第86話 異なる到達点
リリィとミレイナはお互いにデバイスを掲げると同時に鎧を身に纏った。
改めてメカニカルワルキューレとしてのミレイナを見てリリィは彼女の成長を実感していた。
始めて会った時はナギサさんの影に隠れるくらい小さかったのに、今では自身の背すら追い越して──
リリィは武器スロットから自身の切り札にして相棒、コンバット・メイデンを呼び出す。
───戦士として成長したミレイナへの、リリィからの精一杯の祝杯。
自身の力の全てを持ってミレイナと戦う。
試合だとか、本当の戦いじゃないからと手を抜かず、全力で……
コンバット・メイデンを握る手に力が籠る。
「行くよ!ミレイナちゃん!」
「はい!リリィさん!」
リリィがスラスターを吹かせる。
第一世代故の、収束しきれていない余剰エネルギーが眩い光となる。
ミレイナの目に映るそのエネルギーの奔流はまるで……翡翠の翼の様にはためいて見えた。
そのままミレイナのサムライソードとコンバット・メイデンは激突し激しく火花を散らした。
───
フィレアはリリィがやられる様を今か今かと楽しみにしていた。
本当は弱いくせにワルキューレとしての経験が長いというだけで自身の敬愛するアリアのバディをしているのが何より許せなかった。
だから最終試合も、一番古い機体であるヴァルキリーを使うリリィは、
一瞬であの、ミレイナとか言うやたら強い怪物に斬り伏せられ、無様な泣き顔が見られるはずだった。
……なのに……なのに…
「な、なんなのよ……アイツっ……」
フィレアの目に映ったのはミレイナと互角か、それ以上に見えるリリィの姿だった。
───
リリィはビームガンをミレイナの四方に乱れ撃つ。
当初的外れな位置に放たれるビームにミレイナは困惑の色を隠せなかった。
しかし、リリィのその謎の行為の意味を自分が技を放とうとして気付かされる。
何故か、思う様に身動きが取れない……
踏み込もうとしても、次々に放たれる"嫌な位置"のビームに無意識に足が遅れてしまう。
刀を振る前に、次々に間合いが消えていく
回避すら要らない位置への攻撃によってミレイナの行動範囲がジワジワと狭められている……
それに最初に気づけたのはミレイナでは無かった。
───外から試合を観戦している他のワルキューレ達だった
「リリィさんは……特殊な装備を使用しているのですか?」
ルキアが隣に居るディアナに話しかける。
まるで俯瞰で戦いを見ているかのような、複雑な戦い方に思わず聞いてしまった。
「いいえ…リリィは初期装備のままよ。
……いつからか、あの子はあんな戦い方が出来るまでになっていた。」
「リリィは……ずっと戦場で全てを助けようともがき続けてきたの。
……あの子が戦闘に出た回数、ルキアは知ってる?」
ディアナの問いにルキアは首を振る。
戦闘記録は見たが、出撃回数は書かれていなかった。
「三年間……通算で、500回以上よ。もちろん、小規模なものも合わせて……だけど」
「ごっ……!?」
それに一番驚きを隠せなかったのは他でもない、今までリリィを馬鹿にしていたフィレアだった。
「……誰のおかげで貴女第二世代達が三年間、丁寧に訓練出来ていたか……理解なさい」
ディアナは自身の後ろで黙ったフィレアに、
振り返らないまま、告げた
しかしディアナが放ったそれは、その場にいた第二世代のワルキューレ達全員に突き刺さっていた。
そしてミレイナがようやくリリィの牽制に気付いた時、
既にリリィの刃が届く距離に、ミレイナは立たされていた。
ミレイナは自分の意識でそこに移動したと考えていた。
故に反応が遅れる。
自身に迫るコンバット・メイデンをミレイナは寸前でサムライソードで弾こうとする。
しかしリリィはそのままコンバット・メイデンに内蔵されたスラスターと自身の背部スラスターを同時に全開にしてそのまま押し切った。
ミレイナは吹き飛ばされ地面を転がる。
ミレイナは急いで体勢を立て直し、自身の状況を確認する。
剣こそ無事だったが、あまりの衝撃に腕に痺れが走ったのを実感する。
───強い
……単純な出力の話ではない。
戦場把握能力とでも呼ぶべきだろうか、
これは自身がいくら鍛え高みに登ったとしてもたどり着けぬ、異なる到達点……
これが第一世代の……これがリリィの辿り着いた高み
ミレイナは未だにどうやってリリィに間合いを詰められたかは分からなかったが、それをリリィが意図的にやったのは理解できた。
それ故、ミレイナの額に汗が浮かぶ。
無人機とは違う。
……他のどのワルキューレとも。
そしてリリィも、ここまで得意な間合いを潰しても反応してくるミレイナに内心驚きを隠せていなかった。
今の一撃で片が付けば良いと思っていた。
自身がどんなに射撃で誘導してもミレイナは無意識に現状の最適解を導き出し始めていた。
ミレイナちゃん……
とんでもないワルキューレに成長した……
ここまで潰しても、まだ……
互いに刃を構え直すと少し乱れた呼吸を落ち着かせる。
リリィが再び射撃で牽制をするよりも早く、ミレイナは姿勢を低くして脚部にエネルギーを収束させ、ミレイナの奥義、一閃を放つ。
───まるで、レールガンの如き閃光。
あまりの速度に一瞬反応が遅れたリリィはその場で横向きに回転しながら上空に回避するも、
あまりにも鋭いミレイナの刃に、左手に持つビームガンを切り裂かれてしまう。
───しかし火花を散らしながら地面を滑り、強引に減速するミレイナを見て
リリィはある可能性に気付いた。
──最強の一閃の、唯一かも知れない弱点に。
強者感演出すんの難しいなっ




