第2話
そのままスーパーの中をあてもなくぶらぶらし、あの場合「すみません」じゃなくて「ありがとうございました」と言うべきだっただろうかと考えていた。
「目の悪い人は働けないのかあ」
本当は私もそんな気がした。
眼鏡をはずして行ったのはそのため。
益々、眼鏡をかけている自分の顔が嫌いになった。
さて、じゃあどうするか。
またバイト先を探さないと。
高校生になったら、なんでもいいからバイトをしろとおばあちゃんにうるさく言われているのに、だらだらしているうちにもうすぐ夏休みというところまできてしまった。
冴子姉ちゃんも、いつまでおこずかいもらってんねん、年金暮らしの年寄りに甘えてんと、自分のこずかいくらい自分で稼げ、と容赦がない。
でも目が悪いと働けないんじゃ無理やん。
バイト料が入ったらまずコンタクトを買うつもりだったけど、そのバイトができないのではどうしようもない。ニワトリが先か、卵が先か。
絶望的な気分でいると「アルバイト急募」という文字が目に入った。
雑に切り取られた段ボール紙の片方だけにマジックで殴り書きされていて、天井からぶら下がっている。
エアコンの風に吹かれてバランス悪く時々くるくると回転した。センスの欠片もなく切実さがばかりがにじみ出ている。
「いらっしゃい。アルバイト?」
活きのいい魚みたいな目をしたおじさんは、エネルギーで溢れていた。なんとなくお父さんを思い出した。
「ああ、ええと。はい」
「ほんま? ほんじゃ明日はちょうど日曜日やし、早速明日から来て。朝8時。スーパーの通用口にいてる警備員のおっさんに『うおさか』のバイトや言うたら入れてくれるから」そして「通用口はあっちね」とあっちを指さした。私は慌ててうなずいた。
喉の奥に何かが詰まったみたいにうまく声が出ない。
何か言わなくちゃ。
そうそう、目の悪いこと。でもどうしても声がでない。
「あ、うち時給安いねん。ごめんな」
私はうなずいて、かすれた声で「よろしくお願いします」とだけ言ってから、足早に店を後にした。
おばあちゃんにはせっつかれているけど、来週から期末試験もあるし、できればもう少しのんびりしたかった。
だけどこちらにも、目の悪いことを伝えていないという負い目があるから、勝手な希望は言えない。というか、これでまた断られるのは、メンタル的に耐えられそうにない。
「あの定食屋か?」
アルバイトのことを報告すると、おばあちゃんは珍しく機嫌がよかった。
「いや、違う。なんかワカメとか置いてる店やった」
そういえば何のお店だったのか、しっかり見ていなかった。
私は明日から何屋でどんな仕事をすることになるのだろう。
「ワカメ? 塩干もんとか置いてる乾物屋かな」
乾物屋というワードは聞いたことはあったけど、どんな店かと聞かれるとよくわからない。
「なんか、魚っぽい感じがしたけど」
「ああ、やっぱり乾物屋やな」
おばあちゃんは納得して、ええやん、ええやん、定食屋よりずっとええわと、更に上機嫌になった。その姿を見て、なんだか少しほっとした。




