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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第76話 好きの反対は無関心


フィレアとアリアの試合が始まるより前、リリィとディアナの第二試合が行われる寸前に、メガイラとの戦いを終えたノアにルキアが駆け寄り、労いの言葉をかけていた。


「お疲れ様……惜しかったわねノア」


「いや、そんな事は無いよ姉さん。やっぱりメガイラさんは凄いよ。本来なら、私はあっという間にやられていた。」

そういうとノアは穏やかにソフィアと談笑をしているメガイラを見つめた。


「いやぁ、ノアの動きはかなり良かったと思うぜ?」

そこにアリアが割って入った。ルキアは突然現れた先輩に姿勢を正す。その光景が可笑しくてアリアは苦笑いを浮かべつつも続けた。


「メガイラの奴は最初、ノアと同じ土俵で戦おうとして、結局ノアに接近戦じゃ勝てないって判断して得意分野で攻めたんだ。

あのメガイラの得意分野を引きずり出した時点で、試合としては実質勝ったも同然だろ?」

そう言うとアリアは笑顔を浮かべ、その笑顔に釣られてルキアとノアも笑みを零す。


「ありがとうございます。アリアさん。

改めて、妹の無礼の謝罪をさせてください」


ルキアが深々と頭を下げるのを見てアリアは手を振って断る。

「別にいいよ。確かにムカついたけど、姉だからってお前が謝る必要はないだろ?

それにフィレアの奴、なんかほっとけない所あるしな。

リリィとディアナの試合のあと、本人とやり合うし……アタシが勝って手打ちにしてやるさ。」


「……そのフィレア事でアリアさん、少しお話しが…」


その後に続けたノアの発言を受け、アリアは困惑の表情を浮かべた。



───



ノアから聞かされたフィレアが実は自分を好いているという事実。

そして当の本人から向けられる、あからさまな挑発。

アリアは尚の事困惑していた。


(これで好いてるねぇ……わっかんねぇなぁ)

アリアは頭を掻きながらも戦うため、両手のクローを構えた。

フィレアはアリアが構えたのを見て歯を見せて笑うと自身も蛇腹剣を構える。


フィレアのパワードスーツの尻尾が、左右に激しく揺れていた。

これから行われる試合を、待ち切れないと言わんばかりに。


二人が構えたのを合図に、試合開始のブザーが鳴り響いた。


ブザーが鳴ったと同時にフィレアは一気に加速しアリアに近付くと、蛇腹剣と自身の尻尾を鞭の様にしならせ、アリアに四方八方から斬撃を繰り出す。



───何故フィレアが憧れるアリアと同じクローではなく、異なる近接武器を選んだのか。

それは"アリアに近づきたいが、同じ武器を持つのはおこがましい"という厄介なファン感情と、

"姉達を守る為、戦場で目立つ派手な武器を選ぶ"という現実的な判断、その両方が理由だった。


フィレアの変則的な斬撃の嵐をアリアは正確にクローで捌いていく。

自身の攻撃が捌かれれば捌かれる程フィレアの昂りは高まっていく。


「ははっ!そうやって防ぐのがやっとなの?」

フィレアは昂りを抑えようともせずアリアを煽るのを止めない。


「言ってろ!」

アリアはクロー捌きを加速させフィレアの二本の鞭を薙ぎ払っていく。


フィレアの攻撃は見た目こそ派手だが、

それは無人機相手であれば通じる程度のものだった。

戦闘経験の長いアリアからすれば隙だらけの、無駄な箇所が多い、大振りな攻撃でしか無かった。


(惜しいな……)

アリアはそう思うと小さくため息を零す。


それを見たフィレアの眉が僅かに動き、笑顔が一瞬にして、歪む。


「……なんだよ…!……そんなつまんないかよ!!」

フィレアの尻尾が荒々しく床を叩き、蛇腹剣の動きがより力任せの振るいへと変わる。


剣はより鋭く、尻尾はより攻撃的になって、まるで二匹の蛇の様にアリアを襲う。


───しかし、結果として動きはより単調になり、アリアが攻撃に転じる隙が増えていく。


その際も終始アリアは無言で攻撃を繰り出し、感情任せのフィレアだけが徐々にダメージを受けていく。


そして遂にアリアはフィレアの隙をついて胴を蹴り上げる。一度距離を取ろうと考えたが故の奇襲。

蹴りが来るとは思っていなかったフィレアはそのまま直撃し、吹き飛んで尻もちをつく。


予想外の攻撃方法にフィレアは一瞬、呆気に取られるも、自身の攻撃が足蹴にされたと感じ、

アリアの蹴りという剣戟を断ち切る様な攻撃を、自身への拒絶と捉え、歯を食いしばり怒りを露わにする。


アリアに認められたい、一目置いてほしい、努力を褒めてほしいという思いすら踏みにじられたと感じ、目の前で自身を見下ろすアリアに対し、身勝手な敵意を向けた。


「なんだよ……なんなのよ!」

尻もちをついたままフィレアは涙すら浮かべ吐き捨てる


「なんだって……こっちのセリフだっつーの」

アリアは構えすら解いて頭を掻く。

「アタシ、お前をそんなにする為にあの時、助けた訳じゃないんだがな……」


「……お前の努力とかは偶に見てたし理解してるつもりだよ。

ワルキューレとしての才能も確かにあるよ。

自信過剰になるのも分からんでもない。

だけどなぁ……私が言うのもあれだけど、なんて言うか、目上には少しは配慮しろな……?」

アリアはポリポリと頬を掻く


それを聞いたフィレアは目を見開き、

下唇を噛み締めながら頬を赤らめ黙ってしまった。


───自分の努力は確かにアリアに認められていた、

何より高みだと思っている存在に才能があると言ってもらえた事実を噛み締めていた。



「……ん?どうした?すまん打ちどころわるかったか?」アリアは倒れたまま、今一感情が読み取れない妙な表情のフィレアに手を差し出す。



「あっ……」

───この時、フィレアは訓練場の照明に背後から照らされたアリアに後光を見出していた。



おずおずと引っ込めながら、躊躇しながらも差し出されたフィレアの手をアリアはしっかりと掴み立ち上がらせる。


「本当にどうしたよ。急に無言になって……お前、大丈夫か?」

アリアはフィレアの頭に手を乗せ首を傾げる。


自身を気遣うアリアの行動の全てを全身に受け、

目を閉じ、胸の前で腕を組み、想いを噛み締め……遂に限界を超えたフィレアはそのまま後ろに倒れた。


「えっ、ちょちょ!?」

アリアは突然倒れたフィレアに困惑しあたふたする。


その間もフィレアは笑みを浮かべたまま目を閉じ満足気だった。



モニターで試合を見ていたハカセも、勝敗を決めるべきか困惑していた。


「いや、本当に何よこれ」




しばらくしてゆっくりとフィレアは立ち上がる。


「で……どうする?まだやるか?」

アリアが片手を腰に当てながらフィレアに問う。


「あ、あったりまえじゃない!!私の思い!!全部受け止めてよね!!」

フィレアはこれまでとは打って変わってはハツラツな笑顔を浮かべ武器と尻尾をブンブンと振り回していた。



「……最近の若いのは、分からんなぁ」

アリアは苦笑いを浮かべつつも再びクローを構え直した。


そしてフィレアはこれまでの努力の成果の全てをアリアにぶつけ、アリアはその全てを受け止め……


打ち負かしてみせた。



───第三試合はアリアの勝利に終わった


が、終始満足気だったのはフィレアだった。



「……フィレア、お前やっぱり筋が良いよ。

お前が良ければ今度から、アタシが暇な時は稽古つけてやってもいいぜ。もちろん、態度も改めるならな。」

全力を出し切り床に再び倒れたフィレアに対し、アリアは笑みを浮かべながら言う。


それを聞いたフィレアはいきなり起き上がるとアリアの腕に絡みついた。


「し、しょうがないわね……そこまで頭下げて言われたら仕方なくお願いしてやっても、良いわよ」

フィレアは嬉しさを抑えきれず、ニヤけながらも必死にこれまで通りの体裁を整えようと憎まれ口を続けようとしている。


「いや、無理にとは」

それを聞いたアリアは無理強いする気はないと断ろうとした。


「やります!!」

そう叫ぶフィレアの、あまりにも必死な様にアリアは再び苦笑いを浮かべる。



第三試合をモニタリングしていたリリィ達も困惑しつつ、何とか仲良く(?)なってくれた二人に安堵していた。


アリアを師匠としているミレイナはブツブツと文句を零しつつ、妹弟子の誕生に、素直に喜べない複雑そうな表情を浮かべていた。


三女の謎の行動でアリアに迷惑をかけた事を思い、ルキアは頭を抱え、

ノアは妹の思いが報われた事を実感し、優しく微笑んでいた。



───歪ではあるが、フィレアはしっかりと前を向き始めた。



第四試合、ミレイナ対ルキアの戦いが始まる

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