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凶報3

久しぶりの更新でございます!

今回はリコ達でてきます!

では本編スタート!

聖騎士団第二宿舎では小隊長クラスの面々が集まりざわめき立っていた。


「ジェネス様が亡くなったって本当なのか?」

「第一聖騎士団所属のジンが言うには全滅らしいぞ?」

「お前ら馬鹿か?ジェネス様が死ぬわけねえだろ」

「でも、お前だって奴らの武器を見たろ?」

「だから亡くなったとは限らねえだろうがよ!」

「皆さん止めてください!」


ジンの持ってきた情報と今自分達が置かれている状況が結びつき、

より一層小隊長達の間で不安、苛立ち、無力感が広まりつつあった。


小隊長の名を授かっただけあり腕に自信があるものが多く、

小競り合いが始まろうものならただでは済まない事は誰でもわかっていた。

その為、この殺伐とした空気を止めようとする者は中々いない。


小競り合いがまさに今、始まろうとした時だった。


第二宿舎のドアが開き、ソフィアとその後ろからセルベルトが入ってきた。

「貴方達何してるんですの?」


ソフィアの一言で固まる小隊長達。

「こ・・・これはその・・・」

宿舎の中心で、まさに取っ組み合いしていた一人が言葉を濁す。

他の面々も言葉がでず、お互いに手を離したりし顔を見合わせる。


「私達が動揺してどうするんですの?現実を見なさい。

第一聖騎士団と第二聖騎士団が全滅したのは事実かもしれない。

でも違うかもしれない。

そんな事を今模索する時ではありませんの。

私達はフィレーネ様の元へ集まった。それが事実。

ならばする事は一つなはずではありませんの?」


ソフィアの言葉が終わると同時に宿舎の中は静まり返った。

小隊長達は顔を俯かせながら拳を強く握った。


そして、小隊長達が顔を上げた時に見たものはソフィアの涙だった。

全員がその光景に驚愕し唾を飲み込んだ。

とんでもない物を見てしまったかのように。


「こう言ってはいけないかもしれないけれど、

他の部隊は関係ない!

私がお仕えするのはフィレーネ様のみ!

あの方はまだ若い。心が折れる事もあるでしょう。

でもね・・・。

とても優しい。貴方達が辛かった時期にあの方はどうしてくれましたか?!

生きる道を失った私達に手を差し伸べてくれたのはどなたでしたか?!

ジェネス様ですか?第一聖騎士団ですか?


真実が見えなくなってる今、自分の原点を確認なさい。

それが今私達にできる事ではありませんの?」


「すみませんでした!」


ソフィアの言葉に一人の小隊長が大声で謝った。

その小隊長へ視線が集中する。

「私はフィレーネ隊長に3年前家族を助けられました!

村を魔物の大群が襲った時、助けてくれたのがフィレーネ隊長達でした!

あの時の恩は一生忘れません!」


「俺もだ!俺もあの人がいなければ死んでた!あの人がいなければ・・・」


「馬鹿野郎!俺だってそうだ!隊長に助けられた!」


静まり返っていた部屋に、さっきまでとは違い活気に溢れた空気が入り乱れる。

その様子に、一瞬だがソフィアは口元に笑みを浮かべた。


「静まりなさい!

心が原点に戻った今、再度軍議を執り行います。

よろしいですね?」


「はっ!」


ソフィアの指示が出ると、全員が目に光が戻ったかのように動き出した。

ソフィアの後ろで見ていたセルベルトもその中へ混じって行く。


宿舎内が小隊長達によって片付けられ、机の上に大きな地図が掲げられる。

小隊長達は大きな地図を囲むように立ち整列した。


「フィレーネ隊長は来ないのでしょうか?」

一人の小隊長がソフィアに質問する。

ソフィアはその質問がついに来たかと言うように、ゆっくりと口を広げた。


「フィレーネ隊長は試練の真っ最中ですわ。

それで貴方達なら意味はわかりますよね?」


ソフィアの言葉に小隊長達は単純に理解した。

ジェネス様達の死を受け入れ、前に進む事だと。


しかし、本当はこんな単純な事ではない事だと理解できたのはセルベルトだけだった。





一方、ギルダは荒野の真ん中で馬に乗ったジンを発見した。


「おい!ジン!」

後方から聞こえてくるギルダの声にジンは馬を止めた。

「ギルダ・・・」

ジンは後方から馬を走らせてくる見慣れた顔を怪訝な顔で見つめていた。


ギルダはジンに追いつくと前方を塞ぐように馬を止めた。

「何処行くんだ?旧友を置いて」


「旧友?馬鹿言うな。

俺が何処行こうと勝手だ」


ジンは嫌な奴と会ったという目でギルダを見つめる。

「俺を止めに来たとか、しょぼい事を言う気なら帰れよ」


ギルダはジンから出てくる言葉がわかっていた様に大きく溜息をついた。

「止める気なんかこれっぽっちもねえよ。爺さんからの伝言がなけりゃあな」


「爺さん?ジェネス様か?」


「ああ」


ジンはギルダが言った”爺さんからの伝言”と言う言葉に眉を少し動かした。


「伝言ってなんだ?」

「ん?お前が死にに行くのを止めろってな」


ジンの質問にギルダが応えた瞬間、不意に小石をジンの顔目掛けて投げた。

ジンはそれを避けようとした瞬間顔を歪ませ馬から落ちた。


「どうした?その小石を避けるのがそんなに辛いか?

それとも怪我でも負ってるのか?」


「貴様・・・!」


ジンは顔を真っ赤にし、ついには腰から剣を抜いた。

ジンの怒りを避けるように馬はその場を離れていく。

ギルダも同時に馬から降りた。


「剣を抜いた以上覚悟決めろよ?聖騎士団ならその意味わかるだろ?」


ギルダも言葉と同時に背中から一本の剣を抜いた。

それを見計らうかのようにジンはギルダに切りかかる。

しかし、ギルダは素早く右へ避けると同時にジンの顔面へ強烈な蹴りを叩き込んだ。


ジンは後方へ吹き飛ばされるが、辛うじて右膝を突くにとどまった。


ジンは今この瞬間にギルダの実力を垣間見た。

そしてギルダに勝てないと言う事も察した。


剣を抜いた以上もうジンは後に引けなかった。

体を奮い立たせ、その後もギルダへ切りかかる。

結果は同じ。殴られ蹴られ・・・。

ジンはもう立てなかった。荒野で一人ジンは倒れた。


そんなジンを覗き込むかのようにギルダは上から見つめる。

「もう終わりか?」

ギルダがかける言葉に対しジンは返す言葉がなかった。

まさに敗北者と言えた。


ギルダは止めとばかりにジンの首筋へ×印の様に剣を2本振り下ろした。


そしてジンの横へ腰を降ろす。


「お前は負け、そして今死んだ。

もうお前に行き場はねえよ」


ギルダの言葉にジンは何も言わず涙を流した。

自分の無力差を嘆くように。


そんなジンをギルダはじっと見つめていた。






一方リコ達は自分達の宿舎を出て裏通りを走っていた。

「フィレーネさんを見つけたのは良いけど、一体何処へ・・・」

「さあな。トイレだったりして・・・」

リコは拳でケイトの頭を殴った。

「痛ってーな。冗談だってー」

「あの剣幕でそんなわけないでしょうが!もう一回ぶつわよ?」

「だって、考えたってわかるわけねーよ。俺達はフィレーネさんじゃないんだからよ」

リコはイライラした表情で、ケイトからフィレーネに視線を戻した。


「フワワァ・・・。あれ、ケイト様どうされたんですか?」

頭を痛そうに手で押さえるケイトを見て、リコの頭上にいるルーリは寝惚け眼でつぶやいた。

ケイトは指でリコを指差した。


「またリコ様に怒られる様な事されたんですか?」

「またって・・・。」

ルーリにまで変な目線で見られた事にケイトはがっくりと肩を落とした。


急に物陰でリコが動きを止め、何かを窺うように覗き見を始めた。

「どうした?」

「シー!体低くして!」

リコはケイトに小声で指示を出す。

ケイトはリコの指示に従い一緒になって覗き見をした。


視線の先には馬小屋があり、フィレーネが馬小屋の番人ヴォルデと話をしている様子だった。

時間が経つにつれ、ヴォルデが身振り手振りでフィレーネに何かを言っている。


「隊長、一人で出かけるなんてだめです。お願いします。

出かけるならばどなたかお連れください!」


必死で説得するヴォルデに、フィレーネは素早く背後へ回り込み首へ手刀を入れた。

崩れるように倒れるヴォルデを抱きとめ、フィレーネは馬小屋の隅へ座らせる。


そのまま適当に馬を選び跨ると、躊躇なくこの村を出て行った。


その一部始終を見ていたリコ達は余計混乱した。

「おいおい、どういうことだ?」

ケイトはリコに尋ねる。

リコ自身も心境としてはケイトと同じ為、すぐには返答できずにいた。


「うーん・・。隠密か・・もしくは・・・フィレーネさん自身が出て行かなければ解決しない事か・・・。

それにしても、あの馬小屋の人は聖騎士団の服装してたし、気絶させる意味がわからない・・・」


リコが悩んでいるとケイトが横から声をかけた。

「なあ。セリスいなくなってるぞ?」

「ちょっと黙ってて!今考え・・・え?えー!?」

リコはケイトの言葉に驚愕しつつ馬小屋の横にある木に視線を向けた。

するとリコが乗ってきた馬だけがいなくなっていた。


リコは慌てて物陰からでると、真っ直ぐセリスがいた木の下に向かった。

木とセリスを繋いであった縄は何者かに刃物で切られた跡が見られた。

「盗まれた・・?」

リコが切られた縄を握りながら呆然と口を開いた。

そんなリコを見て、ケイトは何か手がかりを探すように周辺に目を配る。

「ケイト様、あの方に聞いてみてはいかがでしょうか?」

ルーリはリコの頭上から、先程フィレーネに気絶させられたヴォルデを指差した。

ルーリの提案にケイトは目を大きく広げた。

「おお、その手があったな。リコ、聞いてみようぜ」

ケイトがリコの肩を叩くが、呆然としたまま動かない。


「リコ!しっかりしろ!まだ何処か行ってから時間もそんなに経ってない!

まだなんとかなる!」


ケイトは掛け声と共にリコの手を掴み歩き出す。

ルーリも呆然とするリコの顔を頭上から見下ろす。

「リコ様・・・」


馬小屋へ近づくにつれて、リコの心の底から怒りが沸々と沸き始めていた。

「・・・誰なのよ・・。私のセリスを盗んだのは!!!

冗談じゃないわ!」


リコはいきなり怒声を出した。

その光景に、今度は唖然とした表情でケイトとルーリがリコを見つめる。


ケイトは思った。リコの怒りが爆発したと・・・。


先頭を歩いていたケイトを追い越し、ズンズンと馬小屋の中へ入っていくリコ。

リコの足音から既に怒っている事は感じ取れた。


その勢いでリコはヴォルデの前まで来ると、視線を合わせるようにしゃがみこんだ。

「ちょっと、起きれますか?目を開けれますか?」

リコは怒りを抑えた声でヴォルデの肩に手を乗せ、声をかけるが気がつく様子はなかった。


セリスが盗まれたと思い込んでいるリコは、いつもより冷静さを欠いていた。

見かねたケイトがリコとヴォルデの間に割ってはいった。

「リコ落ち着けって。らしくないぞ?

さっきフィレーネさんに気絶させられたばかりだ。力づくで起そうとしてもだめだって」

ケイトはリコを窘める様に言い放ち、ヴォルデの具合を見始めた。


「じゃあどうするのよ?馬にでも聞くっていうの?・・・・ん?

馬・・・?もしかして・・・」

リコは何かに気付いたのか、頭上にいるルーリを手の平に乗せ自分の前に降ろした。


「ルーリ、もしかして動物や植物とか人間じゃない物と話ってできるの?

例えば馬とか」


「お馬さんはちょっと無理ですが、木や植物となら話ができますよ」

リコの質問にルーリが淡々と応えると、リコは目を輝かせた。


「おお。それじゃぁ、あの木と話できる?セリスの行方を知りたいの。」

リコはセリスが繋がれていた木を指差す。


「リコ様の為ならがんばりますぅ!でも、もし木さんが眠っていたら応えてくれないかもしれません・・・・」

「やれるだけやってみてくれる?」

「はい!」

ルーリは元気良く返事をした。


ケイトはヴォルデさんの具合を見ていたが、リコ達が馬小屋を出て行くのに気付き追いかける。

「どうしたんだ?何か思いついたのか?」

「まあ、ちょっとね。ルーリが木と話ができるらしいの」

「まじか!?ルーリすげー!」

ケイトはルーリの能力に驚きながら、リコの手に収まっているルーリを興味津々で見つめた。

そんなケイトにルーリは恥ずかしそうな仕草をした。


「ルーリはほんと優秀だわ。ケイトと違ってね〜」

リコはルーリの頭を撫でながら呟く。

リコの明るい口調から、いつものリコに戻ったとケイトは思った。

「はいはい。俺はどうせ無能だよ」


ケイトはぶっきらぼうに言った後、少し笑った。


リコ達はセリスが繋がれた木に着くと、

もう一匹木に繋がれていた馬をケイトがルーリの邪魔にならない様に木から離した。


ルーリはリコの目を見た後、手から飛び立ち木の幹の傍で止まった。

ケイトとリコはルーリの様子をじっと見守る。

次第にルーリの周りが青白く光りだした。


それと呼応するかの様に、木の周りに白く小さな泡の様な物が浮き出始めた。

初めて見る現象にリコとケイトは目を奪われた。

「凄い・・・。木の精霊・・?」

「これは木の精霊だな」

リコはルーリに話しかけたつもりだったが、ケイトがそれに応えた。

「え?」

リコは驚愕した表情でケイトへ視線を移す。

それに気付いたのかケイトもリコに視線を移した。

「どうした?」

「え、いや・・・」


リコはルーリに視線を戻したが、ケイトの異変に戸惑いを隠せなかった。

どうしてケイトが精霊を見れるのかと・・・。


リコが一人動揺している間もルーリと木の会話の様なものは続いていた。

ルーリと木から光が消え、ルーリはパタパタとリコの前に飛んでいく。

「リコ様終わりました。・・・リコ様?」

難しい表情で何かを考えているリコにルーリは首を傾げた。


「リコ?どうした?」

ケイトに話しかけられリコは気がついた。

「え?あ・・・ああ。ごめん。終わった?どうだった?」

リコは目の前で羽を揺らすルーリに目を向けた。


「えっとですね。セリスと言う馬はギルダさんに乗って行かれたそうですね」

「え?ギルダさん?何故??」


ルーリの応えにリコは深く追求する。


「えーっと・・それはちょっと・・・」

「ごめん。ありがとう」

困った表情で応えるルーリを見て、リコはこれ以上の情報は望めないと理解し頭を切り替えた。

「ケイトどう思う?」

「リコにわからん事はわからん。でもギルダさんなら後でちゃんと返してくれると思うぜ?」


「そうね。わかった。今はフィレーネさんを追いましょ」

ルーリを肩の上に乗せたリコはケイトの馬に跨った。

リコに続きケイトはリコの後ろへと馬を相乗りした。


ケイトの言う事に根拠なんてない事はリコは百も承知だった。

でも、リコはケイトの言う事を信じる事ができた。


それは、ケイトがとびきりの正直者で、

いつでもリコの事を思っての事だとリコ自身がわかっていたから。


「相乗りしてる以上馬に負担かけたくないの!

ケイト、私にちゃんとくっついて!変なとこ触ったら怒るから!」


「お、おう!」


リコはケイトが自分の腰周りに腕をしっかり回した事を確認すると、

馬の首縄を軽く打ちフィレーネの馬の蹄の跡を頼りに走らせた。





一方ギルダはジンの首筋に当てられた2本の剣を引き抜き背中へ戻した。

「なあ、ジン。爺さんはどうだった?」

「どうだったとは?」

「爺さんの最後は苦しそうにしてたのか?」

ギルダの質問にジンは空を見上げた。



時は5日前に遡る。

ジェネス率いる第一聖騎士団とコーリアス率いる第二聖騎士団はアレリスの丘にて陣を張っていた。

アレリスの丘はガジェッタから北に行ったところにあり、見晴らしの良い場所だった。

聖騎士団員達が動き回る陣の中、大きなテントが一つ中央に置かれていた。

そのテントの中では大きな机に地図を広げ、それを囲むように10人程の男達が立っている。

「今からでも引き返し、闇の神殿を取り返すべきです!このままでは世界が終わってしまいます!」

40台程の男性コーリアスがジェネスに懇願した。

白髭を長く伸ばした貫禄ある老人ジェネスが地図を見ながら唸りをあげる。

老人と言っても体は締まり体格はがっしりとしている。

「ふーむ。事態が深刻なのはわかっておる。落ち着かんかコーリアスよ」

ジェネスは目を細めコーリアスをじっと見つめた。

その光景をテントの隅から見つめるジン。


緊迫した雰囲気の中、テントの外から声がかかった。

「第一聖騎士団諜報部隊ソネです」

「入れ」

コーリアスが許可を出すと、男性が一人ゆっくりと入り口から入ってきた。

男性は居並ぶ面々の前で膝を突き口を開けた。

「空飛ぶ船はガジェッタ、闇の神殿上空から去りました。

現在町は完全に沈黙。被害予想は死者5万人を超えたと思われます。

それから、他の聖騎士団ですが、各地に逃げ果せた可能性が高いです。

現在追って調査中です」

男性は簡潔に報告すると頭を下げテントを出て行った。


「ジェネス様・・・」

コーリアスを含め、面々はジェネスが口を開くのを待った。

ジェネスは自分の白髭を触りながら考え込んだ。

そして、ゆっくりと口を開く。

「巫女長テリネス様を含め、後6人の巫女の救出。

できれば宝玉は守りたいが・・・、恐らく無理じゃろう。

今無理をすれば、ここぞと言う時に戦力不足に陥る」

ジェネスの言葉を聞きコーリアスは居並ぶ聖騎士団を見つめた。

「各小隊に準備を急がせろ!怪我人は馬車に乗せ医療部隊を付かせろ!

全員動き出せ!」

「はっ!」

コーリアスの激に聖騎士団小隊長達はすぐにテントを出て行った。

テントの中にはジェネスとコーリアス、それとジェネスの付き人であるジンだけが残った。

静かになったテントの中でジェネスは神妙な面持ちで口を開いた。

「正直、この展開は誰にも予想はできなかったじゃろう・・・。

今までこんな大きな事件は起きた事がない」

ジェネスの言葉にコーリアスも神妙な表情で口を開いた。

「あの空飛ぶ船はステネイラ大陸の物ですね。

メイアス大陸には存在しない。いや、存在してはいけないもの」

「ああ。ステネイラ大陸で一体何が起こっているんじゃ・・・」

ジェネスとコーリアスが話をしている様子を真剣な表情で見つめるジン。

すると、テントの外から騒ぐ声が聞こえてきた。

「まったく!こんな時に・・・!」

コーリアスは呟くと共に呆れた表情を見せた。

「ちょっと外を見てきます。ジェネス様は少し休まれた方がよろしいかと」

「年寄り扱いするでないわ」

コーリアスの言葉にジェネスは食って掛かった。

そして同時に二人は笑った。

「では少し外行ってきます」

そう言うとコーリアスはテントを出て行った。


「ジン、今回の件どう思う?」

ジェネスに突然話を振られジンは動揺を隠せなかった。

「ど・・・どうと言われましても・・・」

「わしは先代の総隊長デルフ様からこう言われた事がある。

『自分のやるべき事をやり終わるまでは絶対死んではならん』とな」

「それと事件とどういう関係があるのですか?」


「関係か・・・。わしにもわからん。ただ・・・」

ジェネスが遠くを見つめるようにテントの天井を見上げた時だった。

テントの入り口から慌てた様子で一人の団員が駆け込んできた。

「ジェネス様!大変です!コーリアス様が!!」

団員は動揺と焦りから言葉がうまくでてこなかった。

団員の様子にジェネスとジンは立ち上がりじっと見つめた。

「何があったのじゃ?!」

「コーリアス様が・・・殺されました」

団員の言葉を聞いた瞬間ジェネスとジンは一瞬固まった。


ジェネスは背後に刺さっている大剣を抜き取り、入り口に立っていた団員を押しのけ外へ出た。

そして、そこで見たものは100人を超える聖騎士団員達の死体と動かなくなったコーリアスを背負った血塗られた青年だった。







































いつも読んでいただきありがとうございます!

次回21章でお会いしましょう!

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