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金魚の足には靴を履かせて  作者: 宝や。なんしい


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第5話

「そうそう、初仕事頼むわ。

入り口にある定食屋で、コーヒー注文してきてくれるかな。

レーコー二つと、ええと、ジブン、何て名前なん?」


津山茜(つやまあかね)です」


「あかねちゃんね。あかねちゃんも好きなやつ頼んだらええから、一緒に注文しといで」


そして千円札を一枚渡された。


千円札を握りしめ、昨日アルバイトを断られたあの店へと向かう。

今度は迷わないように、しっかりと道を覚えていった。


店長はいなかった。

年配のウェイトレスに注文すると、後で持って行きますと言ってお釣りだけを返してくれた。


ミックスジュースにするか悩んだが、計算すると千円では足りなかったので、結局二人と同じものを頼んだ。


オープン前。

商品の上には大きな白い布がかけられていて、大将が一気にそれを剝がすと、台の三分の一くらいまでお菓子のような透明の袋が所狭しと並べられていた。


それぞれの袋の中には、乾燥したワカメや椎茸やかつお節や煮干しなんかが入っている。


残りの三分の二の何も置かれていないスペースには、仕入れてきたばかりの塩干ものや冷蔵庫にしまってあった昨日の売れ残りなどが並べられていった。


奥から順に、山型に積まれたお雑魚(おじゃこ)の箱。

手前に向かって一夜干しの開いた魚や目刺し、

塩をした鮭や鯖なんかをきれいに並べていく。


台の手前のプラスチックの樽の中には、ぎゅうぎゅう詰めのさんま。


一匹300円と書かれた段ボール紙が置かれた。

裏に「ルバイト急」という文字。用済みの求人広告がここで活用されていた。


「ここは乾物屋さんですか?」


準備が落ちついて、三人で立ったままレーコーを飲んでいる時に訊いてみた。

レーコーというのはコーヒーの冷たいやつのことだということをこの時はじめて知った。シロップとクリームをたっぷり入れると、苦くなかった。


「そうや、乾物屋やで。うちは塩干ものも置いてるけどな。なんや、知らんかったん?」

「はい」


「ふふん、吞気やなあ。そらそうやな、女の子は嫌がるもんな、普通はこんな店。もし知ってたらここでアルバイトしたいとは思わんかったやろ」


奥さんは笑いながら「なんで喫茶店とかにせんかったん?」と言った。


耳の縁がぴりぴりとして痛い。

耳たぶに触れると冷たかった。


「喫茶店にアルバイトを申し込んだら、目の悪い人はダメと言われたんです。眼鏡も禁止らしくて。

ええと、ごめんなさい。

目の悪いことを黙ってました。本当はいつも眼鏡をかけています。

ここも眼鏡は禁止ですか」


うつむいたまま一気にしゃべった。二人の顔を見るのが怖い。


大将は不思議そうにして、

「目、悪いん?」と訊いた。

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