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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第75話 好き嫌いデュエット


フィレアは自室に戻ると改めてデバイスに送られてきたトーナメント表を見つめていた。

第一試合はあの、普段の穏やかな印象から、頼りなさげに映るメガイラと、自身の姉ノアとなっていた。

試合は、どうせ姉が勝つだろうと観に行かなかった。



そんな事より重要な事で今のフィレアは頭がいっぱいだった。

自身に割り当てられた対戦相手は、"あの"

アリア……



フィレアは胸のトキメキを抑えきれないでいた。



────



フィレアが初めてアリアを見たのは今から約三年前───


両親がプロメテウスの起こしたテロで死に、

姉であるノアが自身と長女ルキアを庇って左半身を失った時に遡る。


この時のフィレアの絶望は凄まじかった。寸前まで言葉を交わしていた両親の"残骸"と、

左手と左足を失いながらも自身らを助けた次女の焼けた匂い……


地獄が在ったとしても、これよりは良いだろうと思える凄惨な光景。


そして自身らに迫る巨大兵器のアーム……



───それを斬り伏せた鎧の少女……


───メカニカルワルキューレ・ヘル/アリア



彼女を見た時のあの胸の高鳴りは今も強く記憶に刻まれている。


この地獄を簡単に切り払う、姉と同い年くらいの少女。

その圧倒的な力を持つ凛々しい横顔に、幼かった彼女の中で様々な感情……

こんな理不尽を覆せる力への渇望や、自身らを救ってくれたアリアに対し、崇拝にも似た憧れ、それらがフィレアの中でグチャグチャに絡み合い、

いつしかアリアへの歪んだ感情に昇華されていった。


───どんな形でも彼女に自身を刻みたい。



その感情を自覚してからは、ハカセに頼み込み自身のスーツのパーソナルカラーをアリアと同じ赤にしてもらった。

戦闘スタイルもアリアを真似て、本来は不得手な近接攻撃に絞り、ひたすらに鍛えた。



トーナメント前に全ワルキューレが徴集された時、

それまで、あえて避けていたアリアを目の当たりにして、つい感情とは逆の言葉が溢れてしまった。口が先に動いてしまい、一番驚いていたのは他でもない、フィレア自身だった。


だが、自身が放った暴言をアリアが聞いて、反応を示し、怒りを顕にしているのを目の当たりにして……フィレアは凄まじい高揚感を感じていた。

あのアリアが私を認識している……


どんな形であれ、"あの"アリアの視線が、

他でもない、自分にだけ向けられているという現実を受け、フィレアは次の次が自分の試合だというのに、準備もせず自室のベッドで足をバタつかせていた。



───



第二試合は

リリィ対ディアナという

メカニカルワルキューレ第一世代同士の組み合わせとなった。


射撃特化のディアナと近接メインのリリィの戦いはどちらも、自身の得意な領域に引きずり込めば勝てるという接戦になっていた。


見ている他のメンバーも二人の異次元な戦場掌握力に言葉を失っていた。


ディアナはバインダーユニットを四機同時に飛ばす。

リリィが接近する隙は一切なく、精密射撃のビームの嵐が彼女を襲った。


対するリリィは、それら無数のビームを身体をほんの少しずらし攻撃判定ギリギリで躱し、

直撃が免れない軌道のビームは切り払いながらディアナに肉薄し狙撃を抑制する……


どちらも一歩も譲らない攻防……


しかし、その均衡を破ったのはリリィだった。


リリィは不意に自身の剣をディアナにめがけ投擲する。

急な奇襲に一瞬の躊躇を見せながらも、

それをギリギリで回避したディアナだったが、


その剣が完全に通り過ぎるより早く……

ディアナの回避動作が終わるより前に、

リリィはビームで剣を破壊し、ディアナの視界をほんの一瞬だけ奪うと一気に急加速。



───視界を遮られた一瞬をついてリリィがディアナの首筋に剣を這わせていた。




「ふぅ………まいったわ、リリィ……ますます、強くなってない?貴女……」

ディアナは苦笑いを浮かべ、自身の負けを認めた。

そして、自身の口からこぼれかけた"化け物"という暴言を必死に押さえた。

大切な家族にそんな蔑称を、心の中でも思ってしまった己を恥じた。


「ディアナさんこそ、反射神経もだし、射撃の精度高すぎますよ……」


リリィは完全な隙をついたというのに、

あと一歩遅かったらディアナが四方に展開したバインダーユニットが、自身を撃ち抜いていた事を悟り、額から冷や汗を垂らし肝を冷やしていた。



ここに第二試合は幕を閉じた。




第三試合、アリア対フィレアの戦いの火蓋が切られようとしていた。



「…っし!リリィ、ディアナ!ナイスファイト!!次はアタシと……」

アリアが訓練場に骨を鳴らしながら歩いていくと、反対側から、フィレアもゆっくりと歩いてくる。



「はぁい、ヘル……そのアホ面、無様に私のライブの演出に使ってあげるから……覚悟してね?」

フィレアはこれまで以上に口角をあげ、頬を赤らめながらアリアを睨みつけた。



「……お前だったなフィレア。

こいつはあくまで試合だけど……ちょーっとアリアお姉さんがお仕置きしてやるか。」



アリアはニヒルに笑うと拳を突きだした。

遅れてごめんなさい!

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