第78話 相反する刃
第一ブロックも残すところ第五試合の一試合となった。
ソフィアはこれから戦う相手が以前プロメテウスの実験場に収監された過去を持ち、
更に自身をワルキューレとして鍛えてくれたナギサだと言う事もあり、視線が泳ぐ。
もっとも、当初はメカニカルワルキューレそのものを壊滅せんとしていたわけだが……
ソフィアがそんな事を考え、一人苦笑いを浮かべていると、メガイラが両肩を掴み後ろから顔を覗き込んでくる。
「また悪い事でも企んでるんですか?」
「またって……しないよ。」
メガイラからの毎度の"からかい"をため息混じりにあしらうとナギサのMV-05ティシポネについて纏められた資料を見ていた。
「あ、その資料私が纏めたやつですよ」
「そうなんだ、じゃあ、ナギサ……ティシポネについて詳しく教えてもらえる?この後の試合で役に立つ事も有るかも知れないし。」
「ティシポネですね……ティシポネは第一世代のメカニカルワルキューレですが、次世代機開発の雛形として開発されました。
使われている技術は第二世代に近く、当時の最先端の物を惜しみなく投入されています。
なんと一部カタログスペックは第二世代より高いくらいです。
ただ、代償として扱うのが難しいトリッキーなスーツの筈ですが……
まぁ装着者があのナギサなので、本人は『根性でねじ伏せた』だとか……」
ナギサの発言を思い出しメガイラは苦笑いを浮かべつつも、こちらに見せてくれた設計データを見ると確かに第二世代ワルキューレと近しい設計思想が垣間見える。
───局所にエネルギー供給を偏らせる事で瞬時の火力を上げる機構……先ほどミレイナが見せたあの技だ。
まだ開発当時は臨床段階だったようだが、既にティシポネにはそれが搭載されている。
試合の事前に聞けてよかった。
このMV-10なら……対抗出来る。
自身のデバイスを見つめ、そっと握りしめた。
───私が以前裏切ろうとした事は、第一世代のワルキューレは皆知っているそうだ。
つまりナギサも……
あの件から、直接対峙するのは今日が始めてだ。
───
ナギサは一人神妙な面持ちで対戦相手であるソフィアの名前を見つめていた。
自身が教官として鍛えた始めての教え子であり、プロメテウスの首領、ダルク・グリードの一人娘……
三年も鍛えておきながらその時に気付けなかった節穴ぶりに、我ながら呆れ果てる。
既に復讐の怨嗟はリリィが断ち切ったとは聞いた。
しかし、それでも思わずにはいられなかった。
私が教官として鍛えている時、私にもいつか牙を向くつもりだったのか……と。
三年も鍛えたのだ。こんな私だが、情くらいうつる。
私はソフィアの直向きさが好きだった。反骨心もあるのも教え甲斐があると感じていた。
今はワルキューレとして戦っているようだが、当時のソフィアの気持ちだけは……
女々しいと自覚しているが、どうしてもハッキリさせたかった。
私が思考を巡らせ、最終調整としてベンチプレスでダンベルを持ち上げている時、
ミレイナが扉の陰から顔を覗かせた。
「ナギサさん、そろそろ試合の時間ですよ」
「あぁ……分かった。」
私はダンベルを下ろすとトレーニングルームを後にした。
───
ナギサが訓練場に着くと既にソフィアは開始位置に立っていた。
「すまない、待たせたな。」
「いえ……私も今ついたところですよ……教官。」
ソフィアはあえて当時の呼び方をした。
「ふっ…お前は既に最終試験を終えた一人のワルキューレ。ナギサでいいさ。」
ナギサは目を瞑り笑みを浮かべる。
「分かりました。では……よろしくお願いします。ナギサさん。」
ソフィアは言いながらデバイスを翳す。
「あぁ……お互い、良い試合にしよう。ソフィア。」
ナギサも自身の目の前にデバイスを翳し、同時にスーツを装着した。
───教え子と教官、裏切り者と裏切られた者の刃が今、交差する。
そう言えばナギサが教えてたなって思い出して突貫で作った因縁なのでパンチ弱いかも?
あと、よく考えたら10人でトーナメントは出来ないのでリリィのみ1試合少なくなります。てへ!




