み付いたラリムを連れながら、

民家の屋根伝いをジャンプで移動していた。


「この犬なんなんだ。足を離せ!」


ギルダは右足を振るが一向に離れる様子がなく、ふとレアラの顔を見た。

「譲ちゃんの神獣か?おーい、起きろ。つーか起きてくれ!」

ギルダがレアラの頬を叩こうと手を出した瞬間、レアラに手を噛み付かれた。


「いてええええええええええ!何すんだ!」

「それは童の台詞じゃ!いきなりブツとは何事じゃ!」

「ブツって?何が?」

「さっき童を殴ったであろう!此処にコブができたわ!」


レアラは自分の頭の一部を指差すとギルダを睨みつけた。


「あ、あああ!さっきのな。過去の事をネチネチと執念深い女だな。嫌われるぞ?」

「そちが言うな!」


レアラの大きな怒声にギルダは顔を歪めた。


「悪かったよ。とにかくこの犬をどうにかしてくれ!さっきからずっと・・・」

「良い気味じゃ!天罰と言う奴・・・痛っ!?」


ギルダは反射的に手の平でレアラの頭を軽く叩いてしまった。


「良いからこの犬けせ」

「また打ちおったな!?」


レアラとギルダの口喧嘩は荒野の裏手に着くまで行われたことは言うまでもなかった。






時はリコとケイトが別れた時間まで遡る。


リコは自分達に与えられた民家の壁に寄りかかって座り、ルーリは俯いたままのリコを心配そうな表情で見つめていた。


「リコ様、どうしてそこまでケイト様のお気持ちを拒絶なさるのですか?

ケイト様はリコ様の身を案じていられます。

それにこの先、またあの青年が立ちはだかったら・・・」


「私の前に立ちはだかる者は何であろうと容赦しないわ。

それに次は負けない」


「でも・・・リコ様の今の力では・・・」


「後ろ向きな考えはやめて!」


リコの怒鳴り声にルーリは驚き体を震わせた。


「私はどんな事をしてでも力を取り戻すわ。それじゃなきゃ・・・守れないもの・・・」


怒っていながら辛そうな表情を見せるリコの手元にルーリはふと目が行った。

(宝玉の欠片!?)


「リコ様・・・宝玉の欠片を使うのですか・・・?」

「ルーリはケイトの味方なのでしょう?私は私を信じてくれる者の力を借りる」

「違うのです!私はリコ様の」


リコはルーリの言葉を遮る様に立ち上がると、意を決した目で遠くを見た。


「ケイトが強くなろうと関係ない。私は・・・負けられないのよ」


ルーリが体を震わせ何かを言おうとしていたのにも気付かずリコは民家を出て行った。


静かになった民家でルーリは息をゆっくり吐いた。

「・・・私最低です・・・。

一瞬でもリコ様を怖いと思った私は最低です!

飛びついてでも一緒に行かなかった私は最低です!

も〜〜〜考える前に動け私!」


ルーリは震える自分の足をペチペチと叩くとリコの後を追って飛び出した。

その顔つきは、普段のルーリと違い決意を固めた者の顔だった。





ケイトはリコ達と別れた後、拗ねた表情で村の中を彷徨っていた。


「何でこうなっちまうんだよ・・・。俺はリコを守りたいだけだ。

それ以上でもそれ以下でもない・・・。ただそれだけなのに・・・」


ボヤキながら歩いていたケイトは誰かの視線に気付き顔を上げた。


「セリス・・・」


ケイトはいつの間にか村入り口の木に括り付けられたセリスの場所まで歩いていた。


「なあ、セリスよ。お前の主人であるリコの考えている事を教えてくれよ。

お前の方が付き合い長いだろ?」


セリスは当たり前だが嘶くだけで返答してはくれない。


「馬に語りかけるなんてどうかしてるな・・・俺」


それだけ言うと、ケイトはセリスが括り付けられた木に座り寄りかかった。

「まだ時間はあるよな。少しだけ休むか」

ケイトは疲れていたのか、軽く目を瞑るつもりが夢の中へいざなわれていった。





ケイトは目を覚ますと何処かで見たような傾斜に寝っころがっていた。

周りを見渡せば木造の家が多く4人程で住むのに丁度良さそうな家が立ち並ぶ。

そして、里全体を囲むように鬱蒼とした森。


(此処って・・・水の里か?何で里に戻ってるんだ・・・?)


気持ちを切り替えるように散策しようと起き上がると妙に体が軽かった。


(な・・なんだ!?俺死んだんじゃねえよな!?

ま・・・まあいいや、とりあえず様子見てみるか)


ケイトは見知った自分の里を歩き出す。

すると、自分に向かって一人の老人が歩いてきた。


(あれは・・・スー婆だ!おーい!スー婆!)


ケイトはスー婆に向かって走りだした瞬間違和感に気付き足を止めた。


(・・・・・。いや、スー婆が生きてるはずがねえ・・・。スー婆はあの時死んだはずだ・・・。

じゃあ目の前で歩いてくるのは何だ・・・)


スー婆はゆっくりと自分に向かって来た。だが、近づいてくるにつれて気付いた事があった。


(スー婆は俺を見ていない・・・。俺が見えていない?)


ケイトは違和感を覚えつつも、歩いてくるスー婆に対して確かめるように手を伸ばした。

その手は空を切り体中に寒気を覚えた。


(おいおい・・・一体これは何だ・・・?夢にしては現実味がありすぎるぞ・・・。現実味があるのに物体自体には温かみがない)


突然目を瞑り何かを感じる様に両手を上げた。


(やっぱり・・・。太陽の温かみも感じない・・・。夢と言うか思い出か?

いや・・・、思い出だと自分が過去に経験した事を振り返る物のはず・・・。

一体何なんだぁあああああ!)


頭を抱え途方にくれるケイトの周りを、あたかもそこに存在していないかのように里の人達が通っていく。


(頭がおかしくなりそうだ・・・。夢なら覚めてくれよ・・・)


しばらくその場に座り込み、里で生活する人達を観察した。


(間違いない。此処は過去だ。あの事件で亡くなったはずの人が生きてる。

それにしたって、何故俺は此処へ・・・。)


考えても答えが出る事もなく時だけが過ぎていく。


(少し里を散策してみるか。っていうか、過去の俺もどっかにいるはずだよな・・・。あんまり思い出したくねぇ・・・)


ケイトはとりあえず重い腰を上げ、里を回ってみる事にした。

(太陽の傾きからして、朝の9時位か。)

多くの老若女性が桶を持ち、森にある川へ水汲みに行く姿をケイトは見つめた。


(まあいいや、とりあえず里長の家にでも言ってみるか)


ケイトは自分の事に全く気付く様子がない里の人々とは反対に、人々の顔ぶれを見ながらゆっくりとした傾斜を昇っていく。


(ほんとに誰一人俺を認識しちゃいねえ・・・。完全に空気だな)


里の最奥にある里長の家の前に着くと代わり映えしない家を見上げた。


(此処は変わってないな。とりあえず入ってみるか。)


ドアノブを握ろうとした瞬間ケイトは手を止める。


(っていうか、人を通り抜けたんだから物体も通り抜ける事できるのか?


・・・・。此処は勇気を持って・・・!)


ケイトはドアに向かって一歩を踏み出した。途端に扉が開きケイトは頭を強打した。

頭を抱えながら呻き声を上げるケイトは地面に転がった。


(いってえええええええ!)


「あら・・・。何かしら・・・。・・・?」

ドアから顔を出すお婆さんは辺りを確認するがケイトに気付く気配はなく、

家の中へ顔を戻すとリコと自分を交互に見つめる里長に目を向けた。

「お爺さん、それじゃ水汲みに行ってきますね。サーニャ様の事よろしくお願いしますよ?」

「はいよ。そっちも気をつけてな」


里長はお婆さんとの話が終わると腰を曲げリコに視線を合わせた。


「リコ様、お婆さんの事よろしく頼みますぞ?」

「大丈夫よ!もう子供じゃないのよ?立派な巫女なんだから!見習いだけど」


お爺さんは白と赤が入り混じったスカート姿の巫女服を着たリコに笑顔を向けた。


「お爺ちゃんこそサーニャの事ちゃんと見ててよ?まだ小さいんだから。

お母さんから頼まれてるんだからね!」


「はいはい。わかってますとも」


自分の母親から幼いサーニャの事を頼まれたのが嬉しいのかリコは張り切っていた。

そんなリコをにこやかに見つめる里長とお婆さん。


そこへ幼いサーニャが指を銜えて不思議そうな表情で歩いてきた。


「何処かへ行くの?」

「水を汲みに行ってくるのよ。大人しくお留守番できるよね?」


リコはしゃがみ、愛らしいサーニャの頭に手を置き笑顔で応えるとサーニャは小さく頷いた。

その姿に釣られリコも笑顔で頷く。


そんなやりとりが行われているドアを挟んだ外側ではケイトが痛みと格闘していた。


(痛ってぇ・・・。物体はだめなのかよ・・・。つまり俺はそこら辺に落ちてる石と同類か?

ってそんな事はどうでもいいんだ。今、中から『リコ』とか『サーニャ』とか言わなかったか?)


ケイトは地面を這いながらドアを覗き込む様にゆっくりと首を伸ばす。

しかし、今度はさっきよりも強くドアが開いた。

ドアは再度ケイトの頭にヒットし物がぶつかる音が外に響く。


「ん?」


リコはドアから顔を出し外を確かめるが誰もいない。(いるにはいるのだがリコには見えていない)


「なんか当たった気がしたけど・・・・。まあいっか。お婆ちゃん行こ行こ!」

「はいはい」


リコはお婆さんの手を取ると、家の中にいるサーニャと里長に手を振り家を出て行った。


ドアの外ではケイトがのた打ち回っているが誰も気付く事はなく閉められる。


(くっそ・・・・。誰からも見てもらえないのが此処までつらいものだとは・・。

とりあえず、どうするか。どうするって言ってもどうしようもないよな・・・。

これだけは分かった。小さい時のリコはやっぱり可愛かった!)


ケイトはしばらくリコの可愛さに酔っていたが、時間が冷静さを取り戻させた。


(いかんいかん・・・。とりあえず・・・!そうだ!こんな時こそユン婆だ!

いざと言う時のユン婆だからな。リコとサーニャが気になるけど、今はそれ所じゃないな。

現状を理解した今・・・。次なる手は理解者だな)


ケイトは痛む頭を押さえながらユン婆の家を目指す事にした。


ケイトは自分の住む里とは思えない程辺りを見渡しながら歩く。


(やっぱり今の里とは大分違うな・・・。民家が多い。って事はもしかして・・・!)


何か思い当たったのかケイトは急に方角を変え里の中央目指して走り出した。


(この里があの事件よりも前なら・・・あるはず・・・。あった!)


ケイトは木造でできた大きな社を見つけ、

裏手から表へ回り込むと大きな赤い木が何本も立ち並び何処か儀式めいた古い社が建っていた。


社を護るかの様に立ち並ぶ赤く塗られたいくつもの大木を何処か懐かしそうに手で触れるケイト。


(懐かしいな・・・。俺はいつも此処へお参りに来てたっけ)


ケイトは赤い大木の間を通り抜け20段程ある階段を登り社本堂の正面に立つ。


この社は水巫女が里の人々や里に訪れた人達と交流を持つ唯一の場であり、

沢山の儀式を行う場所でもある。ケイトも此処に良く訪れていた。


(水巫女・・・ってこの当時はまだリコの母さんか)


懐かしそうに社を見渡していると懐が青く輝きを放った。


(な・・・なんだ!?)


ケイトは自分の懐を恐々覗くと魔剣が光を放ち、同時に先程まで無風だったにも関わらず自分を囲む様に風が吹き荒れる。

辺りを気にしながらも取り出した魔剣を見つめていると、社に備え付けられた祭壇の更に奥から同じような光が呼応するかの様に点滅していた。


気になったケイトは呼応する光の方へ歩みだすが、閉ざされた扉が行く手を阻んだ。


(まあ、そうだろうな。此処から先は巫女しか入れんし。どうしようもねえ。

中に巫女がいればなんとかなるかもしれないけど、いる気配もなさそうだしな)


考え込んでいると次第に光は収まり、何事も無かったかのように場は静けさを取り戻す。


(一体何だったんだ・・・。ってやべえ!)


気付けばケイトは巫女しか踏み入ってはいけない社の廊下まで上がっており、

すぐさま廊下を降り辺りを見回した。


(だ・・・誰にも見られてないな・・・。

いや・・・見えないのか・・・。まあいいや、とりあえずユン婆の所に行くか。

この魔剣についても聞けるかもしれないし。)


手の中に納まる刃のない魔剣をじっと見つめ再びユン婆の家に向かってケイトは歩き出した。




ケイトが立ち去ってすぐの事、みすぼらしい服装をした幼い男の子が一人、社の前にある階段を登ってきた。

男の子は俯いた表情で社前にある祭壇の前に立つと両手を合わせ目を瞑る。


「巫女様、どうして僕には友達ができないんですか?僕は友達がほしいです。

どうして、皆僕を苛めるんですか?僕が何かしたんですか?」


幼き子の言葉に対し返答はない。


男の子は唇を強く噛み締め、目を開けると同時に小さな声で悪態をつく。


「巫女なんか・・・死んでしまえ・・・」


そのまま人目を避けるように走っていく男の子の背中は、今にも何かの重圧から潰されそうな程小さかった。




村の西にあるユン婆の家の前に到着したケイトは改めて実感する。


(うわぁ・・・入りたくねえ・・・)


ユン婆の家は森そのものと言っても過言ではない程囲まれているのだ。

逆に囲まれているという方が失礼かもしれない。

”木”が家なのだ。


(小さい頃にリコと来た事あったけど、怖くて中まで入らなかったからな・・・。

リコは来た事あったみたいだけど。まあ・・・行くしかないか)


ケイトはユン婆の家の周りを歩き回るが入り口が見当たらない。


(何だこの家!?入る場所ねえ!?)


驚きと謎に包まれたまま突っ立っていると、僅かだが中を覗ける様な隙間があった。


(む?・・・覗きは趣味じゃないが・・・とりあえず様子を・・・)


ケイトは木々の隙間を覗き込み中をじっとみつめた。

周りから見れば確実に変質者なのだが、今のケイトは人々から見えないので特に問題はない。


(あれは・・・セーラ様?!どうして此処に・・・)


セーラは金髪の髪を持ち、優しい表情をした二十歳前後の女性だった。

しかし、目の前にいるセーラは何処か緊迫した表情を見せていた。


ケイトは隙間から得られる情報の限界が見えたのか、家の壁に寄り添うように座り物思いにふけった。


(セーラ様が生きてる・・・)


呆然と遠くを見つめているとケイトの頭を軽く何かが突っつく。

見上げれば小枝を握り締めた小さな妖精が頭上に浮いていた。


(何だお前?)


(何だお前とは失礼でちゅね!此処は主ちゃまの家でありまちゅよ!

用が無ければとっとと消えるでちゅ!)


(主?・・・ユン婆の事か?)


(ユ・・・ユン婆!?主ちゃまをユン婆!?

ユン婆と呼んで良いのはリコしゃまとサーシャしゃまとセーラしゃまとアーシャしゃまだけでちゅ!

無礼千万!とっとと消えるでちゅ!)


妖精はケイトの頭を小枝で容赦なく突っついてきた。


(や・・やめろって。俺は用があってきたんだよ)


ケイトはしつこい妖精を追い払う為、不意に懐に仕舞っていた魔剣を取り出した。

魔剣は何かと反応するように光を放つがすぐに光は収まった。


(な・・・え〜〜〜〜〜〜!?)


妖精は大声を上げると共に体を震わせ地面へと緩やかに落下した。


(い・・・命だけはお・・・おたしゅけ・・・くだちゃい・・・。

二度と・・・さからいまちぇん・・・)


体を震わせ正座をしたまま動かない妖精にケイトは困惑したまま剣を懐へ戻す。


(えっと・・・)

「ほれ、何をやっておる。お前達中へ入らんか」


ケイトは不意に背後から声をかけられ、振り向けばユン婆ことユンミレシアータが立っていた。

(お前・・・達?まさか・・・ユン婆俺の声聞こえるのか?!)

「何を言っておる。当たり前じゃ。私を何だと思うておる。チータもいつまで怯えておる。ほら、いくぞぃ」


(は・・はいぃ!)

チータと呼ばれた緑色の髪をした妖精は慌てた様子で、壁をすり抜け家の中へ入って行った。

その様子に見とれていたケイトを家の中へ入るよう促すと、ユン婆は壁をすり抜ける様に中へ入って行った。


(ちょ!?えー!?)


ケイトが驚愕の声をあげながらユン婆の消えた壁に歩み寄ると、木々が招き入れるかの様に左右へ二つに避けていた。


(此処から入ったのか・・・。ユン婆まですり抜けたかと思ったぜ・・・。

にしても・・・さっきはこんな場所なかったよな・・・)


ケイトは誘われるがままに恐る恐る中を覗きこむが、中は外からの光を完全に遮断されているのか真っ暗だった。














































次回25章で会いましょう!

先はまだまだながいですぞ!

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