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メカニカルワルキューレ ─未来を取り戻す物語─  作者: ハムスターマン
第三章 ティターニア編
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第71話 新たな絶望と希望


私達は突然ハカセに呼び出され、ラボのブリーフィングルームに集まっていた。


ハカセからは対ティターニアの会議とだけ伝えられていた為、まさか全ワルキューレが集まっているとは思わず面食らってしまった。


「はぇ~、こう見ると増えたなぁ」

アリアは口を半開きにして、キョロキョロと周りに集まったワルキューレ達を見渡していた。

その時、私達より年下らしい少女、確かチーム・モイライの三女……フィレアちゃんだったか、彼女が悪気があるのか無いのか、今一分からない調子で唐突に


「えっ、このアホそうなのが"あの"ヘルなの?」

といきなりな発言をかました。


「こ、コラ!フィレア!……す、すみませんアリアさん……うちの妹が大変失礼を……」

と、これまたチーム・モイライのリーダーにして長女のルキアちゃんが、ひたすらアリアに謝っていたけど、肝心のアリアは私の隣で顔を引くつかせながらも、何とかこらえていた。


「良いんだよルキア。ぜーんぜんっ、これっぽっちも、ちーっとも怒ってないからね。

……アタシ」

青筋を立たせつつも笑顔なアリアにルキアちゃんが必死に頭を下げていた。長女でありチームのリーダーも大変そうだ。



「……えー、だってノア姉。……見てよあの品の無い顔」フィレアちゃんはもう1人の姉、次女のノアちゃんにだけ聞こえる様に耳打ちしたみたいだけど、結構聞こえてしまっている。

それを聞いたノアちゃんはため息混じりに

義手の方でフィレアちゃんにゲンコツしていたが、フィレアちゃんは頭を掻きつつそっぽを向いた。


一連の流れを止められなかったチーム・モイライの指導役でもあるディアナさんが声を出さずにアリアに謝ってる。


その間、アリアの方に笑顔を向け、楽しげに手を振っているフィレアちゃんを見て私は思った。

どうやら、フィレアちゃんはアリアを煽る対象としてロックオンしたみたいだ。


そこまで聞いて、流石に黙っていられなかったのか、ミレイナちゃんが割って入った。

「……貴女、確かフィレアでしたか。……今までの発言、後輩なのに、あまりにも失礼じゃないですか。アリアさんは第一線で戦い抜いてきた第一世代のワルキューレにして……私の師匠です。確かに、多少"品性"には欠けるかもしれませんが、とても頼れる人です!」


それを聞いて、すかさず私もフォローを入れる事にした。

「そ、そうだよ!アリアはちょっと"下品"なところもあるけど……ええっと、"品"は無くても頼りになるし……」


私の発言を聞いて何故かナギサさんとソフィアは苦笑いを浮かべ頭に手を置きやれやれと首を振っていた。


震えつつも、黙って全て聞いたアリアは、火山が噴火するかの如く、ついに爆発した


「てめぇら上等だぁ!!そんなに戦いてぇなら全員表でな!!」


そう叫びながら、拳を鳴らすアリアに、

ブリーフィングルームの空気が一気にざわつく。

「ちょ、アリア落ち着いて!フィレアちゃんもきっと出来心で……」

「うるせぇ!オメェもだリリィ!!」


「えぇっ!?」


「し、師匠!?落ち着いてください!」

ミレイナちゃんが慌てて止めに入るが、

当の本人は完全に臨戦態勢だった。


「うるせぇ!うるせぇ!どいつもこいつも品性品性言いやがって!これでも美容には気を付けてるんだよ!!

だいたい戦場で必要なのはなぁ!」




「アリア」

低く、しかしはっきりとした声が響いた。

全員の視線が、一斉に前方へ向く。

いつの間にか

ハカセが腕を組んでこちらを睨みつけていた。

「ここは遊び場でも、訓練場でもないわ」


アリアは納得がいかない様子だったけど、渋々拳を下ろす。


「え、いや……そうだけどさ、なんでアタシだけ……」



「全員、席に着きなさい」

その一言で、場の空気は強制的に切り替えられた。


「今日集まってもらったのは、

喧嘩をする為でも、“誰が強いか”を決める為でも無いわ。」

ホログラムに、ティターニアの巨大な構造図が映し出される。


「──“終わらせる為”よ」

その言葉に、

イジられていたアリアも、散々挑発していたフィレアちゃんも、

誰一人として口を挟まなかった。


「……ハカセ、先ほどハカセが言っていたナギサ達チーム・サムライが手に入れたデータと、ハカセが開発した新技術について、説明をお願いします。」

メガイラちゃんがハカセへ促す。


「えぇ。まずは長期にわたる偵察任務ご苦労様。ナギサ、ミレイナ。」


そう言いつつ映し出されたのはティターニアの機体群の弱点と作戦内容、そして、三年間ずっと謎だったティターニアのトップと思わしき人物。


ホログラムを見ていた皆がその人物に驚愕する。


そこに映し出されていたのは、戦争孤児等に積極的に支援等を行なってきた事で、

ニュース等でも有名な現国連の副事務総長──



───ガドル・E・アヴァリス───



「ガドル……」

私は無意識に声を漏らす。

彼の戦争に対する悲痛な演説には、心を打たれた事すらあった。

戦争孤児は一番の被害者なのだと、一人でも多く救済されるべきだと……彼は涙ながらに語り、直接戦地に赴き傷付いた人々に支援も行っていたはず……



そこまで考え、思わず手で口を押さえる。

国連は確か戦争孤児を受け入れる施設を全国に所有していた。もし、もし私の考えが正しいのなら、ティターニアがネガ・メガミドライヴを大量生産出来ている理由は───


「まだ、あくまで可能性でしか無いわ。

でも、量子コンピューターとキュベレ、メガイラが演算した結果、ガドルは限りなく"黒"よ。」

ハカセの発言にブリーフィングルームは凍りつく。


それを切り裂いたのはまたもやフィレアちゃんだった。


「えっと、つまり……国連が、ティターニアの“後ろ”に居るって事?」


「──いいえ……現国連のトップとは個人的な面識があるけど、少なくとも彼はティターニアと繋がりは無いわ。」


「……根拠は?」

ディアナさんが続けざまに聞く。確かに個人的面識があるからと関係無いとは言い切れない筈だ。


「演算結果もあるけど……」

ハカセはそこで一度目を伏せ


「女の感よ」

……まさかハカセからそんな発言が出るとは思わなかった。


「女の感って……なんじゃそら」

アリアが笑い、ほんの少しだけ張り詰めていた空気が和らぐ。

そう、アリアの魅力はこういうところだ。



「……ハカセ、新技術と言うのは?」

ナギサさんが腕を組みながら質問をぶつけた。


「えぇ。ティターニアが一部でも国連の後ろ盾を持っていると言う事は事実。実質世界が敵であるも同義。それを覆す為の切り札……

スーパー・メガミドライヴよ」


「スーパー、ですか?……」

思わず声に出してしまった。別に悪いとかじゃないんだけど……何というか、陳腐と言うか、ハカセのネーミングセンスだと安心感すら覚える。


「……まだ臨床段階ではあるけど、これまでのメガミドライヴは、魔力結晶の生み出したエネルギーを電力に変換する事で、力に変えていた。今まではこれで十分だったけど、敵が同じ技術を使っている以上、

エネルギー効率が悪すぎた。


───だからスーパーメガミドライヴは魔力結晶が生み出すエネルギーを直接、機体制御に用いる事で性能を飛躍的に向上すると言うものよ。

理論的には現在の10倍以上の出力が見込める。」


ハカセの発言にワルキューレ達はざわつく。10倍以上とは、今の時点で音速を簡単に超え、巨大兵器を破壊出来るのに、いったいどこまで強く成れるのだろうか、と。

ナギサさんとアリア、それと、ノアちゃんは額に汗を浮かべつつ、口角を上げていた。


「でも、スーパーは……あまりに安直な気が…。」

誰かが小声でそんな事を言っている。多分ディアナさん。


うーん、ハカセらしくて私は好きだけどな。


「ゴホン……別に名前はいいのよ。名前は。要は性能よ。性能。」

ハカセがそっぽを向いてしまった。


「……とにかく、敵が国連幹部だったと分かった以上、これまでの様な個々で戦うのでは無く、高めた性能を駆使し、より緻密な連携が重要になるわ。」


私達ワルキューレは互いに顔を見合う。

フィレアちゃんはアリアと目が合うなり、

ぷいっとそっぽを向いてしまい、それを受け笑顔のまま青筋を浮かべるアリアをなだめながら、私はため息を零した。



皆で連携……うまく行くかな……



ただでさえ皆、敵の強大さに胃の奥がひりついているのに

……私はこれからが不安で仕方ありませんでした。



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