侵入者
王道ファンタジー第二作目です!
お楽しみいただければ幸いです!
この世界メイアスには光、闇、炎、雷、風、水、土と言う七つの宝玉が存在する。
宝玉は人に恩恵と災いを齎すと言われ、
人々はその宝玉を大事に崇めた。
しかしその傍ら宝玉の力に魅了された人間も少なからずいた。
その為古代人は神殿を作り、巫女と呼ばれる女性のみが管理する体制を作った。
そして今時代が動こうとしている。
砂漠の中央に台形型の大きな建造物があった。
それは二メートル四方の巨大な石が積み重なって出来ており、どの石にも古代文字が書かれていた。
建物は砂漠と大きな岩に囲まれた場所にひっそりと建っている。
「もうじき炎勇の宝玉が手に入る。ククク・・・」
猫背をした白髪の老人が下卑た目つきで神殿を舐めるように見やる。
その老人と建物を囲むように青い鎧を着た多くの兵士が立っていた。
一人の兵士が白髪の老人の下へ歩み出た。
「ガルニアス様。中へ入った兵からの連絡が途絶えました。
恐らくまたトラップに引っかかったと思われます」
青色の鎧に青色の兜、それに黒いマントをした兵士がガルニアスの背後から膝を突き報告した。
「やはり巫女しか通る事を許されないというのは本当の様じゃのう」
ガルニアスは考える時自分の頭を指で触る癖がある。
その光景を見慣れている兵士は、ガルニアスが考えていると判断し黙って指示を待っている。
「あんまり時間も賭けられん。例のあれを試せ」
ガルニアスは口元に笑みを作って言った。
「恐れながら、あれを使えば魔術士が数名使い物にならなくなる上に、
神殿の中で生きている者がいた場合・・・」
「お主はわかっておらんのう。
兵器は使ってこそ兵器なんじゃよ。それにあくまで実験じゃ。やれ。」
「は・・はい」
兵士は喉を詰まらせたような返事をすると重い足取りで下がった。
それから三十分後ガルニアスとその部下達は岩陰に隠れるように建物から離れた。
「ガルニアス様発射する準備ができました」
兵士が岩陰から神殿を見ているガルニアスに耳打ちした。
ガルニアスは頷くと右手を神殿に向けて振り上げた。
「撃て!!」
ガルニアスの声を確認すると兵士は無線機で何処かに連絡した。
その瞬間頭上に閃光が走った。
閃光と共に轟音と爆風が岩陰に隠れる兵士達を襲う。
兵士達は砂や埃に立っていられず身を屈める者もいた。
しばらくして辺りが落ち着きを取り戻した。
兵士達は立ち上がり岩陰から神殿を見ると半分が吹き飛んでいた。
そして神殿を貫通し背後にあった岩は跡形もなく消えている。
「素晴らしい!面白い!やはり我が国の兵器はこうでなくてはな!」
ガルニアスは誇らしげに叫んだ。
その後兵士達を引き連れ神殿に歩み寄った。
既に入り口は無くなり外から内部が剥き出し状態だった。
ガルニアス達は神殿に登り大きく見渡すと、
神殿の中央に一際赤く輝く水晶が浮いているのが見えた。
それは丸く人の頭程の大きさをしていた。
ガルニアスを先頭に瓦礫を避けながら水晶に歩み寄る。
「これじゃ・・・これが炎勇の宝玉じゃ!」
ガルニアスは色々な角度からジロジロと見ていた。
「誰か!魔力計を持て!」
ガルニアスが叫ぶと兵士の一人が長い棒の様な物を差し出した。
魔力計を宝玉に近づけた途端魔力計が爆発する。
ガルニアスと背後の兵士は唖然としていた。
「凄い・・・これがあれば・・・」
ガルニアスは不適な笑みを浮かべた。
「これは人が触れるでないぞ。何が起こるかわからん。
金属の入れ物に入れて持ち運ぶ。すぐに取り掛かれ!」
ガルニアスの掛け声と共に兵士は一斉に動き出した。
「はぁはぁ・・・これは一体・・・」
二十歳前であろう女性が、呼吸を整えつつ岩陰から崩れ落ち荒れ果てた神殿を眺めている。
女性は髪を後ろで一つに括り、スラリとした体系で目が大きいのが特徴的だった。
彼女は近くの岩に手を置き言葉無く神殿をじっと見つめる。
「ラズリ様!・・・ちょっと待ってください・・」
四十歳程のでっぷりとした体系の男性が、息を切らしながら砂漠を走ってくる。
男性がラズリと言う女性に追いつき、呼吸を整えようとしている。
「ラズリ様、里から神殿まで何も言ってくれないなんて酷いですよ・・・」
「コデオ、これを見て下さい」
コデオの泣き言にラズリは淡々と言葉を返す。
コデオは顔を上げて神殿を見て唖然とした。
「これは・・・一体何が・・・」
唖然とするコデオを他所にラズリは神殿に駆け寄る。
瓦礫を避け宝玉が祭ってある場所へ行くと蛻の殻だった。
ラズリの感情は戸惑いから怒りに変わっていった。
「誰がこんな事を・・・」
ラズリは唇を強く噛み締めた。
ラミレシアの新シリーズを読んでいただきありがとうございます。
今後とも長いお付き合いよろしくお願いいたします。