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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第87話 強さの意味


ミレイナは振り返りつつ、自身の放った攻撃を回避し、真っ直ぐこちらを見据えコンバット・メイデンを構え直したリリィを見詰め返す。


そして、再びミレイナは一気に距離を詰めるとサムライソードを薙ぎ払った。

一閃程ではないが、速度の乗った確かな一撃。


リリィはそれが回避不能の速度だと判断するとコンバット・メイデンで受け、大きく横払いした。


リリィの胴体が大振りの攻撃にガラ空きになる。


ミレイナはそれを見逃さず、刃を上から振り下ろした。


コンバット・メイデンでの防御は不可能。

次こそ当たるとミレイナが確信した時だった。


リリィは右足のスラスターを全力で吹かせると膝部装甲でミレイナのサムライソードの脇腹を蹴り飛ばし攻撃を往なしてみせた。


「っ…!!」

リリィの咄嗟の動きにミレイナは目を見開く。弾かれたサムライソードを手から離さないよう力を込める。


───まるで自身の全てを武器として振るうかの様なリリィの戦い方。


更にリリィはそのままの勢いで地に手を着くと残りの左足でミレイナの肩部装甲を蹴り飛ばし、ミレイナと自身の間に距離を作った。


───先ほどのソフィアの時とは逆に、今度はミレイナが性能で上回っているというのに、その性能差を感じさせないリリィの立ち回りに舌を巻いていた。



自身の技に慢心こそ無い……


が、アリアを師として技を高め合い、ナギサと共に戦場を駆けた己の刃に、ミレイナはどんな相手にも届きうる確かな力を実感していた。


それは驕りではなく確かな努力の元に齎された覆しようのない確信だった。



───だからこそ、第一世代と第二世代、

性能差がある状態でここまで立ち回れるリリィの技量に驚きを隠せなかった。



確かにリリィが誰よりも最前線で戦っていることは、自身が師と崇めるアリアから聞いていた。


しかし実際にその力を目の当たりにすると、憧れよりもある感情が満ちた。


哀しみ。


───本来巻き込まれただけの、ただの少女だった筈のリリィさんがここまで自身を追い込まなければならないほど、

高めざるを得ないほど、世界は歪み、そして戦いに満ちていると、他でもない……目の前で繰り出されるリリィの異様な強さが物語っていたから。



「リリィさん……貴女は……」


持ったサムライソードの刃先が震える。

戦闘の疲れか、或いは恐怖か。自身にもそれは分からなかった。


「ミレイナちゃん」


突然柔らかなリリィの声が聞こえ、ミレイナは思わず呆けてしまう。


「……貴女が強さを求めるのは……戦うため?」

当然の事を聞いてくるリリィに思わず首を傾げる。


「……当たり前じゃないですか?」


「ごめん。そう……だよね。」

リリィは試合の最中だというのに目を伏せる。

「でもね、これだけは……覚えておいて欲しいの。」


そこまで言ってリリィは顔をあげた。

「"貴女"の人生はきっと戦いだけじゃない……それだけは、どうか忘れないでね」


リリィは苦笑いを浮かべながら自傷気味に言葉を紡いだ。


ミレイナにはその言葉の後に、こう続く気がした。



私みたいには成らないでね……と


ミレイナは身震いする。このままの感情で刃を振るえば、その刃は鈍くなると感じ、自身の心を無理やり奮い立たせる。


そして再び脚部にエネルギーを集中させる。


この一撃に全てを込めると決めた。


そして涙ながらに叫ぶ。


「リリィさんっ!貴女のおかげで生きている人が居ること……幸せに成れた人が居ることも!

どうか……忘れないでください!!」


ミレイナのその言葉にハッとしたリリィは、

次に放たれる一閃がミレイナの渾身の一撃になると察し、コンバット・メイデンを構え直す。


「ありがとう……ミレイナちゃん」

目をゆっくりと一度閉じたリリィは鋭い眼光を取り戻す。


───音すら忘れ去るミレイナの一閃……


本来回避不能の攻撃であるそれをリリィはミレイナの視線から放つ場所、振り方を予測し身体を反らす事で回避してみせた。


火花を散らしリリィの身体の表面を滑るミレイナの刃。

「……貴女の一閃の弱点……それは、その速度だと貴女自身が放った後に軌道を変えられないという事……」

冷静に語るリリィはそのまま減速が間に合わないミレイナの背後から、コンバット・メイデンを放ち、ミレイナの肩部装甲と背部スラスターをそのまま切り裂いた。


「くぁっ!?」


スーツが機能を停止しミレイナはそのままの勢いで地面に激突しそうになるも、リリィが無理やりに抱き締め一緒に地面を滑った。


リリィの背部装甲も衝撃からアラートを放った。


「ごめん……あんなに温かい言葉…ミレイナちゃんはかけてくれたのに。」


リリィはミレイナを抱き締めながらも"最適解"を選んでしまった自身の手を見つめていた。


ミレイナはリリィの胸に顔を埋めながら言葉を紡ぐ。

「私は……嬉しかったです。私の全力に……ちゃんと応えてくれたから」


リリィはその言葉を受けて笑みを浮かべる。


「……そっか」



───数多の激闘の果て、トーナメント最終試合は、リリィの勝利で幕を閉じた。

リリィが勝ってしまうか、ミレイナを勝たせるか、ずっと悩んでしまった……

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