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言葉の真意

更新おそくなりました!

久々に書けた気がしました。

やっと世に出せた21章(*´ω`*)

では本編へどうぞ!

先程まで聖騎士団の陣営として機能していたとは思えない程の地獄絵図が目の前に晒されていた。

ある者は首が飛び、ある者は胸に剣が突き刺さっている。

ジェネスとジンの前に悠々と立つ青年。

青年の顔には返り血と思われる血が沢山こびりついていた。

「お主がやったのか?」

ジェネスの言葉に反応するように青年は無表情のままゆっくりと体を向けた。

ジンは青年を見るよりも、周りの光景に目を奪われていた。

ジェネスはこの時感じていた。聖騎士団の陣営にありながら、敵の本陣の真っ只中にいる感覚を。

青年は大勢の聖騎士団員達に囲まれながらも眉一つ動かさない。

そして、ジェネスの目の前で青年は動いた。

いや・・・、動いたと思った時には囲むように立っていた聖騎士団員の一人の首が飛んだ。


ゆっくりと転がる人の首。

同時に、この場の雰囲気は捕食する側とされる側が決定付けされた空気を醸し出す。

「やめろお!」

ジェネスは大声と共に赤い大剣を両手に持ち青年に向け走り出した。

ジェネスの声は聖騎士団員達の固まった体を少しだけ動かした。

同時に聖騎士団員達の目に少しだけ生気が戻る。


走り出したジェネスの目は青年だけを捕らえている。

青年はコーリアスを地面に捨て、向かってくるジェネスに対し短剣を片手に持ちぶらりと構えた。


青年の持つ短剣とジェネスの大剣が刃を交え火花がほとばしる。

同時にジェネスの大振りを小さな動作で眉一つ変えずに止めた。


渾身の一振りに手ごたえを感じないジェネスは一瞬怯んだ。

その隙を突くように青年はジェネスの懐へ瞬時に潜り込み胸へ蹴りを入れた。


ジェネスと青年のやり取りに釘付けにされる聖騎士団員達。


ジンは吹き飛ばされてくるジェネスの体をなんとか支えた。

吹き飛ばされるジェネスに全員の視線が集中した瞬間、

青年は聖騎士団員達の首を一気に刎ねた。

ジェネスとジンの前で次々に首を刎ねられていく聖騎士団員。

ジンはその光景を直視し体を震わせた。


ジンの深層心理に植えつけられていく恐怖と絶望。

大事にしていたものが簡単に摘み取られていく感覚。

目の前にいる者には絶対適わないという諦め。

そして、次は自分の番であるという気持ち。


そんなジンを呼び覚ますようにジェネスは青年を見ながら大声で叫んだ。

「ジン!しっかりせんか!

大丈夫じゃ!お前はしなん!」

ジェネスの声にジンは我に返り、

自分の前にしゃがみこむジェネスを直視した。


ジェネスは自分の体に触れるジンの手に力が入った事を確認すると再度口を開いた。

「ジン、お前は此処から真っ直ぐ後退してにげるんじゃ。よいな?」

ジェネスの言葉の意味をジンはすぐには理解できなかった。

「に・・げ・・る・・?ど・・・どこへ・・・」

ジンは呆然としたまま口を動かしただけだった。


ジェネスは苦渋の表情で胸を押さえたまま立ち上がり、ジンの胸倉を掴むと先程まで話し合いをしていたテントへ向け投げ飛ばした。

ジンはテントを押し倒すように放りこまれ姿が消えた。

テントの布の中でジンは足掻く事もせず考える事もせず、ただ目の前に覆いかぶさった白いテントの布をじっと見つめていた。

まさに、全てが終わったと言う様な目で。


青年はジェネスとジン以外の聖騎士団員達を殺し尽くした。

聖騎士団員達の血で染まった短剣を右手に構え立ち上がりジェネスに視線を向ける。


ジェネスにはこの時目の前にいる青年が死神に見えた。そして、自分に迫る死。


頭の中では死を受け入れていた。同時に自分のすべき事。しなくてはいけない事。

「自分の最後にすべき事は・・・これじゃろ」

ジェネスは小さく呟くと近くに落ちている血糊が付いた剣を拾い上げた。


青年は次の標的をジェネスに決めた様に真っ直ぐ向かって歩きはじめた。

ジェネスも真っ直ぐ青年を見つめる。


次の瞬間青年は消えたように見えるほど素早く左へ動いた。

ジェネスも同時に左へ素早くステップを入れる。

青年はジェネスの喉元に向かって左から短剣を一直線に突く。

青年の突きをジェネスは右手に持った剣で素早くはじいた。

ジェネスはそのまま剣を捨て右手で青年の左手首を掴み取ると反対側の手も掴み取った。


青年は少しだけ眉を動かした。そして、ジェネスの腹部へ素早く蹴りを叩き込む。

物凄い音と共にジェネスは吐血した。

しかし、負けじとジェネスは頭突きを青年へ叩き込んだ。


ジェネスは苦痛の表情を見せたが両手は青年をがっしりと掴み逃がさない。


青年が再度顔を歪ませた瞬間をジェネスは見逃さなかった。


ジェネスは力越しに青年を左右に動かし、バランスを崩させながら前へ前へ押していく。


聖騎士団の陣営には敵と戦う時、容易に近づかせない為に鉄先がいくつも伸びた盾が配備されていた。

盾から矢のように30センチ程の鉄先が伸びている。


ジェネスは先程まで聖騎士団員が使っていたであろうその盾を視界に捕らえていた。

盾は仰向けのように落ちており鋭く尖った先っぽは空に向けて伸びている。

その盾に向かってジェネスは青年をじりじり追い込んでいく。


青年の素早さはジェネスの比ではなかったが、力ではジェネスと拮抗していた。

ジェネスは体を密着させ青年の近接攻撃を最小限に抑えていた。

同時に、青年の注意が後方へ行かないようにジェネスは頭突きだけは継続していた。

吐血をしてもジェネスは青年の手首だけは放さぬよう自分の手に全ての神経を注いでいた。


青年は背後に鋭い鉄先が迫ってきている事に気付いている様子はない。


そして、ジェネスは最後の力で青年の足に自分の足を絡ませ後方へ倒しこんだ。


鉄先は見事青年の右胸を貫通した。

迸る青年の血。


ジェネスは青年の体から力が抜け切るまで油断せず相手の手首を掴み続ける。

この時ジェネスは青年から違和感を感じていた。

誰でも傷を受ければ痛い。

ましてや、胸を貫かれれば苦痛の表情を出す。

それが一切無かったからだ。


ジェネスは青年の体から力が抜け、動かない事を確認しすると体を起そうとした。

次の瞬間。

青年はジェネスの両手首を掴み、自分の胸を貫通した鉄先にジェネスの体を一緒に捻じ込んだ。

鉄先はジェネスの左胸を貫通した。

「ぐおおおおおおおおお!」

ジェネスの雄叫びが聖騎士団陣営に響き渡る。


青年は右胸を貫通していたにも関わらず生きていた。

むしろ、何事も無かったかの様な表情で目の前で苦しむジェネスを見つめていた。


青年は目の前で苦しむジェネスの胸を今度は思い切り蹴り上げ吹き飛ばした。

鉄先が激しく抜かれジェネスは更に大きな雄叫びを上げて飛んでいく。

それに比べ青年は、鉄先が背後に刺さったまま体を起こす。

気付けば胸からでる出血も既に少量になっていた。


青年は近くに落ちていた自分の短剣を見つけ拾い上げると、

数メートル先へ飛ばされ転がるジェネスにゆっくりと近づいていく。


そして、ジェネスを上から見下ろした青年は一気に短剣を首目掛けて振り下ろした。

その時、

「待ちな」

幼げな声が青年の動きを止めた。

青年の後方には赤い服を来た少女が一人。

少女は目が大きく、黒く長い髪を風に靡かせていた。

少女の右手にはジェネスが使用していた赤い大剣が握られていた。

「そこの爺さんの大剣は頂いたから、少しだけ延命させてやんな。私ってサービス精神旺盛ね!」

少女の言葉に反応する様に、青年はジェネスの首筋数センチまできていた短剣の切っ先を戻した。

「っていうか、ロウは時間掛かりすぎ!高々数百人でしょ?15分もあれば殺せるでしょ」

少女はロウと呼ぶ青年を叱咤した。

「その爺さんはもうじき死ぬからほっといていいわ。私達は闇の神殿へ急がないといけないんだから」

少女に促されるとロウは短剣を腰へ仕舞った。

ロウは死屍累々とした陣営の中を堂々と闊歩する少女の後を追う。

「あ〜あ、早く私の魔剣見つからないかな。どうもあの剣がないとしっくりこないんだよね〜」

少女はぼやきながらロウを従え去って行った。



少女と青年が立ち去り小一時間程経った頃物音でジンは我に返った。

白いテントから物音のする方へ目をむけると、そこには口周りに大量の血糊を付けたジェネスが這い蹲っていた。

「ジェネス様!」

ジンはすぐに立ち上がりジェネスの体を抱きかかえた。

「この指輪を・・・、フィレーネに・・・。そして事の全てを伝えるんじゃ・・・。

わしからの最後の・・・」

ジェネスは会話の途中で吐血をし目元から涙を溢れさせた。

口の中には血溜まりが溢れ会話もままならない。


ジェネスは今できる最後の力でジンの手を強く握った。

そして目元から涙を零しながら笑顔で息を引き取った。


ジンはジェネスの胸元に頭を付け大声で叫んだ。

「うわああああああああああああああああ!」

大声で叫ぶジンに声をかけるものは誰一人いない。生き残ったのはジン一人だけ。

ジンはジェネスの体をゆっくりと地面に降ろし立ち上がった。

周りを見渡せば死体、死体、死体。

動くものは誰もいない。

あまりの光景にジンは膝を突き体を震わせ地面に吐き気を催した。


「どうしてこうなった。誰のせいだ。・・・・俺はどうすればいい・・・・」

ジンの言葉に応える声はなくただただ血の混じる異質な空気が漂うだけだった。


ジンはしばらくジェネスの横で仰向けになりながら、どうして自分だけ生き残ったのか考えていた。

(こんな気持ちになるならいっそ死んだ方がよかった!

こんな世界で生きていたくない!

どうして・・・俺だけが・・・)


体を丸めていたジンはジェネスの右手をふと見つめた。

誰かが何かを言ったわけではない。極自然にジンは視線が吸い込まれるようにジェネスの指輪を見つけた。


ジンの目元には薄っすらと涙が溢れ出る。

自分の事ばかり考えていてジンは気付いていなかった。

ジェネスから託された思いを。


「ジェネス様からの最後の任務をやり遂げたら・・・あの男の下へ行こう・・・。

まだ俺が生きている限り・・・、絶対に許さない!」


ジンはジェネスの右手にはめられた聖騎士団総隊長の証である指輪を取ると、

陣営の一箇所に作られていた仮設馬小屋に向かった。

馬は全員生きており、自分達の主たちが亡くなった事への祈りを捧ぐ様に小さく嘶いていた。


数ある馬の中で自分の馬を選び、ジンはこの地を寂しげな表情で後にした。





時はジンとギルダのいる荒野へ戻り、ジンは口を開いた。

「ジェネス様は・・・最後に笑っていた」

「そうか。なら俺がした事も正解だな」

ギルダはそれだけ言うと立ち上がりネバルゲ村の方角を向いた。

「さて、そろそろ来る頃だろうな」

ギルダの言葉と共にネバルゲ村の方角から誰かが馬に乗ってやってきた。

「フィレーネ様!?」

ジンはその人物を見て驚きの声をあげた。

「何であんた達が此処にいるの?一体何してるの?」

フィレーネの声は不機嫌極まりない響きをしていた。

「何って言われても・・・見ての通りですよ」

それに対しギルダは安穏と応える。


「ああ、そう。私は急用があるから先にいくわ」

フィレーネはそれだけ言い、ギルダ達の横を通り過ぎようとした瞬間剣が目の前に飛んできた。

それを咄嗟にはじき馬を止めると共に、剣を投げたであろう人物を睨みつけた。

「ギルダ・・・あんた!」

「もう面倒なんで死んでください。隊長」

怒りを露にするフィレーネに対し、小さく口元に笑みを含んだギルダ。


二人の間に火花が散った事は言うまでもなかった。




















読んでいただきありがとうございます!

気長にまっていただいてる読者様に感謝申し上げます!

では22章で!

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