ニアVSギルダ
毎回読んでいただきありがとうございます!
10章突入です!
では本編スタート!
次の瞬間ケイトの周りで竜巻が発生した。
ギルダはレアラを抱きかかえ竜巻の爆風に耐えている。
ギルダにはなんとなくだが竜巻を起しているのが異質な空気を醸し出すケイトだと察した。
「ケイト!村ごと潰す気か!?」
ギルダの言葉にケイトは何も反応しない。
村に建っている民家が軋み段々と壁が剥がれてきていた。
そしてついにケイトはニアに向けて走り出す。
ニアはケイトの魔剣を緑色した剣で真正面から受け止めた。
「く・・・これが選ばれた人の力か。
だがいつまで体が持ちこたえられるかな」
ニアは苦痛の表情で言葉を吐き捨てる。
ケイトは完全に理性を失い牙むき出しでニアを襲う。
「がるうううう!」
ケイトの魔剣に押し飛ばされニアは空中に飛ばされる。
「パワーは人外か!?」
ニアはぼやきつつ空中から地上のケイトを見つめる。
ケイトは地上からニアに向けて魔剣を大きく薙ぐ。
魔剣から大量の水が飛び出し刃の様に鋭く形を変えニアに向かって勢い良く走っていく。
ニアは空中で身動きとれず、完全に水刃はニアを捕らえていた。
しかし、ニアは赤いペンダントを前にかざすと水刃の勢いは急激に衰えただの水になった。
民家の屋根へ着地したニアは一息ついた。
「危ない危ない。さすがにあれをまともに食らったら死ぬところだった」
水刃を跳ね除けた赤いペンダントをじっと見ると小さな罅が入っていた。
赤いペンダントが出てからケイトの様子がおかしくなる。
身動きせずじっと立ち尽くすケイト。
その一方で村に発生した竜巻は大きくなっていった。
レアラは立ち尽くすケイトの異変に気付く。
「まさか・・・お母様のペンダントのせいで・・・」
この時レアラの中では沢山の思いと後悔が複雑に絡み始めていた。
大通りから広場に乗馬した大勢の人間が入ってきた。
その先頭に立つフィレーネは目の前の光景に唖然とするしかなかった。
「これは・・」
息を呑む傍らレアラを抱え村の墨でしゃがんでいるギルダを見つける。
「ギルダ!お前また何かしたのか!?」
ギルダはフィレーネに声をかけられ罰が悪そうな顔をする。
「俺は何もしてないですよ!っていうか隊長達危ないですよ!?」
「バカ者!危ないからって引っ込んでいては聖騎士の名が泣くわ!
それにあれ程勝手な行動するなって言っておいたでしょうが!」
ギルダの言葉にフィレーネは怒鳴って応えた。
しかし目の前の光景がすぐに気持ちを切り替えさせる。
フィレーネはすぐに後ろで唖然としている仲間に指示を出す。
「皆!とにかく村人を見つけて!その後は最優先で助ける事!」
フィレーネの指示に聖騎士団員達は大きな声で返事をする。
予め作戦が立てられていたのか聖騎士団の人達は数名のグループに別れ散った。
ギルダとレアラは暴風の中立ったまま動かないケイトと、広場の片隅で倒れているリコを見る。
「譲ちゃんさっきから知った風な口を聞いてるが、なんとかできるのか?」
ギルダは腕の中で震えるレアラに声をかける。
しかしレアラはじっとしたまま動かない。
その時ニアは立ち尽くすケイトに向かって剣を持って走る。
ギルダは即座に走り出しニアの前に立ちはだかった。
「何するんですか?早くその少年を殺さなければこの村ごと滅びますよ?」
「この事態を引き起こしたのはお前だ。ケイトに罪はねえよ」
平然と話すニアに対してギルダは怒りの矛先を向ける。
ギルダは腰の剣を抜きニアと対峙する。
先にニアが動いた。
ニアの素早い斬撃をギルダは剣で悉く受け止めた。
隙をついてギルダはニアの左脇腹に蹴りを入れる。
ニアは後方へ吹き飛ばされるが一回転して着地した。
「お前の剣も魔剣か。今は魔剣が流行ってるのかね〜。
ったく。これじゃ俺の剣が使い物にならなくなるぜ」
ギルダは自分の剣が既に刃こぼれしているのを見ながらぼやく。
そんなギルダにニアも余裕の表情で応える。
「貴方にも魔剣を差し上げますよ。僕の仲間になってくれたらですけど」
ギルダは呆れた顔で頭を左右に振った。
「魔剣一本とは・・・俺も安く見られたもんだな」
ニアとギルダは再度剣を向けあい対峙する。
レアラはギルダが傍を離れた後竜巻によって裏通りの民家に叩きつけられていた。
その痛みで正気を取り戻す。
「うぅ・・此処は・・」
周囲を見まわすがケイトとリコが見当たらない。
その時不安や後悔が体の中にどっと流れ込んできた。
レアラは落ち込みそうな頭を左右に振る。
「今は悩んだり後悔してる場合じゃない・・・ケイトとリコを助けなくちゃ・・」
レアラは体中の痛みに耐え、這いながら広場に辿りつく。
そこには数軒の民家が既に吹き飛ばされ無くなっていた。
竜巻の中では雨が降り、竜巻の外では雷も発生していた。
レアラは顔を引き締め何かを決意したようにケイトとリコをじっと見つめる。
「もう失いたくない・・・」
レアラが目を閉じ集中すると目の前に光に包まれた杖が出現した。
杖は色々な輝く石がはめ込まれている。
杖を両手で掴み地面を軽く叩く。
レアラは再度目を閉じる。
「童と契約し神獣よ!力を貸せ!ラリム!」
詠唱と共にレアラを中心とした魔方陣が描かれ、そこにリスに似た青く輝く生き物が出現した。
詠唱に力を使いすぎたのかレアラは腰を落とす。
「ラリムお願い。力を貸して。もう童にはそなたにしか頼む者がおらんのじゃ・・・」
泣きながら懇願するレアラに、ラリムは近づき頬を流れる涙を舐め取った。
ラリムは小さく泣いた。
「クゥゥン」
「ありがとうラリム。やれるだけやってみる」
レアラは立ち上がりラリムを従えケイトとリコを見つめる。
「ラリム行こう!」
レアラは大きく一歩を踏み出した。
いつも読んでいただきありがとうございます!
では次回11章で会いましょう!