第70話 チーム・サムライ
ミレイナとナギサが同時に敵拠点から外に飛び出すと、ラプターの攻撃にがむしゃらに食らいつくアリアがいた。
他の無人機達の攻撃をいなしながら、性能で互角の相手をしているのだから、彼女の戦いが苛烈だった事は明白だった。
「見てないでこっち来いクソ馬鹿親子ー!!」
アリアは涙目で叫んだ。冗談では無く、本当に死と隣り合わせの激戦なのだ。
「待ってください師匠!今!」
ミレイナがそう言ってスラスターを吹かせ、アリアが待つ空へ飛び立つ。
その、小さな背中が大空へ溶けていくのを、ナギサは温かな瞳で見ていた。
「そうか……気付かないうちに、あんなに大きくなっていたのか。」
───彼女を、ミレイナを戦いから避けたのは確かに愛からだった。傷ついて欲しくない、いつまでも笑顔でいて欲しい。幸せになって欲しい……
でも……これはあくまで自分の中から湧き出た、自分のエゴでしか無かったのに、それをミレイナに押し付け、狭い鳥籠に閉じ込めようとしていた。
今、大空を羽ばたくミレイナを見てナギサは思う。
「……幸せは、自分で掴み取るもの……か。」
今まで自身がやってきた事が、形は違えど、この世で一番憎んでいた筈の、自分を売り飛ばした毒親と同じ
──まるで、ミレイナを自分の所有物にする様な行い。
ナギサは、そんな自分を恥じていた。
「おらナギサー!動けんならお前も手貸せー!」
「ごめんなさいナギサさん!お願い出来ますか!?」
ナギサはそれを聞いてため息を零す。
「ふっ……お前達に言われなくとも!」
ナギサもまた、スラスターを吹かせ二人が待つ大空へ飛び立った───
────
三人で残りの敵機を殲滅すると、ミレイナはハカセに報告をしていた。
「こ、こちらミレイナです。ナギサさんとアリアさんは無事です!」
こう言った報告等は初めてのため、思わず声が上ずってしまう。
『お疲れ様…?あくまでナギサの救出が任務だった筈だけど……アリアも?』
ミレイナは自身の後ろで大の字に倒れているアリアとナギサを見て苦笑いを浮かべる。
「はい、師匠、凄く……頑張ってくれましたから。」
『そう……とにかく、ミレイナもお疲れ様。今、キュベレが輸送機でそっちに向ってるわ。……ワルキューレ全員で帰って来なさい。』
「はい!」
ミレイナは元気に笑顔で返事をすると青空を見上げた。
大の字で倒れているアリアとナギサは駄弁っていた。
「アリア、ミレイナの事で、後で話がある。」
「よせよ、鍛えてくれてありがとうだなんて、照れるだろ?」
「よく、私に無断で、鍛えてくれたな……」
ナギサの言葉から怒りが透けて見えた。
「あ~、説教ならまた今度に……」
「いや……本当に、ありがとう……あの子の望みを叶えてくれて……」
ナギサがそこまで言うとアリアはウルウルした目で隣で寝ているナギサを見つめる。
「ナギサぁ……お前ぇ…」
「あぁ……」
ナギサもまた隣で寝ているアリアを見つめる。
「ありが」
笑顔でアリアがお礼を言いかけ……
「……半殺しで許してやる。」
半死刑宣告が、アリアに下された。
何やらアリアが言い訳やら「鬼ー!悪魔ー!」と喚いていたが、
ナギサは内心笑うのを堪えるので必死だった。
そして──上空からキュベレの輸送機が降りて来るのを見て、ナギサは再び意識を手放した。
───
今回の件を受け、改めてハカセはナギサに謝罪した。
今回の潜入任務が敵に逆手に取られた件と、ミレイナの件……
前者については仕方なかったとナギサは素直に謝罪を受け取ったが、やはりミレイナの件については親がわりとして思う所はあった。
対ティターニアに向けた戦力増強も、それが、才能があるミレイナになるのも、
仕方ないとは頭で理解している。
ただ、ハカセを人として、大人として信用しているからこそ、ナギサは、正しい大人として、筋道だけは通して欲しかった。
「全く……そのとおりね……本当に、ごめんなさい。」
そして、最後に一つだけ……ナギサはハカセに要求した。
───
「ミレイナ、今回の作戦だが…」
「ナギサさん、ご飯中ですよ。」
「う、…む。そうだな……すまない。」
「……ふふっすみません、冗談です。
今回も"チーム・サムライ"で潜入任務、ですよね?」
ミレイナとナギサは食卓を囲いながら次に自身らに与えられた任務の話をしていた。
"チーム・サムライ"
それはナギサがハカセに要求した謝罪を受け取る条件の元に誕生したメカニカルワルキューレの偵察班であった。指揮はナギサが取り、ミレイナと連携してティターニアの新兵器等の偵察を行う為のチーム。
潜入や調査を主とするチームのため、本来
サムライでは無く、アンダーカバー・チームや、せめてチーム・アサシンとなるべきなのだが、ミレイナが"カッコいい"からとウキウキで命名した。
その後も、二人で様々な潜入任務をこなしていく内に、第二世代ワルキューレの数も着実にそろっていった。
三姉妹で構成されたチーム・モイライといった攻撃部隊や、第二世代のソフィアと第一世代メガイラの混合バディ。
そしてリリィやアリア、ディアナの第一世代からなる単独ユニットが世界に散らばり、日々、ティターニアと戦っていた。
皆が、家族の、友の、誰かの笑顔を守るために……
ナギサとミレイナの二人は一緒に家を出た。
「「行ってきます」」
───
ラボのブリーフィングルームに
第一世代から第二世代、合計10人の、
全メカニカルワルキューレが集まっていた。
全ワルキューレが一同に介するのは、初めての事だった。
ハカセより招集があったのだ。
「ナギサ、貴女達が集めたデータと、ついに開発に成功した新技術のおかげで、ようやく可能性が見えて来たわ。」
そう言いながらハカセはホログラムに特殊な新装備を表示する
「……さぁ、ティターニアを叩くわよ。」
これにてミレイナとナギサ主体の外伝は終わります!次は第三章ティターニア編になります!




