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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第79話 これだけは嘘じゃない


試合開始のブザーが鳴り響く。


ソフィアは二振りのエネルギーブレードを両手に装着すると静かに構える。


相対するはナギサ。自身の教官にして三年間自身に戦いの極意をたたき込んでくれた恩師でもある。



ナギサも二本のサムライソードを無言で構え、その場から動かない。

ほんの一瞬、二人の間に静寂が訪れ、そして───



相対する二振りの刃は激しくぶつかり合う。


激しい刃と刃の応酬。火花を散らしながらも、流れるように行われる二人のぶつかり合いは、見ているものが試合で有ることすら忘れかねない、鋭い剣戟の嵐。


互いに足をスライドさせ平行移動し、

鍔迫り合いを行う二人の顔はどちらも苦悶の表情を浮かべる。


───裏切ってしまった者と裏切られた者。

どちらも、苦しんでいた。


───互いの攻撃パターンは既に三年の月日が教えてくれている。

……残るは、互いのスーツの性能差のみ。


性能ではナギサのスーツは五番目のスーツでソフィアは十番目。性能差は歴然であり、このまま正面からぶつかり合えば、出力差で押し切られかねない。


ナギサは瞬間的に脚部に出力を回しソフィアを押し込む。そして続けざまに腕部へ出力をし直し鋭い刃を繰り出し、

自身の計算と予測を上回るナギサの攻撃に、ソフィアは思わず吹き飛び、そのままの勢いのまま床を転がる。



「……ソフィア…以前も言ったが、お前は理屈で考えすぎるきらいがある。」

ナギサはそれ以上踏み込まず、攻撃を止め、その場でソフィアに指摘する。


「……ナギサ教官は、あまりに直情すぎるとも、私は言った覚えがあります……」

ソフィアはゆっくりと立ち上がりつつ再び剣を構え直す。


「教官……か。私から学んだ剣で、お前はいったい何を成そうとした。」

ナギサも剣を構え直し、感情の読み取れない、しかし鋭い瞳でソフィアを見据える。


その眼差しを受け、ソフィアの剣先が揺れる。


「わ、私は……」

ナギサの問いに思わず押し黙る。


「……理由は既にリリィに聞いた。亡き父、ダルク・グリードへの弔い合戦。大いにけっこうだ。」


「えっ……?」


「しかし、大義の為と、お前を大切に思う者達の思いを踏みにじる行為は、やがてお前そのものを苦しませる事になる……それが剣を持つ者の末路だ」


ソフィアはナギサのそれを聞き入って思わず脱力してしまう。

「試合中だ!剣先が下がっているぞ!!」

ナギサは喝を飛ばす。


「は、はい!!」

ソフィアは思わず訓練時代の返事をし剣を構え直す。


それを見たナギサは柔らかな笑みを浮かべる。


「ナ、ナギサ教官……っ」

ソフィアは吐き出す様にナギサに言葉を漏らす。

「ん?」


「すみませんでした……貴女や、友、支えてくれた人の思いを裏切ろうとしてしまい……」

ソフィアは口を震わせながらも必死に言葉を紡ぐ。


それを聞いてナギサは不敵に笑う。

「……良いさ。人に言えぬ事の一つや二つ、誰にでもある。それに……」


「お前は最後には踏みとどまれた。だろう?ソフィア。」


───ナギサはただ謝罪が聞きたかった訳では無い。ソフィアが苦悩の果て、復讐の道を捨て、メカニカルワルキューレとして、

仲間として生きる道を選んだ事は、日頃の彼女を見て既に理解していた。

……しかし、自身がソフィアを許す為の区切りが欲しかったのだ。


「貴女に剣を教えてもらえて……戦士として鍛えてもらったことは、私の誇りです。

……これだけは、けして、嘘ではありません」

ソフィアは涙を浮かべながら、剣を握りしめる。


「……あぁ。そうか、それは……よかった。」

ナギサも一度瞳を閉じ、また、再び剣を構え直した。


そして互いに───


ナギサはスーツのリミッターを全て外し、

ソフィアはMV-10の出力上昇機能を発動させる。


ナギサは赤く、そしてソフィアは青の光に包まれる。


同時に飛び出し赤と青の光がぶつかり弾き合い、訓練場に鮮やかな軌跡を描く。

激しく火花を散らし、スーツは軋み、互いのスラスターから爆音が鳴り響く。


それでも───その光景はとても美しい演武の様だった。

79話で終わんなかったーあっあっあー!

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